ガチャ342回目:蜂の軍団
それは2つ目の巣を一刀両断にした時のことだった。
「ご主人様」
「ああ」
今度は様子見せずに一撃で巣を吹き飛ばしたんだが、護衛の出現はダメージを受けることではなく、攻撃されることがトリガーらしい。巣本体は煙になって消えたのに護衛は俺たちを囲むように出現した。
そしてその数は、先ほどよりも明らかに多かった。攻撃のされ方の問題か、それとも2回目の巣だからか……。マップを見ると、先ほどの倍近い数の赤点と赤丸に目が入ったが、次に別の違和感に気がついた。
「……ん?」
「ショウタさん?」
「いや……」
これは気になるが、あとでも良いだろう。それよりもこの数の蜂の群れをどうするかだが……。
「カスミ、さすがにお前にも働いてもらう必要がありそうだ。やれるか?」
「うん!」
「よし。マキと一緒に戦え、彼女の指示に従うように!」
「分かった!」
「アヤネ、今度は巣は無いから範囲攻撃して良いぞ!」
「はいですわー!」
今回の『キラービー』の数は8体か。最初の偵察隊でも『キラービー』が2体もやって来ていたし、確実に巣に割り当てられている護衛の数が増しているな。
問題は、アヤネの範囲攻撃でどれだけ数を減らせるかだな。奴らの針飛ばしは一対一なら問題ないが、多数との戦いをしている最中に横合いから受けるとだいぶ厄介だ。俺は『予知』があるし、アイラは自前の読み合いで回避出来るが他が心配だからな。
特にカスミはレベルが低いし『金剛外装』もない。うーん、今後もカスミがついてくるなら『ハートダンジョン』にいくのもありだよなぁ。制覇する為に行ったらあそこの支部長は嫌そうな顔するだろうけど。
「クラッシュテンペストですわ!」
アヤネの魔法が開戦の狼煙となった。それにより3体の『キラービー』が煙になった。俺はそれによって出来上がった蜂の包囲網を抜け、指揮に回っていた『キラービー』から優先的に攻撃を仕掛けた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「ふぅー」
武器を収め、周囲を見渡す。
戦いが終わった事で皆はアイテムの回収に勤しんでいるようだった。
「カスミ、お疲れ。割と乱戦になっていたが、大丈夫だったか?」
「うん、平気だよ。マキ義姉さんとセレンちゃんもサポートしてくれたし」
『~~♪』
「はい。カスミちゃんも頑張ってくれましたよ」
「そっかそっか。頑張ったな」
「えへへ」
マキとカスミを一緒に撫でる。そうしているとアヤネが飛び付いてきて、アキとアイラもやって来る。いつもの流れに身を任せていると手元の端末からアラームが鳴った。
『ピピピピ』
「おっと」
「ショウタさん、それは?」
「うん、ちょっと待ってね」
マップを開いて確認する。
「……やっぱりか」
今鳴ったアラームは、1箇所目の巣を破壊した時にセットしたもので、ちょうど1時間が経過したらしい。それでも……。
「最初の巣の連中が復活してない」
「「「「「!?」」」」」
今まで遭遇したモンスターは、早ければ5分で、遅くても数十分もあれば復活していた。ここのゴブリンだってそうだったけど、蜂はどうすれば復活するんだ?
「ということはご主人様、今この森にあるモンスターは、もう蜂の一団だけと言う事ですか?」
「だな。それ以外はまるで反応がない」
「不気味ですね……」
「まあ何にせよ、あの集団を倒せば何か分かるさ」
「だね」
「頑張ろっ、お兄ちゃん!」
「ああ」
◇◇◇◇◇◇◇◇
最後の集団だからか、偵察隊の戦力も多かった。
外周部にいたマルーンビーを切り捨てれば、増援で100を軽く超える数が来るし、『キラービー』は3匹もいる。その集団を乗り越え、巣を攻撃すれば、出てくる蜂も初回の約3倍。だが数が増えれば増えるだけアヤネの魔法は巻き込む数を増すし、エンキやエンリル達も活躍しやすくなる。
逆に俺やカスミみたいに、範囲攻撃を持たないメンバーは1匹1匹をちまちま倒すしかなく、集団に対しては処理能力の差によって苦戦を強いられる訳だが。2戦目の時は俺が外周に回る事で効率的に『キラービー』の数を減らすことは出来たが、今回は敵集団の規模が増したことで俺の作戦は失敗した。丁度4匹目の『キラービー』を手にかけた辺りで、残っていた奴らが俺に狙いを変え、マルーンビーを俺にけしかけてきたのだ。
そこへアヤネが機転を利かせ、俺を中心に魔法を発動。俺はといえば『金剛外装』を使う事で無傷の突破を果たした。あとは包囲網から抜けた俺と、遊撃に回っていたアイラで残党を殲滅。
巣の完全破壊に成功した。
連戦を終えた俺のレベルは94まで上昇。流石にレベル70とはいえ、レアモンスターを十数匹も倒せばそれなりに上がるもんだな。
「皆、お疲れ様」
「はい、お疲れ様ですっ」
「激戦でしたわー」
「なんだか、第五層に来てから集団戦を強いられてばかりね」
「1回目の集団戦ならまだしも、2回目以降の集団戦は一般の冒険者には厳しいものばかりですね」
「うちのチームでも、2回目以降は遠慮願いたいですね。『初心者ダンジョン』とはいえ、最下層の難易度はやっぱり高いんですね」
「……!」
皆が労い合う中、何かを感じた俺は剣に手をかけ、後ろへと振り返る。
そこには何もいなかったが、その先に、得体の知れない何かが現れたのを肌で感じた。
「旦那様、敵ですの?」
「……ああ、新手だ」
「確かに、少し前方に何かを感じますね」
「そうなの? 私は何も感じないけど……」
カスミは目を瞑って必死に『気配感知』を使用しているようだが、相手の気配は感じ取れていないようだった。まあ、そこは経験の差かな。改めてマップを開いても、森の中には赤点も赤丸も存在しなかった。マップ上では敵は確かに全滅しているのに、俺の持つ『全感知』は前方にいる何者かの存在を感知し、警戒していた。
「皆ほどほどに疲れてるし休憩したいところだけど、あれがいつまでもいてくれる保証はどこにもない。もう1度殲滅するところからやり直しになると面倒だし、行こうか」
全員が頷くのを確認し、俺達は森の中心に向かって歩き出した。
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