ガチャ341回目:蜂の巣

 『キラービー』が湧いたと思われる場所に辿り着くと、そこには巨大な蜂の巣が鎮座していた。……いや、蜂の巣って、こういうのじゃないだろ。なんというか、木とか電柱とか屋根の下とか、何かにへばりつくようにして作られるものであって……。

 なのにこの蜂の巣と来たら……。


「色々と規格外すぎる」


 大きさもそうだし、有り様からしておかしい。


「まさか、木のように地面から生えてるなんてね」

「蟻塚みたいですね」

「では、これは蜂塚ですの?」

「そうですね、お嬢様。もうここまでの規模になれば、そう呼んでも構わないかと」

「こんなの、第二協会の資料でも見たことないわ……」

「……こんだけデカいと、蜂の子とかもデカいのかな?」


 美味いって聞くけど、それはサイズが小さいからであって、こんな……。に巨大な巣に住んでそうな蜂の子は、多分一口じゃいけないサイズだと思うんだよな。


「さてご主人様。如何なさいますか」

「そりゃ決まってるじゃん。守る兵隊が居ないのなら、壊す一択でしょ」


 ……っと、その前に。

 一応視ておくか。


*****

名前:キラーハイブ

レベル:――

腕力:0

器用:0

頑丈:3000

俊敏:0

魔力:0

知力:0

運:なし


パッシブスキル】硬化、堅牢化、物理耐性、魔法耐性、

PBパッシブブーストスキル】指揮

スペシャルスキル】拠点強化、高速修理、眷属招集


装備:なし

ドロップ:キラーハイブの巣壁、キラーハイブの蜂の子、キラーハイブの甘露煮、キラーハイブの特濃蜜

魔石:なし

*****


 なんというか……。偏ったステータスしてるな。

 それに、レベルがないということは経験値が無いモンスターであり、スキルドロップもしないんだよな。アイテムは出るから良いんだが、『堅牢化』も『指揮』も他のスペシャルスキルだって、気になるものが多すぎる。それがドロップしないのはなんとも残念な話だ。

 だが、今は我慢するしかない。


「とりあえず……せいっ!」


 上段から振り下ろし、蜂塚を切り捨てようとする。


『ガィン!』


 しかし、フルブーストをしなかったせいか、それとも今までのモンスターの中で一番『頑丈』が高いせいか、本体の薄皮一枚を斬る事くらいしか出来なかった。


「かってえな……」

「ショウタさん、あれを!」

「!?」

『ブブブブブ』

『ブブブブ!!』

『ヴヴヴ!』

『ヴヴヴヴ……!』


 いつの間にか『キラーハイブ』を守るようにマルーンビーと『キラービー』が出現し、俺達を取り囲むようにして出現していた。厄介なのは、周囲を埋め尽くすように存在しているマルーンビーよりも、更に外周にて指揮を執っている4体の『キラービー』だろう。どいつもこいつも、巣を攻撃されたことで激高しているようだ。

 ここは小手先の一撃じゃなく、今度は本気で両断するつもりで攻撃するべきだったかもな……。だが幸いにも、蜂の群れが出現したのは少し離れた場所だ。なのであの煩い羽音は遠く、今ならまだ指示が出来る!


「マキとセレンは背後のレアと雑魚を! アキとイリスは左、アイラは右をイリスと迎撃しつつ他のサポート! アヤネは全体攻撃でエンキはその援護! カスミは……待機な」

「「「「はいっ!」」」」

「うん、わかった……」

「正面は俺が行く!」



◇◇◇◇◇◇◇◇



【レベルアップ】

【レベルが88から90に上昇しました】


 群がる蜂を倒し続けていると、ようやく敵の波が収まり、再び巣の近辺に静寂が戻った。

 念のためもう1度巣に攻撃しても蜂の増援は現れなかったので、恐らくあれが防衛戦力の全てだったんだろう。


「フルブースト。『無刃剣Ⅱ』!」


 一瞬でバラバラに切り裂かれた『キラーハイブ』はアイテムをばら撒きながら煙へと変わり、消えていった。


「ここでも煙は、どこかに移動したりはしないのか……」

「今までとは全然違いますわね」

「そもそもこの森に、あんな巣があるなんて誰も知らなかったわよ」

「ご主人様、回収終わりました」

「ご苦労様」

「ショウタさん、先程の『キラーハイブ』が落とした『キラーハイブの特濃蜜』、食べられそうですか?」

「何個出たの?」

「4つですね」


 マキの手には、黄金色に輝くドロドロの液体が入ったビンがあった。

 マルーンビーや『キラービー』も、こんな感じに瓶入りの蜂蜜をドロップしていたが、輝きは断然こちらの方が上だな。


 名称:キラーハイブの特濃蜜

 品格:≪最高≫エピック

 種別:食材

 説明:マルーンビーが集めた蜜を更に濃縮し、極上の味わいに仕上げた逸品。毒はないが、リピートしすぎて虫歯には注意。


「虫歯に注意だって。まあ、食べ過ぎなきゃ大丈夫かな?」

「じゃあ『克己』があるショウタ君が食べてみて、大丈夫そうか検証してからになりそうね」

「それが無難か……」

「毒見役ですわね!」

「お兄ちゃんってそういう役回りなんだ……」

「まあ毒はないって書いてるから、多分大丈夫じゃないか?」 


 夢中になるほど旨いのは良い事だが、おかしくなっても彼女達が止めてくれるだろうしな。


「よし。それじゃ、今の騒ぎにも我関せずを貫いていた蜂の群れがあと2つあるみたいだ。そっちにも多分巣があると思うし、叩くとしようか」

「「「「はいっ!」」」」

「……」


 皆が返事をする中、カスミだけは少し元気がない様子だった。


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