ガチャ356回目:担当分け

 俺達は互いの戦闘手段を軽く共有し、彼女達の担当をそれぞれ適したメンバーに割り当てた。

 俺はアタッカー役兼、リーダーのカスミ。そしてアタッカー役兼、斥候役のハヅキを。

 アイラは盾役兼、司令塔兼、斥候補助のハルを。

 アヤネは同じ魔法使いポジションのイリーナを。

 アキは格闘武器の使い手のレンカを。

 マキは専属兼、攻守万能そうなイズミを。


 今日の午後からは山の攻略をするつもりではあるが、半日で終わるかは謎だしな。まずは役割とか波長の似てるメンバーで割り振って、良い感じになればいいなーとは思う。

 ちなみにハル達も、うちの彼女達の事を俺の婚約者としてではなく『Sランク冒険者』のチームメンバーとしてちゃんと見ていたようだったが、全員がLv300越えであることを聞いて滅茶苦茶驚いていた。まあ最初に出会った時アイラの169でさえ上級冒険者として一目置かれるレベルみたいだし、300越えとかこの国でも数えるほどしかいないんだろうな。

 『ダンジョンボス』級のレアモンスターを倒せば一発で到達出来ちゃうけど。


 そんな境地にいる事を知って、更にハル達は気合が入ったようだったのでカミングアウトして正解だったかな。まあいつの間にか彼女達から教えられていたカスミや、俺が担当する事になったハヅキは、そんな彼女達を率いる俺に対して畏敬の念を送っているみたいだったが。


「兄上、短い間ですが宜しくお願い致します」

「まあさっきも言ったが、基本乱戦にならない限りは俺とエンキ達くらいしか戦わない。レアモンスター戦に関しては一撃入れる分には許可を出すから、見て覚えるように」

「承知しました」

「つっても、俺の場合ステータスやスキルはバケモンでも、戦い方はほとんど自己流だし、技術もまだ発展途上だ。途中で他の学べそうなメンバーがいたら、代わっても構わんからな」


 実際技術という点においてはアイラの方がまだまだ上だし、武術という意味ではアキや、場合によってはマキにも劣るしな。


「と兄上は仰ってますが、カスミ様から見てどうでしたか?」

「うーん、お兄ちゃんの動きはたまに目で追えない時があるけど、ステータスに振り回されてる感じはしないかな。ちゃんと技術がないと出来ない動きをしてると思うし、今のは謙遜だと思うよ」

「やはりですか。兄上からは一定の境地に到達した強者の風格を感じておりますし、それがしの目に狂いはありませんでした」

「あー……。そんなことないと思うけどなぁ」


 全くこの子達は、俺を担ぎ上げたって何も出てこないぞ。あんまり褒められすぎるのも恥ずかしいので、とりあえず2人まとめて頭を撫でることにした。


「あっ……えへへ」

「あうっ。おやめください兄上、恥ずかしいです」

「お返しだ」


 そうして3人でお喋りしながら前に進みつつも、周囲の気配を確認しつつ各方面に耳を立てる。まずアイラとハルの様子は……。


「ご主人様はああいう風にお喋りしながらも、常に周囲の気配に気を配っています。探知系統のスキルは持っていますが、それに甘えず修練を極めた結果、スキル無しの自力でも気配が読める域に至っています。ハル様は司令塔以外にも、斥候のハヅキ様をサポートする役目もこなしているそうですから、必要とあれば修行に組み込みますよ」

「是非! お願いします!」

「承知しました。厳しく行きますから、しっかりついてきてくださいね」

「はい、アイラ先輩!」


 うん、問題なさそう。次にアヤネとイリーナは……。


「アヤネ様、ご相談があるのですわ」

「なんですの? なんでも言ってくださいまし!」

「実は私だけ、皆様より少しレベルが低いのですわ。最初こそ同じだったのですが、全ての戦闘で魔法が使えるわけでもないですし、直接攻撃をして戦いに割り込むのも難しいのです。その為経験値が入らないことも多くて、後れを取ってしまっているのです。アヤネ様は普段どのように心がけていますのでしょうか……」


