ガチャ370回目:悪神との決戦
『ゴゴ! ゴゴゴ!!』
『ヴォッ! ヴォッ!!』
エンキと『ウェンカムイ』が殴り合いを続けている。ステータスもスキル構成も完全に『ウェンカムイ』の方が格上であり、圧倒的な『頑丈』によりほとんどの通常攻撃はダメージにならない。そのためか、防御を行う必要が少なく、攻撃に集中出来ているようだ。逆にエンキは防御も織り交ぜながらの攻撃となる為、1対1なら勝ち目はなかっただろう。
だが、エンキは1人じゃない。空からはエンリルの風の刃が降り注ぎ、イリスは片足に纏わりついて『粘液生成』と『毒生成Ⅳ』『麻痺毒生成Ⅳ』の合わせ技でジワジワと削り取る算段だし、セレンは中距離から『水魔法』『海魔法』『濁流操作』で水の槍を作り出し、ウォータージェットカッターの要領で相手の身体に穴をあけようとしていた。
どの攻撃も本来であれば殺傷力・厄介度ともに飛びぬけて優秀なはずの攻撃も、6割上昇した相手のステータスのせいで致命傷にはならなかった。彼らのステータスはオール3200。対して『ウェンカムイ』は『腕力』4480の『頑丈』4160だ。
俺が持つ最大威力の技、『双連・無刃剣』をもってしても、奴の『頑丈』さを突破する事は難しいだろう。何回か当てられたら倒せるかもしれないが、この技は使用直後の疲労が他とは桁違いで、ぶっ倒れるくらいに消耗が激しく連発は困難。そうなると『金剛外装』で時間を稼いでも、いずれじり貧となり戦線が崩壊する。
なのでこの技は、なるべくトドメに使いたい。
「となると……」
『ゴ! ゴゴ!』
『ヴオオッ!!』
「あー、まずいか」
俺は手元の腰巾着から大量の砂と砂鉄を取り出し、地面に2つの砂山を作り出す。
「エンキ、交代だ!」
『ゴゴー!』
度重なる攻撃で身体が削られたエンキは、5メートルから3メートルちょっとまで縮んでしまっていた。その為、回復に当たらせることにした。
エンキの影から飛び出した俺は、『金剛外装』を身に纏いながら複数の技を同時に放つ。
「『魔導の御手』『雷鳴の矢』! 4倍マジックミサイル!!」
『ヴオッ!?』
複数の閃光が奴の胸部に突き刺さり、焼き焦がしたり爆発を起こすが、どの攻撃も貫通する事はなかった。だが出血させることには成功したので、そのまま攻撃を続行する。今の俺に出来る事は、とにかく奴の身体に傷を負わせまくって、剣の入りやすい場所をいくつも作っておく事だろう。それまでは通常の『無刃剣』も封印しておくべきだな。
『ヴオオッ!』
「くっ!」
『ドゴン!』
「おっも……!」
振り下ろし攻撃を剣2本を重ねて耐えようとするが、目算数トン以上ある巨体から繰り出された攻撃により、足が地面に陥没してしまった。エンキはこんな攻撃を何発も受けていたのか。
『ゴゴ!?』
「回復に専念しろ! ……ぐっ!」
『ドンッ! ドゴン! ドゴゴン!!』
落雷が落ちて来ているような衝撃と爆音に、腕だけでなく身体の内側から震え上がる。痺れるような攻撃を何度も連続で受け切れる訳もなく、時折『金剛外装』に甘えつつ相手の攻撃に対処し、その隙に反撃も行う。剣での斬撃の他に、『紫電の矢』とマジックミサイルでの高威力貫通攻撃も欠かさず打ち続けている為か、それとも『金剛外装』でダメージを無効化されている怒りか、『ウェンカムイ』のヘイトは俺に向かったままだ。
その間、他の面々によって生傷は増えていくが、奴は俺を潰すことを最優先にしているらしい。エンキが回復するまでの間はこれが俺の仕事ではあるが、こんな時ほど『魔力』が馬鹿みたいにあってよかったと思えるな。
攻撃が俺に集中していると維持は滅茶苦茶大変だが、他の攻撃が通りやすいのは大きい。こうなってくると、ハルが持ってるようなタゲ取り用のスキル、俺も欲しくなってきたな。
「『
『ヴヴォッ!?』
完全に姿を隠していたアイラが、イリスが押さえていないもう1つの足の腱を貫き、『ウェンカムイ』はたまらず体勢を崩した。続いて『ウェンカムイ』の頭上に、巨大な岩の塊が出現した。
「
普段は『風魔法』ばかり使っているが、訓練以外で『土魔法Lv10』が発動するのは初めてだな。
『ドガガンッ!』
岩塊が相手の頭にクリーンヒットし、たまらず倒れ伏しそうになるところにアキとマキが飛び出す。
「行くよ、マキ!」
「うん!」
彼女達は左右から挟み込むように必殺の一撃を放った。
「『破拳』!」
「『激流槍』!」
『ヴヴォォ……!!』
2人の攻撃は両目に激突。左目は『破拳』により損傷し、右目は『激流槍』によって貫かれた。そこまでの攻撃を受けても『ウェンカムイ』は傷だらけで立ち上がり、残った左目でこちらを睨んできた。
敵ながらガッツがあるな、こいつ。だが、相手もボロボロだが、俺の消耗も激しい。彼女達の攻撃は不意打ちだから通ったのであって、2度目は無いだろう。
そう思っていると、背後からエンキの気配が近付いてきた。
「エンキ、いけるか!?」
『ゴゴ!』
元のサイズに戻ったエンキが両手を広げ、『覇王爪』の準備をする。この技はとんでもない破壊力を秘めている分、大ぶりであり、来ると分かっていれば割と簡単に回避が間に合ってしまう技でもあった。『ウェンカムイ』も同じスキルを持っているし、対処方法も知っているだろう。
だから俺は、おもむろに奴との距離を詰め、睨みつける。『ウェンカムイ』は唸りながら俺を睨み返してくるが、奴の意識は半分『覇王爪』の準備をしているエンキに向けられていた。この技は、視線だけでなく
「『フルブースト』!」
「ヴォ!?」
そして意識が俺に向かった瞬間、両目に大量の魔力を流し込んだ。
「畏れ慄け……『恐慌の魔眼』!!」
『ヴ……ヴォッ!?』
『ウェンカムイ』が怯んだのを、エンキは見逃さなかった。
『ゴゴ!!』
『ヴォァッ!?』
胴体に10本の深い爪痕が刻み込まれ、その中心に向かって吶喊する。
「『双連・無刃剣Ⅱ』!!」
『グヴォッ!?』
胴体を無数に切り刻まれた『ウェンカムイ』は地に倒れ伏し、煙となってゆっくりと消えていった。
【管理者の鍵(525)を獲得しました】
【レベルアップ】
【レベルが66から362に上昇しました】
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