ガチャ331回目:煙の挙動

『斬ッ!』


【レベルアップ】

【レベルが29から88に上昇しました】


 雑魚ゴブリンの相手はエンキとエンリルに任せ、『チャンピオンゴブリン』と相対した俺は、一撃で相手の胴体を両断した。『頑丈』はたったの400……弱体化で320しかないパワータイプだったので、いけそうな気がしたのでやってみたんだが、スキルを使わずに出来てしまうとは。

 俺も成長したなぁ。


 そうしていつものように死体が煙を吐き出し、モクモクと立ち昇る。あとはこれが『レアⅡ』に変わるかを確認すれば……。

 そう思って眺めていたら、煙は突然10メートルほどの高さまで浮き上がり、明後日の方向へと飛んで行ってしまった。


「……なにっ!?」


 慌ててマップを開き、飛んで行った方向を調べる。するとその先には、別のゴブリン集落があることが判明した。流石にマップに煙は映らないが、こっちの集落に向かえば何かが分かるのか……?


「飛んで行っちゃいましたね」

「ここのレアモンスターは、飛んで行った先で出現して、ここまで移動してきたのでしょうか?」

「あっちに本命の巣があるってことですの?」

「どうかしら? ここのレアモンスターは、出現条件が謎に包まれてるのよね」

「何でもいいさ、とにかく向かってみれば……」


 そう言ったところで、マップに変化が起きた。

 飛んで行った先にある集落に表示されていた『チャンピオンゴブリン』を示す赤丸が巨大化し、再び名前が見れなくなったのだ。


「……煙に、喰われたのか?」


 煙がモンスターを食らうというのは、『アンラッキーホール』で見た事がある。だが、あちらではレアモンスターまで食われる事は無かった。何が起きてるのかは分からないが、結局行ってみなきゃ分からないよな。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 道中のゴブリンを蹴散らしながら進む事30分。ようやく2個目の集落へと辿り着いた。


「でっか……」


 そこには、明らかに縮尺のおかしいゴブリンがいた。アレがレアを食らって現れた『レアⅡ』と見て間違いないだろう。


「巨人がいますわぁ」

「目測、5メートルほどでしょうか。あのサイズのゴブリンは初めて見ますね」

「ゴブリンのレアモンスターは、大きくても2メートルや3メートルがほとんどだけど、あれは規格外ねー」

「お兄ちゃんといると、色んなモンスターが見られて楽しいかも」

「ふふ、そうですね。ショウタさんがいると、慣れ親しんだダンジョンすら別の顔を見せてくれますね」


*****

名前:ジャイアントゴブリン

レベル:120

腕力:1200(-300)

器用:800(-200)

頑丈:1040(-260)

俊敏:640(-160)

魔力:7999(-2000)

知力:80(-20)

運:なし


ブーストスキル】剛力Ⅳ、怪力Ⅳ、俊足Ⅳ、迅速Ⅳ、鉄壁Ⅳ、城壁Ⅳ

パッシブスキル】身体強化Lv4、体術Lv3、格闘術Lv3、剣術Lv3、槍術Lv3、蛮勇

PBパッシブブーストスキル】統率Ⅲ、破壊の叡智Ⅲ

アーツスキル】跳躍Lv3、ウォークライⅢ、騎乗Ⅲ


装備:巨人の剣、巨人の鎧

ドロップ:ランダムな装備

魔石:特大

*****


 ジャイアント、ね。

 確かにデカい分強くはなっているし、スキルも軒並み強化されてはいるが……それだけだ。弱体化の影響も出てるし。

 見た感じ、特殊なスキルなど何もないようだし、巨大な敵はゴーレムを相手に沢山戦ってきたから、今更恐れるような相手ではない。雑魚モンスターは相変わらず30匹くらいいるけど、物の数ではないしな。

 とりあえず当たってみるか。


『ゴ! ゴゴ!』

「ん? 1人でやってみたいか?」

『ゴゴー』

「なら任せた。エンリルには雑魚モンスターの処理を任せる」

『ポポ!』


 そうして2人に任せて観戦する事数分。

 雑魚モンスターは早々に蹴散らされ、エンリルも俺達の傍で同じように観戦態勢を取っていた。


『ゲアアアアッ!!』

『ゴ!』


 今まで『レアⅡ』のゴブリンは、4体中2体が雑魚召喚などの特殊能力を持っていたが、どうやらこいつにはそういうのはないらしい。一応叫び声には『眩暈』の状態異常が付与されているっぽいが、効果が出ているのはカスミくらいのもので、俺は耐性指輪があるし、彼女達は特製のネックレスがある。エンキ達は言うまでもない。

 なのでその特殊能力は、大して意味を成していなかった。


『ゴゴー?』

「ああ、もう倒して良いぞ」

『ゴ!』


 もう十分画は撮れただろう。そう判断を下すと、エンキは鉄の拳を使ってラッシュをかけ始めた。

 最近のエンキのトレンドアニメは、『武闘術』のスキルを覚えた影響か、ロボットが格闘戦をして悪者を撃破するバトル物らしい。そして視聴する際は、身体がウズウズするらしく、テレビの前でパンチやキックを繰り出していた。

 アニメを見るときは小人形態のため、見ていて微笑ましくなるが、5メートルの巨人サイズだと凄い威力だな。エンキの攻撃がヒットするたびエグイ音が鳴ってるし、数発殴られただけで相手はフラフラだった。


『ゴゴー!』


 最後には盛大なアッパーをお見舞いし、『ジャイアントゴブリン』は煙へと変わるのだった。


【レベルアップ】

【レベルが88から132に上昇しました】


 まだちょっと足りないか。

 そう思っていると、煙は再び上空へと浮かび上がり、またしても明後日の方向へと飛び去るのだった。


「ショウタさん、あっちの方向にはやっぱり……」

「ああ。最後の集落があるはずだ」


 そうしてマップを開けば、またしても『チャンピオンゴブリン』と表示されていた赤丸は、しばらく待つと巨大な赤丸へと変化し、名称不明のモンスターになった。そして先ほど通ってきた1カ所目の集落には、気付かない内に『チャンピオンゴブリン』が出現していたのだった。

 いったいいつの間に湧いたんだ?


「まったく、この層は分からないことだらけだな」

「ふふ」

「もう、全然困った顔してないじゃない」

「ご主人様はダン畜ですからね」

「旦那様が楽しそうでなによりですわっ!」

「今のお兄ちゃん、お父さんそっくりだよー」

「む……」


 だからダン畜ってなんだよ。

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