ガチャ334回目:第三フィーバー
「……これで1対1。いや、2対1か?」
『グフフッ、見事也』
『ガドガダ』は崩れ落ちそうになる身体を、剣を突き立て何とか耐えている。
奴の身体は全身が切り傷に溢れ、見るからにボロボロだった。もう立つことも出来そうにないのに、その目にはまだ闘志が宿っていた。
「なにか言い残すことは」
『……弟ハ、強カッタカ?』
「『ガダガ』のことか? ああ、あいつは強敵だったよ」
『ソウカ。……ソレガ聞ケタダケ、十分ダ』
やっぱコイツにも、兄弟という概念はあったのか。そして、これ以上は喋る気はないと言わんばかりに口を閉ざした。
「あんたとの戦いも、楽しかったぞ」
『ソウカ』
「手向けだ。とっておきの技で仕留めてやる……フルブースト、『閃撃Ⅲ』!」
『斬ッ!』
剣を振るうと斬撃が飛び、『ガドガダ』の頑丈な鎧ごと、その首を断ち切った。
【レベルアップ】
【レベルが132から221に上昇しました】
【ゴブリン種の象徴が撃破されました】
【以後一ヶ月間、該当ダンジョンでスタンピードが発生しなくなります】
【以後一ヶ月間、該当ダンジョンで対象モンスターのステータスが低下します】
【以後一ヶ月間、該当ダンジョンで対象モンスターのドロップ率が上昇します】
『閃撃』は武技スキルではあるが、正直に言ってしまえばアーツスキルの『衝撃』を超強力に昇華し、1つの技として落とし込んだスキルでもあった。その為か、フルブースト時に『衝撃Ⅳ』も同時に発動すると、『閃撃』もⅢまで技の格が上がり、『ガドガダ』の首を両断する威力にまで成長したらしい。
ただ、これは『決闘Ⅴ』のせいでステータスが抑えられた状態での必殺技だったから、多分解除された今、威力はもっと高まってるかもしれないな。
「ショウタさん!」
「旦那様~!」
結界が解除されると、マキとアヤネが真っ先に飛びついて来た。
「今日も格好良かったです!」
「最高でしたわー!」
「ああ、ありがとう」
甘えてくる2人を宥めていると、他の皆もやって来た。
アイラはいつものようにドロップアイテムの回収をしてくれているが、アキとカスミの興味は、もっぱら『魔導の御手』に向いているようで……。
「あの黒腕がきちんと活躍しているのを見ると、改めてすごいスキルなんだなって実感できるわね」
「あれもお兄ちゃんのスキルなの?」
「そうだよ。少し前に取得した時は無印だったから、あの腕も1本までしか呼び出せなかったけど、Ⅱになったことで2本同時に召喚できるようになってね。それでようやく、自分で弓を引かなくても矢を放てるようになった訳さ」
覚えたての頃は『クラーケン』戦だったけど、1本の腕を操ったところで殴りかかるには相手が悪いし、余っている武器を持たせるにも水属性の『激流の三叉槍』じゃ相性が悪い。弓を持たせても腕1本だけじゃ射る事は出来ないし、手詰まりだったんだよね。
だからこの前Ⅱに上がって、それにより操れる腕の本数が増えたのは本当に革命だった。
「じゃあじゃあ、この腕って、自動で動いてくれるの?」
「いや、全部手動だよ。だからなんていうかな、自分の腕が4本になったような気分だな。『並列処理』のスキルが無いと、とてもじゃないけど操れないよ」
「うわぁ……。大変そうだね」
「『並列処理』さまさまだねー。ショウタ君のスキルの中で、今一番活躍してるスキルじゃない?」
「あはは、確かにそうかも」
「……ねえ、マキ、アヤネ? そろそろ交代してくんない?」
アキにそう言われてハッとなった2人が俺から離れ、入れ替わるようにして、アキと遠慮がちにカスミが抱き着いてくる。
もしかして、戦闘後のハグに順番が出来たのか?
「ご主人様」
「ああ、アイラお疲れ。いつも回収してくれて助かるよ」
「これが仕事ですから。それと先ほど出現した『ユニークボス』のメッセージですが、確認したところ効果が重複しているようです」
「マジで?」
「はい。その辺のゴブリンのステータスを『隠形』して見てきましたが、1割+2割で3割低下していました」
「……マジで?」
「はい、マジです」
ステータスが3割減少とか、マジでやばいな。
1割だけでも相当だったのに……。そんなに弱体化しているのなら、他の冒険者から忌避されていたこの第五層でも、狩りが捗る事になりそうだな。レアモンスターの場合現象の割合が違うから、下手すると5割くらい下がっているかもな。
「どうされますか?」
「初日から1000匹近いゴブリンの壁を越えてくるとは思えないが、念のためお客さんが押し寄せてくる前に、今日中にゴブリン系統の強化体まで済ませてしまおう」
「承知しました」
「その為には、まずレアモンスターの『チャンピオンゴブリン』の出現条件を確認しないといけませんね」
「だな。でもその前に、昼食にしよう」
そうして俺達は、一旦ゴブリンの集落から離れる事にした。
休息中に雑魚ゴブリンに絡まれるならまだしも、レアモンスターに絡まれたら面倒だしな。太刀打ちは出来るけど、それでは気が休まらない。
マップで見る限り、集落よりも奥に進むとダンジョンの壁があるのだが、その近辺はモンスターの出現率は著しく下がるらしい。道中ではどこもかしこも密集して出現してたため、彼女達も少し疲労が溜まっていそうだし、そこで休憩をすることにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「この子達は、ご飯も食べるの?」
「エネルギーとしては魔力で十分だけど、食事をする事自体は可能みたいで、嗜好品として食べてる感じかな。まあエンキは完全に食べないけど」
『ゴゴ~』
昼食を摂った俺達は、見張りをしてくれていたエンキ達を労わっていた。魔力は俺だけしか与えられないので、魔力を与え終わった彼らには皆が順番にお菓子やらなにやら与えている。
イリスの場合は食の好みが俺と同じなのか、食卓で同じものを食べてるが。
「エンキちゃん、気持ちよさそうだね」
「エンキは食べない代わりに、俺に撫でられるのが好きみたいなんだ」
「へぇ~、気持ちはわかるな~。私もお兄ちゃんに撫でられるのは好きだもん。ねえエンキちゃん。私も撫でて良い?」
『ゴ、ゴ』
「良いって」
「やったー!」
セレンを挟んで可愛がっていた姉妹の内、アキが何か思い出したように顔を上げた。
「そういえばショウタ君。さっき戦ってた3つ目の集落、レアモンスターは湧いた?」
「……いや、まだ出現してないな」
お供の30匹は湧いてるようだが、赤丸の反応はない。
「でも1カ所目のレアモンスターは、2カ所目に到達した時点ではもう湧いてたのよね?」
「そうなるな。2つ目の集落も『ガドガダ』戦の時にはもう出現していたみたいだし……。両方とも、移動時間に30分ほどかけていたが、今は休憩を始めて1時間くらいか。時間だけが条件なら、そろそろ湧いていてもおかしくないんだが……」
となると、条件は全く別の物か、それとも複合型か。もしくは煙は出ないだけで
なんにせよ、調査のし甲斐があるな。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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