 ああ確かに、普通はレアモンスターと戦う事なんて無くて、通常モンスターとの連戦でレベルを上げるしかないもんな。その上後衛職は、弓持ちならまだしもアヤネみたいな完全魔法型の場合、前に出て攻撃に参加するわけにもいかないから、同じスタンスのイリーナも経験値が得られない場面は多くあるだろう。

 その結果が積み重なり、彼女は周囲の子達と比べてレベルが少し低いのが悩みなんだな。


「むむ、困りましたわ。わたくしはネックレスがありますから、そういった悩みとは無縁でしたわ……」

「ネックレスですか?」

「あっ、えーっと……」


 困り果てているアヤネと目が合った。


「アヤネ、教えて良いぞ」

「はいですわ、旦那様! ネックレスというのは――」


 アヤネが代表してネックレスについて『疾風迅雷』の面々に説明した。その名称と効果に顔を赤らめたり興奮したり驚いたりと、反応は様々だった。


「ですので、わたくしそういったアドバイスが出来ないのですわ……」

「そうでしたか。ですが、私はそれよりも『愛のネックレス』というアイテムに感動しましたわ! お兄様の想いが形となって皆様を守り、戦うための力となっている……! こんなアイテムを作り上げてプレゼントしてくださるなんて、アヤネ様は本当に素晴らしい方と結ばれましたね」

「えへへ」

「私は家柄、高ランクで複数の女性を侍らせる冒険者の方とお話しする機会は多くございましたが、このように深く通じ合っている家族を見るのは初めてですわ。私、アヤネ様に心からの祝福を送りますわ」

「ありがとうございますわ!」


 波長が近そうだから組ませたけど、この2人は仲良くやれそうだな。


「あ、そういえばカスミ。お前に預けてたネックレスは……」

「それならさっきアヤネちゃんに返したよ。これからはちゃんと私のチームメンバーで足を揃えたいから」

「そっか、わかった」


 まあ、レベルを揃えようにも他の子達よりもカスミのレベルが高いから、『レッドキラービー』よりもレベルが高い相手が出てきたら、逆転現象が起きるんだけどな。だからイリーナの問題も、同時に解決できると思う。最悪、イリーナが一番高くなるかもな。


 んで、次にアキとレンカは……。


「へえー、レンカちゃん『SP』の使い先、完全に『腕力』特化構成なんだ」

「そうだよー! だって、一撃でモンスターを倒せたら気持ち良いもん!」

「まあそうかもね。一撃で倒せればスカッとするし、早く撃破するほどチームのメンバーも楽が出来るよね」

「そうそう!」


 どうやらステータスに関して意見を交わしているようだ。


「でもあたしとしては、『腕力』特化はあんまりお勧め出来ないかな。ほら、結局どんなに強い攻撃でも当たらなきゃ意味ないし、力に振り回されると良いことなんてないわよ」

「えー。先輩もそう思うの? 実はね、皆からもそう言われてて、ボクすっごく悩んでるんだ」

「悩むってことは、自分でもどうすれば良いか揺らいでるって事よね。よく考えると良いわ。ショウタ君についていったらこの先『SP』が大量に転がってくるだろうし、その時にはあたしも相談に乗るから」

「うん、ありがとアキさん!」


 うん、こっちも問題なさげだな。武器が同じだと会話も弾むんだろうか。

 んで、最後に同じ受付嬢であり専属でもあるマキとイズミは……。


「あのー、マキさんってやっぱり、一時期第一エリアの掲示板で開催されてた受付嬢ランキングで、ずっと1位に君臨し続けていた、あのマキさんですよね?」

「えっと……。何のランキングかな?」

「もちろん、彼女にしたいランキングですよ☆」


 ……めっちゃ気になる話をしてるな!?

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