ガチャ361回目:闇を這う影
俺は早速煙が出ているうちに『充電』を済ませる事にした。戦闘準備も兼ねて彼女達の目の前で、エンキには3メートルの巨人形態になってもらう。
『ゴゴ!』
「わぁ! テレビで見たのと同じだー!」
「大きいですわ!」
その間に筐体を呼び出し、『充電』を押したら完了。彼女達の視線がエンキに向いている間にささっとしまっておく。
*****
名前:天地 翔太
年齢:21
レベル:1
腕力:32848(+16422)(+16426)
器用:32856(+16426)(+16430)
頑丈:32644(+16320)(+16234)
俊敏:31944(+15970)(+15974)
魔力:33294(+16646)(+16648)
知力:33636(+16817)(+16819)
運:14478
*****
『3/50』
よし、これでOKだな。
そう思ってエンキの側から顔を出した時、イズミと目があった。その顔はつい先ほどまで見せていた人懐っこいものであったが、一瞬だけこちらを訝しみ、またすぐに戻った。
なるほど、彼女はレベルが低くても、アイラみたいに色々と鋭い娘なのかもしれないな。
「イーズーミー」
「ひゃぁ! な、なんでしょうかお兄様~☆」
距離を詰めると顔を背けるイズミを捕まえて、無理矢理正面を向かせる。
「後学のために知っておきたいんだけど、何をどう感じたのか教えてくれるか?」
「な、なんのことでしょう……」
「洞窟内かつ少ない明かりで本来なら人の細かい表情とか見分けられないと思うけど、俺は『暗視Ⅳ』があるから、実は明かりが無くてもよく見えてるんだよねー」
「Ⅳって……。どれだけ貴重なスキルを重ね掛けしてるんですかお兄様……」
「イズミー」
「はぁ、わかりました。わかりましたから」
ギブアップするようにイズミは両手を挙げた。
「お兄様が先ほど何をしたのかはわかりません。ですが、ほんの少しだけオーラが目減りしたように感じたんです」
「オーラ? というと……」
「レベルアップした時に獲得する、一種の存在感のことです。お兄様は強さの割にオーラがちぐはぐな印象を受けますが、今のお兄様からはまるでオーラを感じません」
「ああー……」
「今のお兄様なら、一般人の中に紛れ込んでも誰も『Sランク冒険者』だと気付かないと思います。何かそう言う、気配を薄めるスキルを使ったんですか?」
カスミはそういうの気付かなかったけど、流石に目の前で変化すれば気付く人も出てくるか。
いや、直接言ってこなかっただけで、気付いてる人はいたのかもしれない。『レベルガチャ』は基本的に隠れてやってるけど、近くで起動してきたのは彼女達を除けば、シュウさん達と……義姉さん達か。シュウさんは鼻が利くし、義姉さんは実力者だ。気付いてても黙ってる可能性は高そうだ。
まあでも、レベル上昇で恩恵として得られるオーラの増減なんて、気付いたからなんだってはなしではあるよな。こっちには『鑑定偽装Lv6』がある以上、それを完全に上回れるようなスキルでもなければ、レベルが減っている事は確かめようがないわけだし。
「まあそんなとこだ。あまり吹聴しないでくれると助かるかな」
「わかりました。私も命は惜しいですから☆」
「大袈裟だなぁ」
「何言ってるんですか。お兄様は『Sランク冒険者』様で、背後には第一エリアの顔役である早乙女家と宝条院家がいるんですよ。私みたいな木っ端職員、簡単に消されてしまいますっ☆」
「……そうなの?」
「お母さんはしないと思いますけど……」
「謂れのない誹謗中傷とかじゃなければ大丈夫じゃない?」
だよなぁ。と思ってアヤネの方を見ると、気まずそうに顔を背けられた。
あれ?
「お母様は旦那様の事大事にされてますから、なんとも言えませんわね……」
「そ、そうか……」
サクヤ義母さんって、結構過激なんだな……。
「ご主人様」
「お、時間か」
お喋りしていたら時間が来たらしい。煙は動き出し、非常にゆっくりと奥の広間へと動き出した。
この遅さからして、すぐそこが出現ポイントなのは間違いない。先ほど沸かせた『レアⅡ』がすでに出現している可能性も踏まえ、他は通路に待機させつつエンキと2人で先行し、ゆっくりと煙の後を追った。
「エンキ、警戒しろよ。見えないが、何かがいる」
『ゴ』
煙は広間の中央に辿り着くとその動きを止め、ぬるりと黒い何かが現れるのが見えた。
「真鑑て……くそっ!」
しかし、スキルを使うよりも早く、黒い影は見えなくなってしまった。
そして、周囲にいる何者かの気配が2つに増えた事を『直感』的に感じ取るのだった。
「アイラ、そのまま通路で待機! イリスは身体を伸ばして隔壁になれ!」
「はい!」
『プルル!』
指示を出す間も、気配はこの広間から出ていったりはしないようだった。弱いものから襲うよりも、縄張りに入り込んだ相手を逃がさないスタンスなのかもしれないな。ずっと俺とエンキの隙を伺っているような気配を感じる。
彼女達を連れて歩かなくて良かった。
しかし、俺は暗闇でも僅かな光量で周囲の様子は明確に見えているが、エンキや他の観客は逆に明かりが無いと見えないよな。カメラの映像も真っ暗じゃ価値が落ちるだろうし、ひとまず中心部に巨大な光源を設置しておくか。
「ビッグファイアーボール」
煌々と輝く炎の灯が広間全体を明るく照らす。
これで広間全体は明るくなったが、相変わらず敵の姿は見えないな。今までの傾向からして『レアⅡ』は『隠れ身』系統の特化型だというのは間違いなさそうだが、ここまでして見えないものなのか?
しかも、これほど待っても攻撃してこないなんて、めちゃくちゃ慎重っぽいな。なら少し隙を晒せばどうだ……?
「ご主人様! 写真を端末に送りました!」
「お。んじゃ『金剛外装Ⅲ』」
これで端末確認中に攻撃してくれば御の字。攻撃してこなくても、端末情報から姿形や位置を特定できてしまえば見つけるのも難しい事じゃない。
端末を起動しつつキョロキョロと周囲を伺うが、攻撃は飛んでこなかった。少し拍子抜けしつつ写真を確認すると、対象のモンスターはほとんど残像のような映り方をしていたが、形状から察するにトカゲ型……いや、尻尾がぐるぐるしてるし、カメレオンのような見た目をしているのかもしれない。
送られてきた連続写真を見るに、かなり高速で移動しているようだった。高速で移動しているにもかかわらず擬態を継続し続けているという事は、奴らの皮はハイドハンターよりもかなり高性能のようだな。
だが、姿形さえわかってしまえばこっちのものだ。位置の特定が出来なかったのも高速で移動しているからであり、俺の能力を全開にすれば……。
「『全感知』……そこか」
俺は直上にいる気配を捕捉した。
「マジックミサイル!」
『ギィ!?』
マジックミサイルが奴の尻尾を吹き飛ばし、奴は衝撃に耐えきれず天井から落ちてきた。
「エンキ、捕まえろ!」
『ゴ!』
「もう1匹は……そこか! マジックミサイル!」
『ギギィ!!』
『ゴゴ!!』
エンキはもう1匹も捕まえ、地面に叩きつけた。
「よし、捕獲完了。『真鑑定』と映像記録を残したら、彼女達にも経験値を分けてやるか」
『ゴ~』
しっかしコイツは、一般の冒険者には厳しい相手かもしれないなぁ。
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