ガチャ347回目:甘い壁

「アイラ、巣がドロップした外壁を頼む。それと、レアモンスターの戦利品も」

「畏まりました。まずこちらが『キラーハイブの巣壁』そして色が濃くなっているこちらが『キラーハイブの巣壁Ⅱ』です」

「この巣壁、元の形状のように巣穴はなくて平らなんだな」

「壁ですからね」


 アイラがテーブルの上に2つの巣壁を置いた。手で触れて改めて分かるが、その手触りは鋼鉄の壁のような重厚感を感じさせる。


「それからレアモンスターですが、まず『キラービー』の討伐数は42体。『レッドキラービー』の討伐数は5体でした。ですのでスキルとしては以下です」


 『狩人の極意Lv1』5個。

 『暗殺の極意Lv1』5個。

 『毒生成』42個。

 『毒生成Ⅲ』5個。

 『麻痺毒生成Ⅱ』5個。

 『毒抗体』42個。

 『毒抗体Ⅲ』5個。

 『飛剣術Lv3』5個。


「……あれだけの数を討伐して、たったのこれだけって感じてるのは、俺だけじゃないよな?」

「そうね。ショウタ君に毒されてる自覚はあるわ」

「それもこれも全部、スキルを量産するゴブリンが悪いのですわ」

「さすがにあの山を見た後だと、可愛く見えちゃうよね……」

「ショウタさんが疲れずに済むのなら、毎日このくらいで十分なんですけど……」

「だな。けど、レベルの割に蜂はスキルが少ないよなー」

「ご主人様、実は昆虫系はそういうものなのです。例の黄金シリーズもそうだったでしょう」

「あー……。そういえば、そうだった気もする」


 まあ人型のモンスターと違って、蟲だもんな。イリスでは対応出来ないスキルがあるように、モンスターの種族次第で違いは出てくるか。


「カスミ、今から俺の秘密を1つ見せようと思うんだが、覚悟は良いか?」

「えっ? まだあるの!? このネックレスの効果だけでも驚いてるのに……」


 そういえば、アヤネのネックレスを貸してたな。そのあとで皆がどういった効果なのか説明して、カスミが真っ赤になってたけど、『愛のネックレス』の効果に俺の家族愛が乗ってくれたのは嬉しかったな。


「それじゃ、まずここに『毒抗体』4つがあるだろ」

「う、うん」

「『圧縮』」

「……え!?」

「『毒抗体Ⅱ』の出来上がりー」

「!? ……!?!?」


 カスミがここ最近で一番驚いた表情を見せた。面白いなー。揶揄い甲斐がある。


「それじゃ、今の要領で『毒抗体Ⅱ』を4つ集めるだろー」

「まさか……」

「『圧縮』。はい、『毒抗体Ⅲ』の完成~」

「わぁ……」


 カスミの手にぽんと乗せてやる。6個目のそれは元々カスミにあげるつもりでいたから丁度良い。


「それ、カスミが覚えて良いからな」

「う、うん。ありがと……」

「ご主人様、『毒生成』が余りますが如何しましょうか」

「同レベルの抗体が無いと自滅するだけだしな。明日またちょっと蜂は狩るし、それから改めて余った分の処理を考えようか」

「畏まりました」


 一応『麻痺毒生成Ⅱ』は見ておくか。


 名前:麻痺毒生成Ⅱ

 品格:≪最高≫エピック

 種別:アーツスキル

 説明:体内で麻痺毒を生成するスキル。生成時、即座に排出しなければ自ら麻痺毒に侵される。同レベルの『毒抗体』スキルがあれば中和が可能。


 ふむ。こっちはⅢにしてしまって問題なさそうだな。


「イリスー」

『プルル』


 スキルをいくつか『圧縮』し、イリスに『毒生成Ⅲ』『麻痺毒生成Ⅲ』『毒抗体Ⅲ』を覚えさせる。

 そして俺は『狩人の極意Lv1』5個と『暗殺の極意Lv1』5個。それから『飛剣術Lv3』3個を覚え、俺含め彼女達にも『毒抗体Ⅲ』を覚えさせた。

 スキルの割り振りとしてはこんなものか。『飛剣術Lv3』が2つ余ったが、これはキープということにしておこう。


「さて、スキルの割り振りは終わったし、改めて巣壁の確認だな」

「これ、ほんとにかったいわねー」


『ガン! ゴン! ガンッ!』


 アキが派手な音を鳴らしながら巣壁を殴って確認しているが、そのまま続けていれば巣壁が割れるよりも先に、その下にある机の方が割れそうだな。


「お姉ちゃん、その辺でやめとこ?」

「あ、ごめんマキ」

「『腕力』でいえば、アキとアイラは巣壁Ⅱの『頑丈』4500を上回ってはいるけど、どう? 壊せそう?」

「んー……。正面からはやりたくないなぁ。続けていればそのうち削れると思うけど、フルブーストと武技スキルを使っても、骨が折れるわね。物理的に」

「ステータスは指標の一つに過ぎませんからね。上回っていたとしても、それが絶対的な物とは限りませんし。ご主人様やエンキの壊し方を見るに、私も正面からは挑みたくありません」

「ショウタさん、『鑑定』結果はなんと出ているんですか?」

「んーとね」


 名前:キラーハイブの巣壁Ⅱ

 品格:≪希少≫レア

 種別:素材

 説明:『レッドキラービー』が守るマルーンビー達の頑丈な巣の壁。特殊な樹皮と『キラーハイブの特濃蜜』を混ぜて作られている。外敵から守る為に外側は堅牢に作られているが、内側からの衝撃に弱い。舐めると微かに甘い。


 俺が表示された内容を伝えると、いち早くアヤネが巣壁をぺろりと舐めた。


「お嬢様、お行儀が悪いですよ」

「だって、甘いと書かれていたら気になって当然ですわ!」

「それで、どうでしたか?」

「ほんのり甘くておいしかったですわ」


 その言葉に、他の女性陣達も興味深げに巣壁へと視線を向けた。

 まあ俺も甘いものは好きだし、どんな風に甘いのか気にはなるけど、それはあとだ。


「外は強くて内側は脆いとなると……そういうことか」

「はい。今はアイテムとして真っ直ぐな巣壁ですが、元は蜂の巣です。内側に通ずる穴は無数に開いていました。面ではなく、その穴目掛けて攻撃すれば、割と脆いのかもしれません」

『ゴゴ!』

「そういえばエンキのパイルバンカーも、巣穴目掛けて撃ち抜いてたんだったか」

『ゴゴー』


 当たり所がよくて大破させてたんだろうかと思ってたけど、本当に当たり所が良かったのか。


「じゃ、これで巣の破壊も簡易化出来そうなのかな?」

「だな。あとは、大量発生を抑える方法と、強化体の時に見せたモンスターの強制消失か。これは本番でないと分からないし、今日はこれで終わりにしようか」


 そうしてその日の打ち合わせはお開きとなった。

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Twitter(X)にて初心者ダンジョン攻略後に行くダンジョンの予定地アンケートしてました。

https://twitter.com/hiyuu_niyna/status/1723171165781598352


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