ガチャ358回目:隠れ身の弱点

「マキ、アヤネ。撮影した映像はどうだった?」

「はい、こちらだとスキルの効果が乗らないのか、姿がはっきりと見えますね」

「この映像を見た後なら、もっと簡単に見つけられる気がしますわ!」

「まあ姿を知るのと知らないのとじゃ、索敵のしやすさにも影響は出るよな……」


 ここに誰も近付かなかったのは、ステータスが脅威というのも勿論あるが、それ以上に姿形が明確に知られていないからこそ、どんな姿をしているかわからない怪物から不意打ちを喰らうという噂が先行して、目に見えない恐怖もあって余計に誰も近寄らなかったのかもしれない。

 あとは奴の持っているスキルの情報から、突破方法が見つかれば後続も続きやすいんじゃないだろうか。


「アイラ」

「はい、こちらに」


 手を伸ばせば、アイラからハイドハンターが持っていたスキルオーブと素材が渡される。まずはスキルからだな。


 名前:隠れ身

 品格:≪希少≫レア

 種別:アーツスキル

 説明:周囲に姿を溶け込ませ周囲からの肉眼での認知を外しやすくするスキル。迷彩服を着ていると効果アップ。


 名前:気配遮断

 品格:≪希少≫レア

 種別:アーツスキル

 説明:自身が無意識に放つ気配、及び存在感を薄めるスキル。


 名称:ハイドハンターの迷彩皮膜

 品格:≪希少≫レア

 種別:素材

 説明:周囲の環境や色彩を真似し、視覚的誤認を引き起こすハイドハンターの皮膜。周囲と完全に同化するには時間が必要である為、下手に動くと効果が薄まる。


 この皮膜、じっと隠れるのならかなり有用そうだな。でも説明通り、俺の手の情報を真似するのに時間がかかっているようで、徐々に人肌の色合いへと変化しているのが分かった。1分以上かかるっぽいし、これじゃあ緊急時には使えないな。

 何に使うんだろ。かくれんぼとか?


「アイラ、この『隠れ身』スキルって、『隠形』の下位スキルか?」

「恐らくは」

「ふむ。ならアイラが『隠形』スキルを使ってる時に写真を撮られたらどんな風になる?」

「写りはしますが、ピントがズレたようになりますね。映像に切り取られた彼らはハッキリと映っていますから、そこはスキルによる性能差かと」

「なるほど。つまり『隠れ身』は、レンズを通さず直接認識しようとした時にのみその効果が発揮されるって感じか」

「そうなるかと。ただ、レンズを通しても迷彩柄はそのままですから、距離がある場合は映像や写真でも限度があると思います」


 なら、この山の対処はハチなんかよりもずっと簡単だな。スマホやカメラで写真を撮ったり、カメラを回して映像を撮れば良いんだ。幸いハイドハンター達は近距離まで近づかなければ襲ってこないみたいだし、見つけ次第遠距離から攻撃して呼び寄せたり、遠距離だけで封殺したり、やりようはいくらでもある。

 俺はその対処法を皆に共有し、実践に移した。いくら『気配遮断』で存在を消そうとも、俺の『全感知』からは逃れられない。奴らの存在はマップを使うまでもなく把握することが出来ていた。

 だからある程度の場所は俺が特定し、発見能力の低いアヤネやカスミのところのメンバーなんかに機材を使わせ、俺の立てた仮説を証明してもらうことにした。


「あの辺に居る気がする……」


『パシャッ』


「あ、いた。前方30メートル先の岩陰!」

「こっちもですわ。2体まとめて重なってますの!」

「このような解決法をすぐに思い付くとは。流石カスミ様のお兄様ですわ……!」

「ダンジョンが出来た頃は、記録用にスマホやらカメラやらを使う事はあっても、モンスター捜索に使おうなんて考える人は居なかっただろうからなぁ……」

「流石ショウタさんですっ」


 彼女達が見つけたハイドハンターを狩ること20匹。実験は終わりにして、そろそろ本番に移行するとするか。


「はーい、皆注目ー!」


 手を叩いて皆の注意を引く。

 うちのメンバー達は言うまでもないが、その瞬間カスミ達も雑談をピタリと止め、こちらへと視線を向けていた。女の子だけのチームとはいえ、彼女達はそれなりの戦場を越えてきた『Bランク冒険者』チームだ。

 低レベルなダンジョン内で俺という存在に牽引されていてもなお、注意は怠っていないようだ。


「実験は問題なく成功してるみたいだし、次の段階に移ろうと思う。皆にはもう説明したけど、ここのダンジョンのレアモンスター出現方式は、『一定の『運』を持ち合わせた同じ人物が同一種のモンスターを連続100体討伐』する事で出現する傾向にある。まあ俺達の場合はネックレスがあるから、他とは少し異なるけど。アイラ」

「はい」

「俺はこっち方面に進みながら殲滅していくから、お前は反対方向に進んで20匹ほど倒すなり引き連れてきて欲しい。出来るな?」

「お任せを」

「ハルはその間俺について来い。全力狩りをするアイラには流石についていけないからな」

「分かりましたお兄様」


 そうして分断して戦う事数十分。

 連中は基本ソロ行動のようだし、固まって出現するのも稀のようだ。マップを使えば簡単に見つけて数を稼げるだろうけど、周囲に擬態して隠れるという初めての相手だしな。俺も極力マップを使わず、縛りプレイのような真似をして慣らしていく事にした。

 結果的に狩りのペースは落ちているが、こういうのは繰り返しが大事だ。そうしてアイラが戻ってすぐに100体討伐が完了した。


「出たか」


 煙は留まり、膨張を開始した。


「山の中央に行くんじゃなかったのか……?」


 マップで表示されていたものとは違う結果に戸惑うが、まだまだマップのスキルで追加された機能は未知が多い。勘違いがあるのかもしれないし、まずは目の前の対処から始めよう。

 そう決意を新たに彼女達を後ろに下がらせると、煙の中から2本足で立つトカゲが現れた。


*****

名前:リザードマンハンター

レベル:93

腕力:900

器用:1000

頑丈:800

俊敏:1100

魔力:600

知力:600

運:なし


ブーストスキル】剛力Ⅱ、怪力Ⅱ、阿修羅

パッシブスキル】身体強化Lv3、槍術Lv5、暗殺術Lv5

アーツスキル】隠形、気配断絶、鎧通し


装備:黒鉄の槍、ハイドハンターの迷彩ジャケット

ドロップ:ランダムな装備

魔石:大

*****


『クルルルル』


 暗殺系が来ると思ってたが、意外にも武人系のモンスターが来たな。

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