ガチャ330回目:ゴブリンの大軍団

「これで、100匹!」


 ゴブリンのチームを蹴散らす。1つ1つの集団密度が高いから、あまり動かなくてもすぐ100匹に到達できたな。

 問題があるとすれば、数が多すぎてまるで前に進めていないことくらいか。


「……反応なし、か」


 ここまで経験してきて、俺やアイラが数え間違いをするはずがない。念の為準備運動がてら俺だけで100体討伐をしたから、余分に倒しすぎたわけでも、少なすぎる事もないはずだ。

 となれば、この100匹で湧かなかった理由は3つ。抽選ミスか、100匹ルールの対象外か、この方法ではレアモンスターが出現しない設定か、もしくは湧きようがないかのいずれかだ。

 抽選ミスは考えにくい。最下層とはいえ、まだまだ第五層だし、こんな浅層で『運』12500じゃ足りないというのは考えづらい。となれば、100ではなく500とか1000の可能性だってあるわけだから、このまま殲滅力を上げつつ集落へ向かうか。


「よし、ここから全員で蹴散らしていこう! 悪いけどカスミは防御以外で手を出しちゃダメだからね」

「うん、分かってる。皆さん頑張ってください!」

「それじゃ、行くぞ!」



◇◇◇◇◇◇◇◇



「ふぅー……。ようやく集落に到着か」


 1時間ほどかけた行軍の末、ようやく目的地の1つに到着した。

 ここからでは『真鑑定』の有効射程外の為詳細は不明だが、明らかにレアモンスターの風格を感じさせる奴がいて、その周辺を30体前後の雑魚ゴブリンがひしめいている。


「いっぱい倒しましたわ……」

「皆さんお疲れさまでしたっ! 凄かったです!」

「ふふ、カスミちゃんありがとう」

「やっぱり皆で戦えるのって楽しいわねー」


 マップが示す中で一番近い拠点を目指して真っ直ぐに進んできたが、一体道中には何百匹のゴブリンがいたことやら。連中の得意武器が異なる関係上、戦い方は第四層とは違って新鮮だったし楽しくはあったが、絶対これ1人でやることになっていたら手数が足りなかっただろう。

 エンキ達を仲間に出来た事。そして彼女達と共に戦えるようになったこと。どちらが欠けてもこう上手くは行かなかっただろうな。


『ゴゴ!』

『ポポ~』

『プルル……』


 エンキ達も暴れられて楽しそうではあったが、イリスだけはテンションが低かった。


「美味しくなさそうだからやる気出ない?」

『プル。プルルン』

「イリス、昼食には沢山作りますから頑張ってくださいね」

『プルル!』


 これがオークなら話は違っただろうが、ゴブリンだしな。『悪食』をもってしても食べたいとは思えないというのは僥倖かもしれない。普通に緑色の肌をした小さい人間だし、コレを食べたいと思えるなら、それすなわち人間も食料に見えてしまいかねない訳だ。

 まあ、そこはイリスの嗜好の問題かもしれないが……。


「ご主人様、統計が終わりました」

「おう、ご苦労様」

「『小魔石』は1145個。スキルも1145個ドロップしました」

「おおう……」


 第四層ではゴブリンは4種類いて、対応するスキルも4種類あった。

 『ファイターゴブリン』が『剣の心得Lv1』。

 『レンジャーゴブリン』が『追跡者』。

 『ナイトゴブリン』が『鉄壁』。

 『ジェネラルゴブリン』が『剛力』。


 だがここ第五層では、ゴブリンは5種類もいて、対応するスキルもまた5種類あった。

 『アーチャーゴブリン』が『射手の心得Lv1』。

 『クラッシュゴブリン』が『武芸者の心得Lv1』。

 『ランサーゴブリン』が『槍術師の心得Lv1』。

 『シーフゴブリン』が『俊足』。

 『ジェネラルゴブリン』が『剛力』。


 心得シリーズがまさか新たに3つも出て来るとは思わなかったが、『圧縮』してしまえばそれらは『弓術』や『槍術』などの便利スキルになるはずだ。処理は大変だが、大変ありがたい話だった。


「内訳は?」

「『射手の心得Lv1』248個、『武芸者の心得Lv1』246個、『槍術師の心得Lv1』250個、『俊足』232個、『剛力』169個です」

「ふむ……」


 『ジェネラルゴブリン』はゴブリン集団を纏めるリーダー的立ち位置だからか、ちょっと数が少ないみたいなんだよな。これで『統率』を持っていたら難易度は上昇していたんだろうけど、逆に俺達が扱いきれないから今のところ『統率』スキルは不要だ。それならまだ扱いきれる『剛力』の方が助かるってもので、俺達としても『ジェネラルゴブリン』が弱いのはありがたい話だった。


「お兄ちゃんが貴重なスキルをポンポンとくれようとする訳だよね……」

「それもあるけど、不用意にばらまくつもりはないぞ。カスミが大事だから渡そうとしただけだ」

「お兄ちゃん……!」


 カスミの顔に花が咲き、今にも飛びつこうとする雰囲気を見せたが、ハッとなって押し留まった。どうやら昨日の今日で我慢を覚えたらしい。昨晩彼女達と話した成果だろうか?

 まあ現状を考えれば、踏み止まってくれてありがたい。この階層は第三層以上に協会の調査が進んでいないらしく、ゴブリン地帯では安全地帯が見つかっていないという話だ。なのでいつまでも、モンスターの出現地帯のど真ん中で談笑していようものなら、再出現したゴブリン達に囲まれてしまうかもしれない。

 一応第五層入り口の再出現時間はある程度判明していて、大体30分前後らしいのだが、それがこの奥地でも同じである保証はどこにもない。だからさっさと集落のレアモンスターを叩くとしよう。


「よし、小休憩は終わりだ。行こう」


 そうして集落に近付き、50メートルほどの距離に近付くと、向こうも俺達の存在に気付いたようだった。


『ゲギャギャ!』

『ゲッゲッゲ』

『ゲギャ!』


*****

名前:チャンピオンゴブリン

レベル:70

腕力:720(-180)

器用:520(-130)

頑丈:320(-80)

俊敏:320(-80)

魔力:2400(-600)

知力:240(-60)

運:なし


ブーストスキル】剛力、怪力、俊足、迅速、鉄壁、城壁

パッシブスキル】身体強化Lv2、体術Lv2、格闘術Lv2、剣術Lv2、槍術Lv2、勇猛Ⅱ

PBパッシブブーストスキル】統率、破壊の叡智

アーツスキル】跳躍Lv1、ウォークライ、騎乗


装備:荒削りの魔鉄剣、荒くれ者の鎧

ドロップ:ランダムな装備

魔石:大

*****


「レアでLv70か。それなりだな」


 改めてマップを開けば、残り2カ所の名称不明のゴブリンも『チャンピオンゴブリン』に変化していた。なら、まずは強化体を目指して、この3匹から倒すとするか!

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