ガチャ368回目:悪神降臨

 俺達の目の前に現れた宝箱には、いつものようにその階層に現れるレアモンスターのレリーフが刻まれ、3つの錠前が施されていた。

 絵柄はゴブリンに、蜂に、トカゲ。うんまあ、普通だな。


「『真鑑定』」


 名前:525-5

 説明:525ダンジョン第五層配置の隠し宝箱 対応する虚像を全て捧げよ


「お、文面の『???』が見えるようになってる。まあ、内容は見えたところで普通な感じだけど」


 触れれば、錠前は光と共に消えていき、自然と宝箱がぱかりと開く。そして中に封じられていた光が俺の中へと吸い込まれて行った。


【おめでとうございます】


【ダンジョンナンバー525の各層に眠る、全ての管理者の鍵が揃いました】


「おっ」


【おめでとうございます】


【あなたに、ダンジョンナンバー525の管理者の鍵を得る資格を得ました】


【今すぐ挑戦しますか?】


 俺の目の前に『YES/NO』の選択肢が現れる。


「……やっぱりそうなったか」


 今まで得た『管理者の鍵』は2つ。

 『アンラッキーホール』では特定の手順で出現する『ダンジョンボス』を撃破する事で入手し、『1086』ダンジョンではスタンピードの最終ボスとして出現した特殊な『ダンジョンボス』を撃破する事で入手した。

 あの1層しか存在しない『アンラッキーホール』ですら『ダンジョンボス』なんていう仰々しい存在がいたんだ。他のダンジョンに存在していても、なんらおかしくはない。

 だから、集めたら出てくるんじゃないかと思ってはいたんだが……。そうか、でくるのか。


 懸念があるとすればカスミ達か。

 だが、ここで『NO』を選択して脱出を優先した場合、挑戦権がどうなるのか分からない。彼女達をこのまままっすぐ進ませて先に脱出させたとしても、巻き込まれた時同様俺達も脱出扱いとなって、挑戦権が喪われても困る。

 故意ではなく事故であっても、ついてきてしまった以上彼女達にも覚悟をしてもらうか。


「皆、今からここで『ダンジョンボス』との戦闘が起きる」


 その言葉に、各々に緊張が走る。


「相手の規模や攻撃手段によってはちょっと飛び火するかもしれないから、覚悟を決めといてくれ。もちろん、うちのチームは全員強制参加だ」

「はいっ!」

「頑張りますわ!」

「任せなさい!」

「腕が鳴りますね」

「お兄ちゃん、私達はどうすればいいの? お兄ちゃんのチームには及ばなくても、私達だって戦えるよ!」


 カスミの言葉に、他の子達も大きく頷いた。

 そうだなー……。弱体化していない『チャンピオンゴブリン』を相手に苦戦らしい苦戦を見せなかったし、戦力としては十分あると見て良いかもしれない。なんだかんだで、あの強化体もレベルで見れば140もある訳だしな。ただ問題があるとすれば、急成長したばかりのステータスが、まだ身体に馴染んでいないところか。


「カスミ達は1086ダンジョン……。俺がスタンピードを治めたボス戦の動画は見た事あるか?」

「私は義姉さん達に見せてもらったけど……」

「私達も、第二エリアからここに来るまでの列車内で、TVに放映された映像であれば見させてもらいました」

「そうか。それなら話は早い。アレレベルが来るとして、問題は手数の多さだ。普通に人型ならこっちの数が多いと逆に身動きが取れなくなるが、『グランドクラーケン』みたいに対応しなきゃいけない触手が増えるとそれだけ討伐の難易度が跳ね上がる。だから、そういうタイプの時はちゃんと呼ぶよ。それで良いか?」

「うん、ありがとう!!」

「それまでは距離を置いて待機なー」


 その言葉に彼女達は大人しく従って下がってくれた。まあ中には戦いたかったのかむくれてる子もいれば、明らかにほっとしてる子もいたが。


「エンキは俺の横に。エンリルとセットで動け」

『ゴ!』

『ポポ』

「イリスとセレンは臨機応変に頼む」

『プルン』

『~~♪』


 指示出しはこんなところか。彼女達に指示は不要だが、代わりに手招きしては、1人1人順番にハグしていく。

 これで気力もやる気も十分だ。


 俺は一呼吸を置いて『YES』をタップした。


【挑戦者の意志を確認】

【ダンジョンボス、出現します】


 50メートルほど先の何もない空間に、ソレは突如として現れた。

 なんの変哲もない、よくみる煙。それは徐々に肥大化し、大きさに比例するように不確かだった中の気配が濃厚になっていく。この気配、どこか懐かしい感じがする。

 肥大化を終えた煙は脈動し、周囲に重苦しい圧をばら撒いて行く。カスミ達にとって初めてのその重圧は、苦しいのか緊張した素振りを見せる。だが、俺達は何度も受けてきた経験がある。パフォーマンスに影響は出ないだろう。


『ビシッ……!!』


 そして世界が割れるような音と共に、中の巨獣が姿を現した。


『ヴオオオォォォォ!!』


*****

名前:ウェンカムイ(ダンジョンボス)

レベル:250

腕力:2800

器用:1500

頑丈:2600

俊敏:1800

魔力:9999

知力:2000

運:なし


ブーストスキル】剛力Ⅴ、怪力Ⅴ、阿修羅Ⅳ、怪力乱神Ⅱ、俊足Ⅴ、迅速Ⅴ、瞬迅Ⅳ、鉄壁Ⅴ、城壁Ⅴ、金剛体Ⅳ、難攻不落Ⅱ

パッシブスキル】身体超強化Lv1、風耐性Lv5、魔法耐性Ⅲ、体術LvMAX、武闘術Lv1、狩人の極意Lv1、姿勢制御Lv2、悪鬼羅刹、蛮勇Ⅱ、性豪Lv1

PBパッシブブーストスキル】破壊の叡智Ⅳ

アーツスキル】暗視Ⅲ、衝撃Ⅲ、鎧通しⅢ、ウェポンブレイクⅡ、アーマーブレイクⅡ、チャージアタックⅣ、追跡者Ⅴ、神通力Ⅱ

スペシャルスキル】王の威圧Ⅳ、巨人の腕


武技スキル:覇王爪、真空斬り


装備:悪神の爪

ドロップ:悪神の毛皮、ランダムボックス、ランダムな装備、管理者の鍵(525)

魔煌石:大

*****


 スキルのラインナップが、元の『カムイ』の上位互換に加え、他のレアモンスターが持っていた系統のスキルも加わって、しっちゃかめっちゃかになってるな。唯一の救いは『決闘』がないことだが、未知のスキルが3つもあるし、それだけで十分警戒対象ではあるな。

 まあ『性豪』は戦闘には関係ないだろうけどな。オークじゃないんだから、クマにそんな機能要らなくない?


「『カムイ』の更に上が来ましたね」

「ええ、馬鹿でかいクマねー。エンキと同じくらいじゃない?」

『ゴゴ!』


『ゾワッ……!』


「ッ!?」


 なんだ?

 急に寒気というか、悪寒が走ったぞ!?

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