ガチャ389回目:洞窟の中で
そうして俺達は、新たに発見した海底洞窟を通って南のエリアへと移動する。エリアを隔てる結界を肌で感知すると、目視できる距離に人面魚の群れが泳いでいた。
「うわ、アレが人面魚……? キモッ……」
「あれも夢に出そう……」
「怖いですわ……」
さすがに気付かれるほど近くには居ないが、この海底洞窟付近は結構水深が深いからな。モンスターの生息域が近くにあってもおかしくはなかった。マップを開けば、南のエリアに人はおらず、地上には大量のシザークラブが蠢いていて、今なら派手に暴れ回っても誰にも迷惑はかけないだろう。
「セレン、『海魔法』で暴れて良いぞ」
『~~? ~~♪』
「おう、任せた」
『~~!』
セレンが喜びの声を上げながら、勢いよく敵の群れへと突っ込んだ。人面魚がセレンの存在に気付き、警戒するように鳴き声を上げる。
『オッオッ!』
『オッオッ!』
「うわあ、鳴き声もキモい……」
「絶対夢に出る……!」
人面魚の鳴き声には、仲間へのアラームが含まれている。その声に呼応して周辺のモンスターが集まってくると、セレンはその群れを躱して今の声に釣られなかった別の人面魚の下へと泳ぎ始めた。そしてそれを追いかける人面魚の群れ。そしてまたセレンは奥へと向かい、追いかける群れはどんどん膨れ上がって行く。
どうやら全ての人面魚を一カ所に集める魂胆らしい。
そうして、数分もしないうちに、全てのモンスターを一カ所に集める事に成功したようだ。俺達はセレンに言われた通り、少し離れたところで様子をうかがっていた。ゆっくりとセレンの後を追っていたため、目視できるギリギリの距離にいるが、見える範囲でもそうだが、マップに映る奴らの数はヤバイ事になっていた。
『オッオッ!!』
『オッオッオッ!!』
遠くからでも連中の声がこちらに届く。きっとセレンの周りは人面魚の大合唱だろうな。
間近で聞いたらメンタルが削れること間違いないだろう。そんな中でも、セレンの透き通った声だけは聞こえてきた。
『~~♪』
瞬間、セレンを中心に大渦が発生し、全ての敵を飲み込んでいった。渦の吸引力と破壊力はすさまじく、周囲のモンスターは一瞬で煙となり、周囲の美しい海底は岩盤ごと削られていった。
それなりに距離のあるここも、引き寄せられている気がする。これが『海魔法』のレベルいくつから使える魔法かはわからないが、水中のモンスターがこれを持っていたら厄介だろうな。セレンの『海魔法』は現在Lv4だが、対策を考えるとなると、何をどうするべきだろうか……。
そんな事を考えている内に、煙が集まりレアモンスターが2体出現するが、どちらも残存する渦に飲み込まれて再び煙へと還ってしまった。
まあ、どう考えてもオーバーキルだよな。
「セレン、もう良いぞー」
『~~♪』
セレンはふよふよと浮かびながら、『濁流操作』で散らばった雑魚モンスターのドロップアイテムをまとめて持って来てくれた。
「よしよし、よくやったぞ」
『~~♪』
「ほんと、水中はセレンの独壇場よね」
「この子がお兄様のゴーレムでほんと良かったわ」
「流石にダンジョンでこんなモンスターがいたら、手も足も出ないよー」
「いやー、探せばいるんじゃない? 『上級ダンジョン』とかさ」
「えー。出会いたくないんですけど☆」
『~~?』
「セレンが自分は怖いかって悲しんでるぞ」
「あ、セレンちゃんは別ですよ☆」
そういってイズミはセレンに抱き着くと、セレンも抱擁を返す。傍から見ると触手に囚われてる水着姿の女子というアレな光景だが。そこにレンカやイリーナも混ざり中々な光景へと変化していた。
まあ何も言わないでおこう。
そうしてその後は予定通り2匹のマーマン相手に、カメラを回しながら戦闘をこなし、東のエリアでもレアとレアⅡを討伐。レベルは3匹で79から81に上昇した。ここに来てから微々たるレベルでしか成長してないな。
その後、西エリアに戻る為に北エリアの海底をこっそり進んでる時の事。
「ねえねえお兄様。お兄様って目が良いんでしょ。なら、あっちで浮き輪を付けて泳いでる人とかって見える?」
「ん? ああ、はっきり見えるよ」
俺は『視力強化』、今では『知覚強化』に進化したことで、遠くのものがよく視えるようになってる。
さすがに海上は波打っていてはっきりとは視えないが、水中であれば波打ち際付近までよく視えていた。
「へー。お兄様、泳いでる女の人の下半身、よく見えるんだー?☆」
「お、おまっ」
「「ふーん……?」」
鋭い視線が飛んでくる。確かに浮き輪を着けてる女性の下半身は見たさ。ちゃんと見えているかの確認のために凝視もしたさ。でもそれは不可抗力というか、見ろと言われて見ただけというか。
「お兄さんも男の人だもんねー。まあボクも興味はあるけど」
「旦那様、わたくしの下半身なら、いくらでも見放題ですわよ」
「お兄様、覗きはいけませんわ」
「「「覗き……」」」
「冤罪だ!」
「ぷふふーっ!☆」
俺が慌てて無実を訴えると、すぐに許してくれた。怒るのはポーズでおふざけだったらしい。まあ、イズミはあとでおしおきだが。
そんな風に彼女達とお喋りに興じている間も、レンカ達は覗きの話を続けていた。
「えー、良いじゃんイリーナ。明日の自由時間とかに、双眼鏡持って覗きに来ようよー」
「もう、仕方ありませんわね。レンカがそういうのでしたら……」
なんか、度し難い話をしてるような……。
◇◇◇◇◇◇◇◇
『オッ! オッ!』
*****
名前:人面魚人
レベル:70
腕力:540
器用:375
頑丈:150
俊敏:300
魔力:0
知力:45
運:なし
【
【
【
【
装備:魚人の槍
ドロップ:魚人の鱗、魚人の種、人面魚人のトロフィー
魔石:大
*****
そして何の問題もなく強化体が出たわけだが……。
こっちの『魚人の種』はサイズ変わらずか。ちょっと残念だが、まあ何らかのスキルが出るだけでも十分か。それに高位のスキルを生み出す種が、Lv70のモンスターから出るとも思えんし、仕方ないか。
そして出現した強化体を軽くひねり、Lvは82に上昇。ドロップアイテムを回収し、俺達は例の隠し洞窟へとやって来て、宝箱を開封。これで第二層の鍵も完成した。
あとついでと言ってはなんだけど、洞窟内は誰も邪魔されない特別な空間であり、外部の目も届かない。なのでそこで、前回同様『黄金香』を使われ、3人を相手にしっぽりとした時間を過ごし、見学していたはずの3人も混ざりカオスな状況へと陥るのだった。
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