ガチャ327回目:婚約者会議

 居間でくつろぎたい気持ちを抑え、『圧縮』を片付けなければと思いアイラに指示を出す。


「アイラ、スキルとアイテム出してー」

「……あ、はい。畏まりました」

「……?」


 なんかいつもと違って、返事がワンテンポ遅かったな。そう思って見ると、彼女達は皆何か考え込む様に黙り込んでいた。

 なんだ?


「ショウタさん。今から『圧縮』とアイテム整理ですよね?」

「うん、そうだけど……」

「ではその間、私たちは婚約者会議を開きますので別室にいますね」

「え? ……わかった」


 婚約者会議って、確か俺との関係の中でどうするか相談するときに使っていたような……。俺、なんかしたっけ?

 そんな不安に駆られつつも彼女達が部屋を出ていくのを見送る。


「……まあ考えたって仕方ないか。とりあえず、目の前の山を片付けよう」



◇◇◇◇◇◇◇◇



「ではここに、婚約者会議を始めます」

「今回の議題はかなり深刻ですね」

「今回で何回目だっけ?」

「7回か8回目くらいだと思いますわ。でも、いっぱい話し合えるのは仲良しの証だと思いますわ」

「ふふ、そうだね」


 婚約者会議は、彼女達4人が婚約者となったその日のうちに発足した話し合いの場であり、主にショウタとの関係性を保つ上で、必要な事が議題に挙げられやすい性質を持っていた。

 『ショウタが簡単に他の女の子に興味を持たないようにするにはどうするべきか』や『ショウタとの夜はどう回していくか』などが挙げられる。

 そして今回の議題は、兄を心配して予想の斜め上の行動力でやって来た、妹のカスミに関してだった。


「まずカスミちゃんについて、私達の意見を纏めましょう。性格は真面目でしっかりしてるように思うかな。ちょっと行動力ありすぎるのが怖いけど」

「そこは兄妹といったところね。ショウタ君も行動力の塊みたいなもんだし」

「そうですわね。わたくしとしては、妹ポジションを奪われた気がしますの。ただ、本来はカスミ義姉様があの位置にいたのを、わたくしが割って入っただけなのですが……」

「カスミ様のあの甘えよう、恐らく10年ぶりに打ち解け、心から甘えられるようになった反動なのでしょう。ご主人様は出会ってすぐの頃からお嬢様を甘やかしがちですが、恐らくそれも昔のカスミ様を思い出して無意識にされていたのかもしれません」

「あぅ……」

「でも安心して、アヤネちゃん。今のあなたはショウタさんの婚約者。妹ポジションでなくなっても、その事実は変わらないよっ」

「マキ先輩……! はいですわっ!」

「確かにショウタ君、最初の頃はアヤネに対して小動物を見るような目をしてたけど、今はあたし達に向けるのと同じ目をしてるもんね」


 惚気始める3人を見て、アイラは咳払いを入れた。


「おほん。脱線したようですので改めて確認します。アキ様はカスミ様のことをどう思われますか?」

「どうって……。一言で言えば『お兄ちゃん大好きっ子』じゃない? 親族が『Sランク冒険者』だと発覚して押しかけてくるまでは良いとして、あんなにべったり甘えたり、わざわざダンジョンについてきたりはしないでしょ。ふつう」

「そうですね。以前私の方でもご主人様の経歴を洗う際に知る機会がありましたが、そちらでもあの方は普通ではありませんでしたね。流石はご主人様の妹様と言うべきでしょうか」

「そうなんですのね」


 それからもカスミのひととなりと、話していて感じた認識を擦り合わせ、互いに共有していく。


「ではやはり、ショウタさんと物理的に離れていたことよりも、心が離れていた期間が長すぎた結果、こじらせている可能性がありますね」

「カスミちゃんはショウタ君のこと、兄として好きなのかしら? それとも異性として?」

「それは聞いてみないとわかりませんわね」

「感情が暴走した結果、認識がすり替わっている可能性もありますね。ちなみにご主人様のテントですが、以前使用した時のままですので、ご主人様の匂いなどは残してあります。ですのでそこでナニをしているかで判別できるかと」

「うわぁ……。酷い判別方法」

「黒歴史を作ることなっちゃわないかな……?」



◇◇◇◇◇◇◇◇



「あ、会議は終わった?」

「ごめんなさい、まだ途中なんです。ショウタさんの方はどうですか?」

「んー、まあスキルの方は終わったかな。魔鉄の方はスキルの振り分けと、ガチャが終わってからにすることにしたよ」

「旦那様、おつかれさまですわっ」


 飛んでくるアヤネを抱き留める。よしよし。

 そうして彼女を撫でていると、いつもなら頬ずりしてくるアヤネがすぐに離れてしまった。


「ん、どうした?」

「これからわたくし達、カスミ義姉様のところにお話に行ってきますの!」

「そうなの?」

「だからショウタ君、悪いけどスキルの割り振りはあたし達の分は置いといてくれる?」

「ああ、わかった」


 そうして出ていく皆を見送ると、TVでアニメを見ていたエンキ達がやって来た。


『ゴゴー』

『プルル』

「手伝ってくれるのか?」

『ポポー』

「ありがとなー」


 じゃあスキルの振り分け先を考えますか。今回ドロップしたスキルの内、まず通常ゴブリンからの大量スキルは808個だ。『剣の心得Lv1』222個、『追跡者』196個、『鉄壁』208個、『剛力』182個。それらと今までの在庫になっていた関連スキルも『圧縮』した。


 うん、これだけ『剣術』があれば、『剣聖』のレベルを上げられそうかな。

 にしても、彼女達は婚約者会議の途中でカスミの所に向かったんだよな? 何を話すつもりなんだろうか……。

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