ガチャ324回目:魔法で一掃

 彼女達と並んでゴブリンを倒したり、時折りカスミの戦いっぷりを目で追ってたりとしていると、いつもの煙が現れた。


「お、煙だ。エンキ!」

『ゴゴ!』


 もう俺達の視界に映るくらいには、最初の集落の近くまでやって来ていた。まだ集落内にはゴブリンの反応がちらほらとあるが、あれはエンキがまとめて処理してくれるだろう。

 あとはそれを含めて、合計100になるようゴブリンを始末すれば良いんだが……アイラとエンリルはまだか? 前に進むだけで100体分討伐してもお釣りが来るほどにエンカウントするくらいだし、そろそろ帰ってきても良いはずだが……。

 そう思っていると、アイラから預かった巾着袋へアイテムを詰め込んでいた彼女達が顔を上げた。


「ショウタさん、ひとまずアイテムの回収は完了しました」

「ご苦労様」

「うーん、自分の手で倒したモンスターからアイテムがボロボロ落ちてくれるこの感覚。たまらないわねー」

「一度味わったら、元に戻れないかもしれませんわ……!」

「元に戻る心配は、必要なくない? だってずっと一緒にいるんだし」

「にしし、そうだね」

「はいですわっ!」

「ショウタさんがそうであるように、私達も離れるつもりはありませんから」

「ああ」


 多少手持ち無沙汰になった事でイチャイチャしていると、周囲から二人分の苦言が飛んできた。


「ちょっとお兄ちゃんもお義姉ちゃん達も、ここ一応ダンジョンなんだよー? イチャつくのは後にしてよね」

「そうですご主人様。あとで私にも睦言を囁いて頂く権利を主張します」

「そうそ……え!? アイラ義姉さん!?」


 カスミが飛び跳ねる様に驚いた。

 分かるぞカスミ、こいつは人の死角に潜り込むのが上手いんだ……。


「アイラ、おかえり。随分と遅かったな」

「ご主人様がお望みになるかと思いまして、100を軽く超える量を持ってきました。そしてどうやら、エンリルも同じくらい連れてきた様ですね」

『ポポー!』


 左からはアイラを追って無数のゴブリンの群れ、そして右からもエンリルを追って同じくらいの群れが突撃して来ていた。両方合わせて、軽く見積もっても200以上。下手したら300いるかもしれない。

 それにちょこちょこオークも混ざっているな……。


「アヤネ、広域魔法は禁止で頼むな」

「はいですわ!」

「よし、蹴散らすぞ!」



◇◇◇◇◇◇◇◇



『ゴゴ!』

『ゲギャ!?』

『ゲギャギャ!』

『ゲギィ!?』

『ゲゲ………!』

『ゴゴゴ!』


 雑魚を蹴散らした俺たちは、大量にドロップした戦利品を纏めながら、エンキが頑張る姿を眺めていた。

 結局2人が連れてきたゴブリンの群れは300体以上いて、乱戦の結果『コマンダーゴブリン』は合計4体も出現する事になってしまった。もう少し倒してたら5体目が出て来ていたかもしれないが、もう必要ないだろうということで雑魚狩りは中断した。

 ただおまけとして、お供のヒーラーゴブリンが8体も出現してくれたのは僥倖だった。そういえば出てくるのを忘れていたな。『回復魔法』は何だかんだ言ってまだまだ希少だし、助かる。


「エンキ、もう倒して良いぞー!」

『ゴ!』


 エンキは下半身を固定し、上半身だけをぐるりと回転させ、自身に群がっていたゴブリン達をミキサーのように切り裂いた。あんな動きは人間には不可能だ。人型でありながらも、関節を自由に組み替えられるのはゴーレムの身体を持つエンキならではだな。

 レアモンスターとはいえ、所詮はLv36のモンスターが4匹。エンキが本気で攻撃すれば、奴らの防御なんてあってないようなもの。一斉に煙へと変わった。


【レベルアップ】

【レベルが34から42に上昇しました】


 撃破した結果、煙は4つ全てが健在だった。まあここは問題なく4つとも『レアⅡ』に進化してくれることだろう。

 エンキを一旦後退させ、アヤネに次の準備を手配させていると、カスミが恐る恐るといった様子で尋ねてきた。


「ねえお兄ちゃん。お兄ちゃんって、いっつもこんな戦い方してるの?」

「いつもじゃないぞ。……まあでも、やってることは大体一緒かな。雑魚でもレアでも、まとめ狩りすれば効率良いじゃん?」

「うわぁ……」


 ドン引きされてしまった。


「それにしてもカスミ、オークとの戦い方をみてたけど、『抜刀術』って格好良いな。威力を高めるためには一度納刀しないといけないのか?」

「うん、そうだよ。だからモンスターの攻撃を回避しつつ納刀して、隙を見つけたら大技を叩き込む! そんな感じかなー」

「ロマンあるなー。前衛というより遊撃って感じ?」

「そうそう。だからうちのチームには、モンスターから注目を集める盾役がいるのよ。今回はレベルの低いオークだから、一人でも問題なく戦えるけどね」

「へぇー」


 俺みたいに前線に出突っ張りになって、攻撃も回避も防御も自分で行うのとはまるで違いそうだな。そもそも、剣と刀じゃ戦い方も全然違うか。

 そんなことを考えつつ、煙を眺めること数分。4つの煙は全て膨張し、次のモンスター達が現れた。

 『カイザーゴブリン』が4体。更には奴らが呼び寄せ、後方から突撃してくるゴブリンは300体を軽く超す大軍だ。ステータスに変化はなくても、指揮する頭がいる分厄介度はこちらの方が上だろう。


『ゲギャギャ!』

『ゲゲ!!』


 『カイザーゴブリン』がゴブリン達に突撃命令を出す。先ほど撃破したのとほぼ同数のお代わりに、カスミも少し嫌そうな顔をしていたが、このくらいなら脅威でもなんでもない。今回は邪魔なオークはいないからな。


「アヤネ、やれ」

「はいですわ! クラッシュテンペスト!!」


 『レアⅡ』と数百からなる雑魚の群れだろうが、『知力』が6500に到達したアヤネのLvMAX魔法の前では無力な存在だった。巨大で強大な竜巻に飲み込まれ、大群は集落ごと斬り刻まれていく。

 今まではこんな大技を放てるのは、どうでも良い雑魚戦くらいでしか機会は無かった。だが、この指輪の存在で、誰が倒したかなんて懸念はなくなった。俺がトドメを刺さなくちゃならないと必死に戦っていた時もそうなのだが、同時討伐って、結構気を遣う上に、こんな大集団の中に紛れ込まれると非常に厄介だった。

 だが、アヤネのように大規模な攻撃手段があればそんなの関係ない。全部まとめてぶっ飛ばせば良いのだ。こと集団戦において、アヤネの参戦は本当に助かるな。あとで沢山褒めてあげよう。


「爽快ですわー!」


【レベルアップ】

【レベルが42から106に上昇しました】


 そして前回『ガダガ』を倒しに来ていた時や『上級ダンジョン』で狩りをしていた時などに、もしやと思っていた事が、今回の件で確信に変わった。

 それは、レアモンスターの能力で召喚、及び呼び寄せたモンスターは、100匹カウントの対象外になると言う事だ。そのため、アヤネの大魔法で装備品やスキルオーブは散乱していても、出現した煙は『レアⅡ』から生じた4つだけ。

 さて、次はどうなる……?

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