ガチャ379回目:久々の810支部

 数日後。休暇を満喫した俺達は、予定通り『ハートダンジョン』へと向かった。そしてこちらの人数が多いためか、通常の冒険者用会議室ではなく、協会員が使用する大部屋の会議室へと案内された。

 こちらはエンキ達を含めた15人に対し、相手側には支部長のヨウコさん1人。以前ここに来た時とは、こちらの人数が違いすぎるな。


「直接会うのは久しぶりですね、ヨウコさん」

「そうね。最後に会ったのは宝条院家のパーティーだったかしら。あれから1ヶ月くらいしか経っていないのに、アマチさんは大きく変化したわね。特に……」


 ヨウコさんの視線がカスミ達に向けられた。


「彼女達は、アマチさんのコレかしら?」


 ヨウコさんがおもむろに小指を立てた。

 それ、やってる人最近見ないぞ。


「違いますよヨウコ先輩。まだ今のところはですけど」

「あら、そうなのね」

「まあそれはさておき、第二層の封鎖は出来ました? 片面ですけど」

「ええ、しっかり確保しておいたわ。第二層は魚だけ調査が終わってないんだったわね。両面封鎖しなくて大丈夫だった?」

「シザークラブもそれなりに人気があるみたいなので長期間封鎖するのは良くないかなーと。それに、わざわざモンスターの多い南側を通ってまで覗きにくるやつはいないでしょ。『Sランク冒険者』が封鎖しているエリアに侵入すると、色々と罰則がつくみたいですし、抜け道通ったところで得られるものなんて……」


 といったところでふと左右に座る彼女達を見た。

 第二層で修行したり寝泊まりする間、全員水着姿になるはずだよな? なら、怒られてでも見る価値、あるんじゃないか……?


「ご安心下さい、ご主人様。もし侵入者がいれば、網膜に焼き付けるよりも前に意識を刈り取りますから」

「そう? なら良いんだけど」

「相変わらずアイコンタクトだけで意思疎通が出来ちゃうのね……」

「じゃあしばらく迷惑を掛けると思うのでお詫びという訳じゃないですけど……。アイラ、ヨウコさんにお土産を」

「はい。では最近やや売れ行きが落ちているみたいですが、『統率』を4個ほど」

「!?」


 元々1個3億とか、超高額のスキルではあったが、ゴブリンのレアモンスターの出現率及びドロップ率上昇により、無印の『統率』は『初心者ダンジョン』からそこそこ産出してるみたいなんだよな。まあそれでも、有用スキルの代表格みたいなスキルだから、大幅な値崩れは相当先になりそうではあるが、近い内に2億を下回りそうではある。

 うちのチームの活動資金の為、アイラが色々と余り物となってるスキルを売ってくれている事は知ってたが、まだ『統率』が余っていたか。


「使うあてが無かったら、オークションとか他の支部に売りつけて活動資金にしてもいいですから」

「……ありがとう。大事に使わせてもらうわ」


 ここは戦闘で得られる戦利品はほとんど資金のあてにしてない協会だからな。一般客のデートコースに使わせる商売と、国や本部からの支援で回してると聞いてるが、そこまで余裕があるとは思えないし。役立ってくれると嬉しい。


「それじゃ、早速行きますね。一応、進展があっても無くても1週間くらいで一度戻ってくる予定なのでよろしくお願いします」

「わかったわ、気を付けて行ってらっしゃい」



◇◇◇◇◇◇◇◇



 第一層にもぐると、早速レンカとイズミが大はしゃぎしていた。


「すごーい! 花畑だー!」

「ここが日本一平和なダンジョン……! 話には聞いてたけど、本当に一般人が歩き回ってるのね」


 2人に比べると静かだが、カスミ達もこの光景は新鮮なのか落ち着きを隠せないでいた。


「カスミ、どうする? ちょっと遊んでから下に行くか?」

「え? あ、大丈夫だよ。今回私達は修行をつけてもらうために来たんだし、これ以上私達の都合で時間を使わせるのは申し訳ないわ」

「そうか? 別に遊ぶ余裕くらいあっても良いと思うが。なあ?」


 彼女達に目線を送ると、皆頷いてくれた。


「カスミちゃん、そんなに気負わなくても大丈夫よ」

「リラックスですわ!」

「時には集中する事が成長に繋がる修行もありますが、今回学んでいただく事には心に余裕があったほうが良いでしょうし、構いません」

「そうそう。気を張り続けたら疲れちゃうわよ。それに、第二層での修行も半分くらい海で遊ぶことも含まれてるしー」

「という訳だから、のんびり遊びながら進もう」


 それを聞いたカスミ達は、思い思いに散らばって堪能し始めた。

 といっても、全員俺の視界に映る範囲で行動してくれてるようだったが。


「それでショウタさん、私達はこのまま第二層で準備をしようと思いますが、どうされますか?」

「んー、『金剛外装Ⅲ』が欲しいからな。ちょっと第二層近くの隅で連戦して、終わったら追いかけるよ」

「どれくらい狩るんですの?」

「未所持の人数分だから……ちょうど10個だね」

「うひゃー、凄い数ね。けどショウタ君の今の『運』なら、ほぼ確実に湧かせられそうね」

「ですがそうなると、アイテム回収係りが必要になりますね。私はテントの設営など諸々の用意がありますから、今回は他の誰かに任せましょうか」

「そっか。なら誰が良いかな……?」


 1つの森に生息する綿毛虫の数は20から25前後。そして本気で動けば『黄金蟲』と『黄金鳳蝶』は瞬殺出来るが、レアからレアⅡに移行するのにかかる時間も加味すれば、終わるころには最初に倒した綿毛虫が再出現し始めるはず。それを踏まえて、ある程度俺のスピードについてこれて、かつ体力と根気のある人間が2、3人は欲しいところか。


「これも修行になるはずですわ!」

「じゃあ、そうだな……。カスミ、ハヅキ、ハル。あとでちょっと俺の狩りを手伝ってくれ」

「うん、わかった!」

「承知しました」

「何でもお申し付けください」


 さーて、久々の黄金シリーズだ。『黄金の蜜』の在庫もこの前なくなっちゃったし、これを機に沢山補充しておくか。

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