無料ガチャ028回目:チャット会話1

 それはショウタがスキルの山に埋もれ、悪戦苦闘していた時のこと。

 マキとアイラは夕食を作り、アキとアヤネはショウタを挟んで両隣から応援をしていた。


「ショウタ君。君が大量の魔石を持って帰ってきてた時、私がドン引きしていた気持ち、少しはわかってくれたかな?」

「絶賛実感中デス。……『圧縮』」

「んふふ。でもまあ頑張って。終わったらご褒美あげるから」

「おー……。『圧縮』。頑張るよ。『圧縮』」

「ファイトですわ、旦那様っ」


 そんな時、アキとマキの端末が振動した。

 第五層の入口のため、ここはか細いながらも外との電波が入るのだ。恐らく何らかのメッセージが届いたのだろうと判断し、マキは調理を中断して端末を確認する。


「……アイラさん、続きをお願いできますか?」

「承知しました。おまかせを」

「ショウタさん、どうやら例の二重告知を受けてお母さんから連絡が来ていたみたいです。少し離れますね」

「ああ、そう言えばこの告知で大変なのは俺だけじゃなかったよな。『圧縮』。義母さんにはごめんって伝えといて」

「ふふ。お母さんはこんな事で怒ったりはしませんよ。ですが伝えておきますね。姉さん、いこう」

「おっけー。じゃあねショウタ君、頑張ってね! アヤネ、あとは任せたわよ!」

「お任せくださいですわ!」

「おー……『圧縮』」



◇◇◇◇◇◇◇◇



[ミキ]

 状況の確認がしたいから、このメッセージを見たら返事が欲しいわ

 今回も彼がやってくれたものだと思っているけど、間違いないわね?


[マキ]

 お母さん、お待たせしました


[アキ]

 お待たせー。ショウタ君が別のユニークボスを倒した通知で間違いないよー


[ミキ]

 了解よ。2人ともお疲れ様

 それじゃ、定例報告を貰って良いかしら?


[アキ]

 おっけー


[ミキ]

 ちなみに彼は今どうしてるの?


[マキ]

 ショウタさんは今、数千個のスキルオーブに埋もれてるよ


[ミキ]

 そ、そう

 大変そうね……


[アキ]

 いつもモンスターを倒す彼は生き生きしてて格好良いけど、スキルオーブに囲まれてふにゃふにゃしてるショウタ君も可愛くて好きー


[マキ]

 うんうん! 無性に甘やかしたくなっちゃうよね!

 

[ミキ]

 はいはいごちそうさま

 音声認識の自動入力を使ってるんだから、惚気たらチャット欄にも反映されちゃうでしょ


[アキ]

 あ、そうだった


[マキ]

 えへへ


[ミキ]

 それで、今日の彼は何をしていたのかしら


[アキ]

 うん。まずショウタ君は、いつも通りゴブリンの制覇から始めたわ。結果はあの通知の通り。『レアⅢ』のユニークボスを倒して、ダンジョン全体に通知を起こして、ゴブリンのステータスが元の数値から3割減少。レアモンスターは半減! ドロップ率はショウタ君の場合確定だから違いがわかんないけど、多分一緒に上がってるんじゃないかな


[マキ]

 お母さん、その辺り変化の報告はあったの?


[ミキ]

 ええ、うちの子達の報告を聞いている限り上がっているみたいね

 ただ、ドロップ率も30%上昇とはどうにもちがうみたいなのよ。普段平均10%くらいの確率でしか手に入らない魔石が、13%よりも多い確率で手に入るらしいわ

 他にも4層の通知後にドロップ率が30%くらいだった子が、今回の通知後に50%くらいになったとか、アイテムが高確率でゲットしていた子はハズレを引かなくなったとか

 試行回数がまだまだ全然だから、ただの上振れかもしれないけど、その辺あの子はどう思ってるのか聞きたかったのよね。けど、今は忙しそうなのよね?


[アキ]

 たぶん大丈夫だと思うよ

 聞いてくるね!

 ショウタくーん!


[マキ]

 あ、お母さん

 ショウタさんが言ってたんだけど、お仕事増やしてごめんなさいって


[ミキ]

 ふふ、なにそれ

 これが私の仕事なんだし怒ったりはしないわよ

 むしろ、制覇した後の方がもっと忙しくなるだろうし、このくらいなんともないわ


[マキ]

 だよね。準備の方はどう?


[ミキ]

 順調よ

 といっても、お父様と国、それから各テレビ局への通達メッセージを用意するだけだから、そんなに時間はかからなかったわ

 マキから見て、制覇にはどれくらいかかりそうかしら


[マキ]

 最短であと2日。最長で1週間ってところかな

 ゴブリンはいつもの相手だったから、数が相手でも問題はなかったけど、ここの森と山はどっちもショウタさんにとっては未経験の相手だから……


[ミキ]

 それでも3日程度で抑えられると考えているのね。良い関係が築けているみたいで安心したわ


[マキ]

 うん!


[アキ]

 たっだいまー!

 ショウタ君に聞いてきたよー!


[ミキ]

 おかえりなさい。彼はなんて?


[アキ]

 んっとねー。モンスターのステータスが変動しているのと同じように、モンスター側の調整がされてると思うんだって。けど、ショウタ君的には『ドロップ率』って考え方じゃなくて『確定ドロップに必要な運値』が変動してるんじゃないかって言ってたよ


[ミキ]

 確定ドロップに必要な、運値?


[アキ]

 そー

 ショウタ君的には、第一層のゴブリンは『運』が100あれば『極小魔石』が確定ドロップするって考えてるみたいなのね。だから『運』が50ある冒険者なら50%の確率で魔石がドロップするし、『運』が10ある冒険者なら10%の確率で魔石がドロップする

 でも今回、その値が『3割減』していたと仮定すると、確定ドロップラインは『運』が70になってる。なら、『運』が70ある冒険者なら確定ドロップになるし、『運』が10ある冒険者なら7回に1回の確率でドロップするという事


[ミキ]

 なるほど……

 流石の着眼点ね


[マキ]

 ショウタさんはやっぱりすごいね!


[アキ]

 うんうん、あとでいっぱいご褒美あげましょ!


[ミキ]

 はいはい、そういうのは後で好きにしなさいってば

 とにかくドロップ率に関してはその方向で再調査をかけるわ。何か分かったらまた連絡するわね


[マキ]

 はーい


[アキ]

 おっけー


[ミキ]

 それと、第二層のゴーレムの動画だけど、準備は整ったから早速明日から公開するわ。今はゴブリンで皆忙しいはずなのに、それでもすぐに予約でいっぱいになったわ


[アキ]

 おおー!

 やっぱり他のダンジョンでも関係のありそうな情報だもんね!


[マキ]

 でもアヤネちゃんみたいに大規模な魔法が使える人って中々いないから、試せる人はそんなに多くはないよね?


[ミキ]

 そうね。だけど、試せるチームは試したくなるだろうから、そういった人達には担当している支部長達が口酸っぱく注意するみたい。環境破壊する時は、他の冒険者を巻き込まないようにってね


[アキ]

 あー……

 ショウタ君は近くに誰がいるかわかるけど、他はそうでもないものね


[マキ]

 他のチームは大変そうだね

 やっぱりショウタさんは……!


[アキ]

 そうね、やっぱりショウタ君は……!


[ミキ]

 はいはいはいはい

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