ガチャ329回目:なんか仲良くなってた

 その後、ガチャが終わっても彼女達が戻ってくる気配はなかったため、ゴブリンの装備を徹底的に解体することにした。『魔鉄加工術』は単独であれば専用の設備を必要とするが、『魔石操作』のスキルを使用して『極小魔石』や『小魔石』などからエネルギーを引き出すことで、装備品に使われた鉱石をインゴットなどに再加工することが出来る。

 その為、大量に得た装備品は魔石を消費することで次々にインゴットへと変わっていき、結果数百キロのインゴットへと成り果てた。最初はエンキの為に始めたこの作業だが、元々エンキの操る砂鉄は使い捨てじゃないからな。こんな大量に入手しても腐らせるだけだ。

 ならばと市場に流してしまいたいところではあるが、入手先はどこかと聞かれたら答えられないのが困りものなんだよなぁ……。まあ『Sランク冒険者』として黙秘権を発動させたら良いのかもしれないが……。


 そんなことを考えていると、ようやく彼女達がカスミを連れて戻ってきた。カスミは何だか顔が赤いし、こっちと視線を合わせないんだが? なんだろう、彼女達から赤裸々な話でもされたんだろうか?

 特にアイラ辺り。


「おかえり。こっちは終わったよ」

「お疲れ様です、ショウタさん。すぐにご飯にしますね」

「うん、よろしく」


 後はすることもないし、ゆっくり休むとするか。

 俺はイリスを枕にしつつ、皆の様子をぼんやりと眺めていると、カスミが近くにやってきた。


「お兄ちゃん、2人ともすごい手際だね。手伝おうかと思ったけど、かえって邪魔になっちゃいそう」

「ああ、マキとアイラ? あの2人の料理に対する動きはいつ見ても惚れ惚れするよな。『器用』を高めても同じ動きができる気がしないわ」

「そうだね……。ねえお兄ちゃん、やっぱり女の子なら手料理作れた方がいいかな?」

「そりゃまあ、惚れた女の子の飯は食いたくなるもんだけど……。って、うちでは父さんが作ってくれてたもんな。今もそうなのか?」

「うん。チームでも得意な子にお願いしてるから、私は全然ダメなままなんだー」

「そっか。まあ俺は一人暮らしが長かったからな。最低限のことは出来るようになったけど、本格的なのはやっぱダメだな。なんというか、メインの1品作ったら満足して、副菜とか考える気にならないというか」

「ふふっ、容易に想像できちゃう。でもお兄ちゃんが自炊出来るのは、元々お父さんの手伝いをしてたもんね」

「それもあるかなー」


 そうしてカスミと、とりとめのない話をして、出来上がった夕食を皆で食べる。食事中彼女達の話に相槌を打ちつつカスミの様子を見ていると、やっぱり皆との距離が縮んでいるというか、仲良くなっている気がする。

 女の子同士だし、積もる話でもあったのかな? まあ、仲が良いに越したことはないか。


 食事も終わり、お風呂タイムを終え、カスミがテントに戻って行ったあと、彼女達は目の色を変えた。時にアキとマキ。どうやらカスミの存在が、邪魔とまではいかないが、あいつがいたことで普段のように甘えられず、フラストレーションが溜まっていたらしい。

 俺はそんなの関係なしにウェルカムだったし、アヤネやアイラもいつも通りでおかまいなしだったが。2人としてはカスミに遠慮したらしい。


「てか、いつものようにするのはもう諦めたというか、構わないんだけど……。出来たかもしれないのにいつも通りで問題ないの?」

「あのねショウタ君。それを言ったらダンジョン通いとか論外じゃない?」

「……それもそうか」

「そもそも、レベルアップして丈夫になったあたし達の身体は、そんな柔じゃないわ。だから気にしないでいいのよ」

「そっか。分かった」

「でも、心配してくれるのは嬉しいです」

「そうね。ありがとショウタ君」

「どういたしまして。ところで、大事を取って加減などは……」

「「「「ありません」」」」

「……さいですか」


 どうやら、いつも以上に長期戦を強いられてしまいそうだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 翌朝。

 徹底的に搾られそうな気がしていたが、蓋を開けてみれば俺の逆転勝ちだった。多分思い付きで使用した『魔導の御手Ⅱ』の成果かもしれない。本来こういうことをする為にゲットした訳ではないと思うんだが、1対4の圧倒的不利な中で逆転するにはああするしかなかったのだ。

 仕方がない仕方がない。


 朝食を済ませて俺達は再び第五層の入口から、3つのエリアを見下ろしていた。

 朝食の際、エンリルには3つの内の1つであるゴブリンエリアを偵察してもらったので、既に大体の情報は手元に集まっていた。ゴブリンエリアは広大な草原地帯に広がっていて、マップに映る赤点で確認するだけでも1000体を軽く超す量のゴブリンがいる事がわかる。

 そしてその奥地には、第四層で建てられていたような集落が3つ存在していて、そこには明らかに風格の違う存在が鎮座していた。そいつらは周辺にいる雑魚モンスターと比べて、体躯からして異質であり、表示される情報も赤点ではなく赤丸だった。

 そして見張りをしていたエンキ達曰く、今日は誰もこのエリアに降りてきていないそうだ。誰かが湧かせたわけでも無く、半日近く放置されているのに出現したままのレアモンスター。普通でないことは明らかだ。

 その情報から考えられることは、1つしかない。


「アキ、マキ。ここのレアモンスターってもしかして、何もしなくても出現するのか?」

「うん、正解!」

「というより、条件が不明なんです。気付いた時にはいつの間にか出現しているようなんです。また、1度出現したら倒されるまで時間経過で消滅する事もないそうです」

「へぇ……」


 今まで戦ってきたレアモンスターは、ほぼ全てが『運』による100体討伐での抽選の結果出現するものだったが、この階層は仕組みからして違うらしいな。こんなケースは初めてだ。

 モンスターの名前は俺の『真鑑定』で1度は認識しないとマップには反映されないし、『視界共有』から『真鑑定』は使えないから、現状マップでの表示は『???』になってる。見た目としては3体ともまったく同じで、『コマンダーゴブリン』に近いものを感じた。あれが『レアⅠ』だとしたら、倒せばそのまま『レアⅡ』になるのだろうか? それとも3体集めて一気に倒す必要があるのか? また再出現にかかる時間は?

 謎が多いが、まずはぶつかって確認するか!

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