ガチャ377回目:魚の種と
サクヤお義母さんからの電話を切った俺はリビングに移動した。そこから見えるのは、日差しの差し込む窓際で、猫のように丸まって日向ぼっこするエンリルと、溶けたアイスみたいに広がってるイリス。そして『魚人の種』が
「セレン、どうだ?」
『~~♪』
「お、そうか。変化なしかー」
セレンに促され水槽を見ると、そこには種から見事に成長し、小さなマングローブのような姿にまで成長した植物があった。そしてその植物の先には蒼く淡い光を放つ白い実が2つ成っている。
実は『ダンジョンコア』から帰還した直後には、既に『魚人の種』の成熟は終わり、実が出来ていたのだが、あまりにも種から収穫までの日のりが長すぎたからな。素直に即採取して良いか判断に迷ったのだ。サングラス必須な『黄金の種』と違って眩しくもないし、本当にこれで良いのかという不安もあった。
なので帰ってからも引き続きセレンにお世話をお願いしていたのだが、数日経っても変化は無かったので、ようやく収穫する気になったという事だ。
「さて、結局コイツは何が出てくるか、だよな。面倒な方法でしか生育できない以上、普通のステータスアップアイテムじゃ満足できんぞ」
『~~♪』
『ゴゴー』
「……そうだな。とりあえず収穫してみるか」
水槽に両手を突っ込み、実の下辺りに添えさせると、ぽとりと手のひらに落ちて来た。それを掬い上げると、水から出た瞬間実は膨張し、ダンジョンで見るような煙を発しながら別の存在へと変わって行った。
「これは……」
2つの実は、2つのスキルオーブになっていたのだ。
「『水魔法Lv1』に『泡魔法Lv1』か。『魚人の種』は、魚人系統のモンスターが覚えそうなスキルがランダムに出る感じなのか?」
『~~♪』
『ゴゴー?』
「はは、そうだな。そこは大量に入手してから検証すれば良いよな」
そう話していると、最愛の気配が近づいてくるのを感じた。どうやら買い物は終わったらしいな。
「ただいまー!」
「ただいまですわー!」
「皆おかえり」
彼女達を出迎えた俺は『魚人の種』からスキルが収穫できたことを説明した。
「へー、凄いじゃない。それに『泡魔法』って、宝箱からでしか入手出来なかったスキルでしょ? それが手に入るだけでもかなり有用そうね」
「ですが生育手段が複雑すぎますね。もしかしたら何か見落としているのかもしれません」
「上位スキルの『海魔法』を持っていないと生育できなくて、出てくるのも水関係の下位スキルというのはアンバランスすぎますわ」
「最後まで育ててくれたセレンちゃんが『ハートダンジョン』第二層に行けば、何か見つけてくれるかもしれませんね」
『~~♪』
「だなぁ。とりあえずこのスキルだけど、マキって『水魔法Lv9』だったよね? MAXにしておいて」
「はいっ」
「『泡魔法』は俺が覚えておくよ」
そうしてそのままティータイムが始まった。『初心者ダンジョン』を完全攻略してから、もう何日も経過しているんだが、まだカスミ達の本格的な訓練は始められていない。まあそこは『ハートダンジョン』で親睦を深めると一緒に訓練を並行して行うって話になってるっぽいんだけど。
カスミ達は近くのホテルに泊まっているらしいのだが、聞けば俺が引っ越す前に1日だけ利用したあのホテルらしい。あそこならここと近いし、何ら不便は無かったから俺としても安心だな。
どうやら水着以外にも色々と買い物をして来たらしいのだが、何を買ったかは秘密らしい。それは今後の楽しみにしておくとして、俺は会議の内容と、サクヤお義母さんからの忠告内容を共有した。
「他国の『Sランク冒険者』が……。なるほど、そう来ましたか」
「同じランクでも、自分達とショウタ君との間には圧倒的な差がある事をちゃんと理解しているのね。その点は評価できるけど、そっかー……」
「ライバル登場ですわね!」
「あの子達がいるからしばらくは安泰だと思ったのに……はぁ」
彼女達は俺の予想に反して、驚きよりも納得している風に感じた。こういう展開も想定していたのだろうか。
「サクヤお義母さんはああ言ってたけど、予想出来てたの?」
皆がこくりと頷いた。
「てかショウタ君の場合、『Sランク冒険者』の重婚がどこまで可能かを把握してない可能性があるわよね」
「そうだと思う。ショウタさん、そういう書類関係私達に丸投げしてるし」
「うっ」
「あ、怒ってないですよ? 私としては頼りにされてて嬉しいですし、冒険に直接関与しないから、私達もあえて伝えなかった部分でもありますから」
「……ちなみに、制限は?」
重婚人数設定。確かCランクが2人、Bが3人、Aが4人だったよな?。
その上に『A+』とSがある訳だが……。順当に1人ずつ増える訳ではないのか?
「『A+』が10人。Sとなると無制限です」
「えぇ……?」
無制限て。さすがに考え無しすぎないか。
「ご主人様、それだけ『A+』や『Sランク冒険者』は希少であり、未来への希望でもあるのです」
「第二世代的意味で?」
「はい。更にご主人様の場合『精力増強LvMAX』に『性豪』スキルを持っていますから、種馬的にも期待されるかもしれません」
「うへぇ。その辺りは今後も『鑑定偽装』で徹底的に隠しておこう……」
「ふふ、そうですね。ですがそれを除いても、ご主人様の価値は通常の『Sランク冒険者』に収まらないものであると、ほとんどの者が認識していると思うべきです。さすがに、モテるとしてもその辺の一般市民やCランク以下の女性冒険者から誘われることはないと思いますが」
「格が違うもんねー」
「夢見られることはあると思いますけど」
「まるで王子様ですわ!」
「……わかった。今以上に身の回りの女性には気を付ける事にするよ」
もしかして、先日ボスエリアでカスミ達に話してたのは、その防波堤目的だったりするのかな?
彼女達なら元々『Bランク冒険者』として名声もあれば実力もあるし。いやでも、サクヤお義母さんとの通話や皆の反応からして、防波堤で終わるとは思えないか……。
「それはそれとしてご主人様」
「ん、なに?」
「何か忘れていませんか?」
「え?」
今度は何だ?
俺は何を忘れてるって……!?
今の話題の流れで言えば女性関係だが、まず無い話だ。次に会議やスキルだが、特に秘密事以外は全部通達できたはずだが……。
「ヒントは『初心者ダンジョン』です」
「『初心者ダンジョン』……??」
「何かあったっけ? ……ああー、もしかしてアレのこと?」
「あ、そういえば済ませてませんでしたね」
「なんですのー?」
アキとマキは何か気付いたらしい。だが、俺とアヤネは全く思い至らなかった。
「これは、覚えていませんね」
「……ごめん、忘れた」
「忘れましたわ!」
「宝箱です。『アサシンカメレオン』2体から出た『金の宝箱』。そして強化体から出た『エメラルドの宝箱』。最後にダンジョンボスから出た『アメジストの宝箱』。計4つです」
「「ああー」」
ドタバタし過ぎてて完全に忘れてた。そういえば後回しにしたんだっけ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます