無料ガチャ031回目:妹たちの想い
「皆、おまたせ~」
「おかえりー☆」
カスミを出迎えたのは、入り口近くの椅子にもたれかかっていたイズミだった。
受付嬢として仕事をしていたり、ダンジョン内にいる彼女はキチッとしているが、人目が無い時は大体こんな風にふにゃふにゃとしていた。イズミ曰く、「オフの時まで気を張ってたらお肌が荒れる」とかなんとか。
「えっと、他の皆は……」
「
「そっか。……イズミはもう決めたの?」
「もちろん。改めて考えなくても、お兄様は超優良物件なのは間違いないでしょ。性格良し、財産良し、地位も良し。顔はまあ普通としても、あんな綺麗どころ4人と仲良くやれる甲斐性はある訳だし、相手としては申し分ないでしょ。でも、憧れてた玉の輿だけど、いざ目の前に現れたらびっくりするよねー☆」
周りのメンバーに言い聞かせるように、イズミは振り向きながら続けた。
「あたし1人でも立候補するつもりではあるけど、お兄様の婚約者さん達の話を聞く限り、求めているのはあたし達個人個人よりも、チームとしての結束力だから、全員が乗ってくれた方がこの話は通りやすいっぽいのよね。だから、皆が少しでも乗り気なら推していくつもりだよ☆」
イズミは全員の表情を確認していく。この中で一番迷っているのはカスミで、次点でイリーナとレンカ。そしてハルと続き、ハヅキはこういう時迷わない性格なので問題ないだろう。なので、まずはメンバーの後押しに
「ハルはどうするか決まった?」
「……そうね、私個人としては、お兄様とそういう関係になるのは嫌ではないわ。チーム全員でって言われたときは一瞬理解出来なかったけど」
「アイラ様は、今のチームメンバーが動けなくなった時の保険……と仰られてましたね。確かに、奥方様全員が育児などで動けない間も、兄上がダンジョンに潜るとなれば、代理でサポート出来る人員がいると安心できます」
「この話、お兄さんには伝わってないんだよね? つまり、こんな大事な話、秘密裏に進めても怒られない確信があるんだよね? 信頼関係もすごいけど、怒らない方もすごいよねー」
「お兄ちゃん、たまにすっごく無頓着だから……」
「愛の成せる技ですわ」
「出来たか確信が持てない段階でこの話を進めようとする先輩達もすごいけど、お兄様はもし子供が出来てもダンジョンを優先するって思われてるのよね?☆ その辺、カスミちゃん的にどう思うー?」
「お父さんは家庭を蔑ろにしない人だったけど、お兄ちゃんはどうだろ……」
「私が見る限り、なんだかんだ言ってお兄様は家庭を大事にされると思うわ。けど、あの話が本当なら……」
先ほどショウタから教えられた内容をハルが思い浮かべようとしていると、全員の眼前に通知が表示された。
【ダンジョンナンバー525が完全に攻略されました】
【以後、該当ダンジョンでスタンピードが発生しなくなります】
【以後、該当ダンジョンで発生しているモンスターのステータス低下が永続します】
【以後、該当ダンジョンで発生しているモンスターのドロップ率上昇が永続します】
「これは……!」
「噂をすれば、だね☆」
「お兄さんが言ってた……」
「お兄ちゃん、本当にこんな事が出来るんだ」
「おお、流石です兄上……!」
それぞれが出てきたメッセージを飲み込む様子を確認し、ハルは考えていた想いを零した。
「……こんなことが出来る人、世界中探してもいないわ。だから家庭を大事にしてたとしても、周りが放っておいてくれないと思うの」
「確かにそうかもー」
「スタンピードの無期限停止。それはお兄様にしか出来ないことかもしれませんね」
「じゃ、ハルは賛成って事でおっけー?☆」
「ええ。けど、もし本当にそうなったとしたら、お兄様に私が負うべき負債を背負わせるだけで、一方的に私が得をする形になるのが申し訳なく思うわね」
「えー? お兄様は甲斐性の塊だから大丈夫でしょ☆ それじゃハヅキは?」
「それがしですか」
ハヅキは目を瞑り、考えをまとめるようなそぶりを見せるが、すぐに目を開けた。
「この身は皆様と違い、女としての魅力がありません。はたして、それがしは兄上のお眼鏡に適うのでしょうか」
「あたしが言うのもなんだけど、ハヅキは普通に美人だかんね?」
「そうだよー。ハヅキちゃんの黒髪、カスミちゃんと並んで綺麗だと思うなー」
「お世辞は結構です。皆様が男性から誘われる姿を何度も見かけたことがありますが、それがしは一度たりとも無いのです。つまり、それがしは女として見られてないということではありませんか」
ハヅキの言葉に全員が集まり、円陣を組んでヒソヒソと話し始めた。
「……マジで? あたし協会にいるとき、結構あんた達の噂聞くけど、そんなことないよ?」
「うーん。でも確かに、ハヅキちゃんに声かけてる人見たことないかもー? 大体カスミちゃんとイリーナに声かけるよね。たまにハルちゃんやボクにも来るけど」
「ほら、ハヅキって知らない男の人が近寄るとすごむから……」
「ああ、それで弱い奴は委縮して、勝手に選別されちゃってるんだ」
「周りに、私達より強い冒険者なんて滅多にいないものね」
「お綺麗ですのに、勿体ないですわ」
「でもそのおかげで綺麗な身のままというのはポイント高いかも☆」
円陣を終えてもなお、ハヅキは悲しげな顔で呟いていた。
「それがしは女を捨てた身。多くは望みませぬ」
「なーにが女を捨てたよ。お兄様に頭ポンポンされてメス顔晒してたくせにー☆」
「っ!?」
「とにかく、ハヅキはお兄様さえ良ければ貰ってほしいってことでおっけー?☆」
「……そうですね。兄上さえ良ければ問題ありません」
モジモジするハヅキにイズミは満足げに頷いた。これで3対3。
「レンカとイリーナはどうする?」
「セットで聞く辺り、イズミちゃん知ってたんだ? ボク達の関係」
「ふふん、専属を舐めないでほしいわ。チームメンバーが把握してることをあたしが把握できないとでも? まあ、こういう事でもイリーナはどうせレンカの判断を支持するんでしょ?」
「勿論ですわ。わたくしは、レンカの判断に従いますわ」
「ほんと? ありがとイリーナ。うーん、そうだねー。お兄さんと関係が深まれば、お兄さんの強さの秘密もわかるかなー?」
「分かると思うわよ。けど、そうなったら絶対逃げられないと思うけど☆」
「戦って強くなるのが楽しくてここまで来たけど、正直マンネリ気味だったからねー。超絶レベルアップも刺激的だったし、お兄さんと冒険するなら絶対楽しそう。だからボク達もついていくよー」
それを聞いたイズミは、最後に思い悩んでる本当の妹にチェックメイトをかけることにした。
「カスミちゃーん☆」
「はいはい。私の番、ね」
「カスミちゃんは
レベルが上昇する事で、人間は遺伝子が強化され、その結果第二世代で生まれてくる子供たちは、最初から強く強靭な肉体をもって生まれてくる。タブーとされていた近親婚そのものの問題も、遺伝子が強化されたことにより解消されてしまい、今となってはその問題も形骸化していた。
「そうだけど……。もう何年も会ってなかったんだよ? だから、皆がお兄ちゃんとそういう関係になるのは良いとしても、この感情がどういう類のものなのか、よくわからないの」
「ははーん、そういうこと☆」
「おや、楽しそうなお話をされてますね」
イズミが怪しい笑顔を見せていると、突然アイラが現れた。
「うわ、いつから居たんですか!?」
「あ、アイラ先輩☆ ちょっとご相談があるんですけどー」
「良いでしょう、聞きますよ」
「ええ……。やな予感がするんだけど……」
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