ガチャ360回目:洞窟探索
マップに映った一瞬の赤丸。通常モンスターやレアモンスターのスキル構成から考えて、あれがここの『レアⅡ』で間違いなければ、マップから隠れるスキルを有している可能性があるな。俺達は立体マップとなり洞窟の場所が浮き彫りになった場所を注視した。するとどうやら、ハイドハンターは洞窟内にも出現しているらしく、せっかくだから洞窟の終点で丁度100体になれるよう調整しながら向かう事にした。
「お兄ちゃん、今どこに向かってるのか聞いても良い?」
「ん、いいぞ。どうやらこの山には洞窟があるみたいでな。そこ目指してるんだ」
「兄上、それがしも宜しいでしょうか」
「いいぞー」
「先ほどのレアモンスター、それがしが見ている限りではアイテムのドロップが1つもありませんでした。噂では兄上は尋常では無い『運』の持ち主とされています。なのに何もドロップがなかった上に、兄上達はそれが当たり前のような顔をしていらしたので……不思議でした」
「あー……」
まあレアから『レアⅡ』に変わる時、ドロップはせずにそのまま次の出現フェーズに移行するからな。『レアⅡ』や煙の概念を知らない彼女達からすれば知らなくて当然かもしれないな。
「カスミ、教えてなかったのか」
「あ、ごめん。でもお兄ちゃんが見つけた新情報は、沢山ありすぎて時々何を伝えていなかったのか分からなくなるんだよー」
「まあそういう事もあるか」
見つけた俺ですら、何を一般公開してて何を秘密にしてるか、すぐには言えなかったりするし。
『斬ッ!』
横合いから喰らい付こうとして来ていたハイドハンターを切り捨てつつ後ろで聞き耳を立てていた子達にも順序立てて伝えることにした。
「ではお兄様は、さきほど仰られた『レアⅡ』を討伐するために洞窟へ?」
「そういうこと」
「で、あわよくばもう100体追加討伐して2回目も狙ってるってこと? お兄様ガチヤバ☆」
彼女達は知る由もないが、俺の目的は『レアⅡ』をまとめて2体戦う事で『レアⅢ』が湧く可能性を考えての事だ。あとは、この中途半端に上がってしまったLv99を101に出来ないかと狙ってるというのもあるんだが。前者は説明が面倒だし、後者は話せないからこのまま行くが。
「アヤネ様、お兄様はとても貪欲な方なのですわね」
「旦那様にとっては平常運転ですし、出来ないことはしませんわ。わたくし達もこの階層で起きた事を思えば『レアⅡ』が2体揃ったところでなんてことありませんもの……」
アヤネが少し遠い目をしている。まあ蜂の群れを体験すればそうなるよな。
そしてそんなアヤネをイリーナは尊敬するような目で見ていた。あの2人はどことなく波長が近いから組ませてみたが、仲良くやれてるようだな。実は同い年みたいだし、後衛でお嬢様属性だ。
唯一の違いがあるとすれば、イリーナはシスター服がはち切れそうなくらいパッツンパッツンで、アヤネは逆にすとーんとしている。まあ、アヤネもないことはないんだけど、それはそれとしてあまりこんなことを考えていると……。
「ご主人様」
「ハイ」
義妹達に囲まれているはずなのに、まるで真横にでもいるかのように圧の込められたアイラの言葉が俺の耳に刺さった。これをされると背筋がピシッとなっちゃうんだよな。
「まあ! ではアヤネ様は、そのような過酷な戦いも体験されたのですね……!」
「今日戻ったら、その映像をお見せしますわ! あ、旦那様」
「勿論いいぞ。あの戦いの映像は、間違った対処をするとああなるぞっていう警告になるから公開予定だし。アキ、マキ。編集の進捗はどう?」
「実は蜂はまだなんだー。蜂はあの激戦だけだと思ってたから、2日目で簡易版が撮れるとは思ってなくってさ。だから初日の分は編集し直すことにしたの」
「ですので未編集版になってしまいますが、それでよければ見せられますよ」
「それってお兄ちゃんがハリネズミになっちゃったやつですか?」
「あはは、そうそれー」
「そういえば俺、あの時どんな姿になってたのか知らないんだよな」
正直あの戦いは何度かイメトレしてるが、どうすれば傷を少なく戦えるか、いまだ正解が出てないんだよな。『レッドキーラービー』は特に素早いから、マジックミサイルも避けるし『魔導の御手』からの援護射撃も避けられる。『魔導の御手』で『雷鳴の矢』が撃てれば戦況は変わったんだけど、第三と第四の手で武技スキルを放つのは『紫電の矢』が限界だった。
自分の肉体と物理的に繋がっていないからか、武技スキルの発動イメージの通りが悪いみたいだ。
そんなこんなで話している内に、件の洞窟へとやってきた。
ここも第三層同様、遠目からではその存在を認知できなかったのに、一定距離まで接近することで霧が晴れるかのようにその姿を現した。これは本当に、マップが無かったら見つけるのに苦労しただろうな。
今度は明かりの無い暗い洞窟だし、連中の擬態能力も上がってることだろう。念のため、剣から弓に切り替えるか。
「旦那様、明かりをつけますわ」
「わたしもサポート致しますわ」
アヤネとイリーナが『炎魔法Lv1』のトーチを使用する。洞窟内部が若干明るくなったかな。俺の場合は『暗視Ⅳ』があるから無くても平気だけど、他の子達はそうもいかない。これだと心許ないし、俺も使うか。
「トーチ」
『ボゥッ』
「お兄様のトーチ、大きくない?」
「イリーナやアヤネさんの5割増しくらいあるわね」
「旦那様ですから当然ですわっ」
「まあお兄ちゃんだから、魔法も凄くても違和感ないかも……」
「あら、カスミちゃんもだいぶショウタ君の異常性に毒されてきたわね」
「ふふ」
そういえば俺の場合、『万象の刻印』効果であらゆる魔法の効果がパワーアップしてたんだったな。ここ最近、魔法はマジックミサイルくらいしか使ってないから、忘れてた。
「とりあえず、このまま進もうか。俺が正面を照らすから、アヤネとイリーナは左右を照らしてくれ」
「はいですわ!」
「畏まりましたわ」
そうして進む事十数分。エンカウントした相手は即座に射抜き、アイテムに変えていくと、マップに映る奥の広間に辿り着く直前、最後の1匹で煙が膨張した。マップを開いて数を数えながらジャストで沸かせると、結構気持ちが良いもんだな。
そして中からのっそりと『リザードマンハンター』が姿を現したが、奴が地に降り立った時には、奴の頭を複数の矢が貫いていた。
【レベルアップ】
【レベルが99から101に上昇しました】
奴は一言も声を上げる事無く再び煙に変わるのだった。
「もうこの程度の相手、出オチにスキルすら不要だな」
さすがに1本の矢では不安が残るが、頭に連射すれば大丈夫そうだ。そしてなんとか、『レアⅡ』直前にレベル101を達成できたな。
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