ガチャ326回目:初の第五層
再び巻き起こったフィーバータイムの到来に歓喜する冒険者達。彼らに感謝されながらも、俺達はそのまま第四層の階段を降りて行った。もうここに用はないし、俺達の目的地は第五層だ。話に聞く限り、キャンプは少し狭いが、そっちでも張れるみたいだしな。
それと、一時的にだがフィーバータイムが終わっていたことで、第五層にまで広がっていたゴブリン目当ての冒険者達も今は引き上げているらしい。キャンプ地を確保するなら今を措いて他にないだろう。
「ここが第五層か」
「はい。そして最終層のはずです」
「アイラさん、『ダンジョンマーカー』をお願いできる?」
「はい、こちらに。……どうやら、最終層で間違いないようですね。白の指針しか浮かび上がりません」
ここの入り口は少し高い丘のようになっていて、最下層の入り口近辺なら、ここから見渡すことが出来そうだ。
正面に見える巨大な山。
左手には鬱蒼とした森。
右手には川と平原。
どうやらこの第五層は、今までこのダンジョンで体験してきた3つのフィールドで成り立っているようだった。
「今までの集大成みたいですわ」
「そうだな。でもヘビはいないだろ、たぶん。……いないよね?」
「はい。
ほっ。邪眼はコリゴリだからな。
少し気になる言い方をしてたけど、まあそこはおいおい確認するとして……。
「……ふーむ」
山と森に関してはモンスターの姿は見えないが、右手の平原なら動き回るモンスターの姿がよく見えた。
「そういえば、ここにもゴブリンがいるんだったか」
「はい。平原はゴブリンエリアになっていて、第四層に近い生態系となっています。ただ、あまりここでの狩りは人気がありません」
「というと?」
「ショウタさん、そこからゴブリンは何体見えますか?」
「2、4、6……なるほど。1つ1つの集団が12とか、とにかく規模が大きいのか」
それに、奴らが持つ武器の種類は第四層と一部異なった。となれば奴らの職業というか、持っているスキルも違うんだろう。第四層で経験したのとは異なるスキルと役割を持ち、なおかつ数が倍以上の集団と連戦が強いられるとなれば、安全面を考慮してここでの狩りは推奨されなさそうだ。
特に、あの集団の中には弓持ちがいる。『剣術』と同等クラスの存在である『弓術』を出す奴が何十匹も出現するとは考えにくいから、『剣の心得』に近いスキルを持っているのかもしれない。馬鹿正直に突っ込んでくるゴブリンのなかに、遠距離攻撃持ちが混じっているとなれば戦いの難易度が急激に跳ねあがるだろう。
忌避される訳だ。
「……うん、ショウタ君もここの面倒くささを理解したようね。ただ一応補足しておくと、フィーバータイムが始まってから、ステータスが2割も落ちた事で、合同チームで狩りをしたって報告は入ってきているわ。また、その合同チームは、第三層の『ドレッドボア』と『ベルクベア』を倒した実績があるの」
「へぇ、あの2匹を……」
「その合同チームを纏め上げていたのは、ご主人様のご友人の方です」
「もしかしてシュウさん?」
彼女達が頷いた。
そうか、シュウさんがそんな事を……。となると、ここのキャンプ地に拠点のテントを建てていたチームというのも、シュウさん率いる冒険者合同チームだったのかもしれないな。もしそうなら、今回は気を利かせてくれたのかもしれない。あとで確認のために端末で連絡しておこうかな。
ああでも、シュウさん以外のチームだったら、ちょっと面倒ごとになるか? けど『Sランク冒険者』がいる中にわざわざやってくる物好きはいない、か?
「では旦那様、今日はどうされますの? ゴブリンやっちゃいますの?」
「……いや、今日はやめとこう。少し早いけど明日に備えないとな。アイテムの整理もあるし……」
あのアイテムの数を思うと、顔をしかめてしまう。
スキルの『圧縮』もそうだし、ゴブリンが着ていた魔鉄装備もそうだ。俺が以前に覚えた『魔鉄加工術』のスキルは、加工済みの装備であるゴブリン達の装備を、魔鉄のインゴットに還元する力が備わっていた。そして魔鉄のインゴットは、売るだけでなくなんだかんだで用途があって、彼女達のアクセサリー製作で行き詰った時なんかには、手慰みによくお世話になっていた。
主な用途としては『砂鉄操作』用になる。インゴットを砂鉄と呼べるくらい細かな粒子状にする事で、エンキの能力で操れるように出来るのだ。エンキのボディにするもよし、エンキの身体が削れた時の予備にするもよし、エンキの攻撃用にストックしておくもよし。先刻レベル2になった事で一度に扱える量も増えた事だし、もう少し量を確保しておいても良いだろう。
「わわっ。い、家が出てきた!?」
そう考えていると、アイラが家を取り出しカスミが目を白黒させていた。そしてその横で、アイラはテントを取り出し、テキパキと組み立て完成させる。いつ見てもアイラの設置速度は手際が良すぎるな。
「申し訳ありませんが、カスミ様はこちらのテントをご利用ください」
「……なんか見覚えあると思ったら、それ俺のテントじゃん」
「お兄ちゃんの!?」
「はい。カスミ様の荷物を預からせていただいた際に拝見させていただきましたが、とても手狭でしたので。私達共用のテントでは広すぎますし、ちょうど良いのがあって良かったです」
「そういう事ならまあ良いか。カスミも俺のお下がりで良いか?」
「お兄ちゃんのテント……」
カスミには俺の声が届いていないのだろうか? ブツブツと「お兄ちゃんのテント」と繰り返している。やっぱ嫌だったかな?
その様子を彼女達は黙って見ているし……。
「カスミ?」
「あ、うん! いいよ、これでいい!」
「そうか? なんか不便あったら言えよ。シャワーくらいならうちので浴びていけばいいからさ」
「シャワーまであるの? 至れり尽くせりだね……」
「じゃ、飯の用意が出来たら呼びに行くから、ゆっくりしててな」
「うん! またあとでね!」
そうして俺達は家とテントに分かれた。
さーて、スキルの整理とガチャを回すとしますかね。
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