ガチャ323回目:妹のお披露目

 ガチャを終え、何食わぬ顔で第三層を通り抜けた俺たちは、第四層入口で待機していた冒険者達に迎えられた。


「やあ、ショウタ君! 遅かったね、何かトラブルにでも遭ったんじゃ無いかって心配してたんだよ」

「あー、ちょっと第二層で大発見しちゃったもので、報告とか調査で手間取ってました。協会支部のホームページでそろそろ告知が出てるはずですよ」


 そう言うと、皆が手元の端末を開き確認をし始めた。


「第二層で新モンスター!?」

「それにレアモンスターが4体だって!?」

「こんな短時間で何してんのこの人」

「ああ、また仕事が増える……」

「レアモンハンターさんぱねぇ……」

「まーたこの人は、しれっと伝説を作りやがるな」


 なんだか悲哀を感じさせる協会員の嘆きも混じっていた気がするけど、言い訳としては十分納得してくれるものだったかな。


「そんな中来てくれたのはありがたいけど、良いのかい? 見ればこのレアモンスター達、『ユニークボス』と遜色のない怪物たちじゃないか。それを連戦してきた後に俺たちの頼み事を聞いてもらうのは気が引けるんだが……」

「え? 大丈夫ですよ、食事も摂りましたし彼女達に癒してもらったんで」

「そういう問題かい? 全く、君は本当に『ダン畜』だね。本来なら見習うべきかもしれないんだけど、まだ俺はその域までは達せていないかな……」


 ……ん? ダン畜ってなんだ?


「うへー、さすがレアモンハンターさんだぜ」

「やっぱスキルに絞って正解だったな」

「それな」

「あんな惚気っぷりじゃ、異性なんて入る余地ないだろ」

「そうそ……あれ? あの娘は新顔じゃね?」

「本当だ、黒髪の和装美人か。……良いな」

「顔も良いけどスタイルも抜群じゃん。あれが新しい5人目か?」

「なんだ、俺たちが見つけるまでもなく新しい娘を入れてたのか」

「あんな美人、どこで捕まえてきたんだ? こっちじゃ見ない顔だぜ」

「あの装備は第二ではよく見るらしいが、こっちじゃ生産されてないからな。旅行先で引っかけて来たか?」


 シュウさんと喋っていると、いつの間にやら周囲の興味はカスミへと向けられていた。その視線は不快なものではなく、どちらかというと興味津々と言った様子だったが……。

 まあ、妹が褒められて嫌な気分になる兄はいないわな。


「あー……。すまないなショウタ君、彼らも悪気がある訳じゃないんだ」

「良いですよ。折角なんで紹介しますね。俺のあの会見を見て、故郷から会いに来てくれた俺の妹です。カスミ、皆さんに挨拶して」

「妹のカスミですっ! 今日は見学させてもらいに来ましたっ!」


 ペコリと頭を下げるカスミに、何人もの男達が胸を押さえたり立ち眩みを起こしていた。

 ……うちの妹はやらんぞ?


「というわけなんで、これから数日は彼女も連れて行きますが、足手纏いにはならないので安心して下さい」

「分かった。掲示板の方でも通達しておくよ」

「よろしく頼みます。……で、どこで狩ればいいですかね」


 そう言ったところでシュウさんが、端末上に第四層の地図を映し出した。協会で配っている簡易的なソレだが、そこにはビッシリと情報が書き加えられている。そんな価値の高そうな物を、彼は事もなげに俺達に見せてくれた。


「この辺り一帯には、今日1日誰も足を踏み入れさせていない。だからゴブリンもそうだけど、オークも出現密集率としては高い状態をキープできているはずだ。なので、ここかここのゴブリン拠点で湧かせて狩るのをお勧めするよ」


 そういってシュウさんが示したのは冒険者キャンプ地から最も遠い位置にあるゴブリン集落を指差した。そしてそのうちの一つは、1ヶ月前に俺が奴を沸かして倒した場所も含まれている。


「シュウさん、ここを残したのは故意に?」

「はは、そうだよ。ダンジョンによっては、モンスターの出現方式に法則があることもある。だから、同じ場所でしか出現しないなんて事もあると思ってね」

「なるほど」


 まあでも、シュウさんの懸念は分かる。別の場所では出現しないかもしれないし、俺と同じ様にもう2度と『ガダガ』が出現しない可能性も危惧しているのだろう。ただ、どんな結果だろうと俺が同じ場所で狩りをして、それでも出現しなかったのなら、待ち望んでいる人たちに対しての言い訳も立つと考えているのかもしれないな。

 まあその中には、『運』が足りなくて抽選漏れした可能性もゼロではないんだが。


「まあそんな心配しなくても、なんとかなりますって。シュウさんもそれは鼻で感じてるんでしょ?」

「もしかして、ショウタ君には感じ入るものがあったのかい?」

「そういうことです。とりあえず、『一等星』には絡んで来そうなオークの処理をお願いします。カスミもオークの処理を頼めるか?」

「うん、任せて!」

「わかった、全力で対処しよう。他の皆は邪魔にならない程度に距離を置いてくれ!」

『おお!』


 シュウさんが示した集落を目指して歩き出す。

 最初の目的地は、以前『ガダガ』が出たのとは違う集落だ。『直感』だが、たぶんこっちでも出る気がするんだよな。

 少し進んでいくと、目の前にゴブリンの群れがチラホラと見え始めた。


「アイラ、エンリル」

「はい、ここに」

『ポポー!』

「俺達は真っ直ぐあちらの集落を目指す。道中のゴブリンは殲滅して行くけど、2人には左右に分かれてゴブリンの釣りをしてきてほしい。50くらい釣れたら戻って来てくれ。それと、オークが混じっていても倒したりせずにそのまま連れてきてくれな」

「畏まりました」

『ポポ。ポポポ!』


 2人が飛び出すのを見送りつつ、接敵したゴブリンに向けて剣を向ける。


「アキ、マキ、アヤネ」

「「「はいっ!」」」

「食後の準備運動と行こうか。ただし、オークはカスミに丸投げするように」

「おっけー!」

「わかりました!」

「頑張りますわー!」


 さーて、軽く蹴散らして行きますかね。

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