ガチャ312回目:予期せぬ来客

 シュウさんからの依頼を受けた俺達は、ミキ義母さんから話があるとの事でいつもの会議室で待機していた。まあ再びフィーバーが起きるとなれば、協会側でも準備が必要だし、その手の話だろうか。

 あの人が来るまでまだ少し時間があるみたいだし、皆には貰ったスキルについて『真鑑定』で得た結果を伝えていた。


「『飛剣術』、『硬化』、それから『霊体感知』ですか。確かにご主人様が足繁く通っているダンジョンからでは出現が確認されていないスキルですね」

「あたし達は掲示板もそうだけど、彼らが自発的に始めたクラウドファンディングについて、しっかり確認してたんだけどね。ショウタ君そういうの好きそうだし、黙ってたんだ」

「サプライズになりましたか?」

「うん、驚いたし面白かったよ。黙っててくれてありがとう」

「はいっ」

「にしても、見事にショウタ君の持ってないスキルをチョイスしてきたわねー。どのスキルを渡すかって議論してる彼らを見守るのはちょっと面白かったわ」

「わたくしもその様子を見させてもらってましたが、最終候補に『曲芸』とか『思考加速』が残ってましたわ!」

「へぇー」


 その2つはどっちも有用だから、なんなら追加で欲しい所ではあるけど。


「……それらが選ばれなかった理由は、予算的な問題かな?」

「みたいね。ショウタ君のおかげで彼らの懐はとっても潤いはしたものの、やっぱり他のダンジョン産のスキルは高いままだもの。そんなにたくさんは用意出来なかったみたいね」

「そっか。それは残念だ」


 本当に残念だ。

 まあでも、他のダンジョンから入手出来るリストに乗るという事は、簡単にゲット出来てしまう可能性があるともいえる。乱獲できる時を楽しみにしておくとしよう。


「あとこの3つの中では一番普通な感じもする『硬化』だけど、これは多分……ショウタ君の思ってるような戦闘用に用意された物ではないわね」

「というと?」

「婚約者が4人もいる事から、彼らが気を利かせた結果、このスキルが入ってきたのでしょう。もっとも、ご主人様にはあまり必要なスキルではありませんが」

「……んん?」


 何のことかと疑問に思っていると、アキとマキが顔を赤らめていることから何となく察しがついた。

 そういうことか。確かにその点で見れば余計なお世話かもしれないな。


「おほん。さて、肝心の『霊体感知』だけど……」

「あっ……。幽霊、見えちゃったりする?」


 恐る恐るといった様子のアキに、マキとアヤネもビクッと身体を震わせた。


「あー……。どうだろ? まだスキルを覚えたばかりで、反応してるのが幽霊なのか、別のエネルギー体なのか判別がつかないな。まあでも、そんなに多くはないよ」

「居ないとは言わないのね」

「説明文にそう書いてあった以上は、ね。まあそれよりも、このスキルを得た事で改めて試したいことがあったんだよね」


 俺は感知系のスキルをすべてイメージして、『圧縮』を実行した


【スキル圧縮を使用しますか?】


「使用する」


【該当のスキルを確認中……】


【該当のスキルを確認】

【該当のスキルを圧縮中……】


【該当のスキルを圧縮成功】

【SRスキル『気配感知』『生体感知』『魔力感知』『危険感知』、URスキル『罠感知』『霊体感知』『反響定位』『魔力定位』を圧縮。BRスキル『全感知』に圧縮成功しました。以後、該当スキルは元のランクからは出現しません】


「おおー。エコーロケーション系統も混ざってくれたか」


 感知系スキルが一緒になればという期待をしてたが、思った以上にスキルが『圧縮』されたな。


「『全感知』ですか。文字通り全ての対象が探知出来そうですね。……しかし、ここまで来ると赤外線探知、なんてスキルも出てくるかと思ったのですが」

「流石に人間にそんな機能は無いでしょ。あるとしても、蛇系統の特殊技能くらいじゃない?」

「ショウタさんのスキルが大量に『圧縮』されるのは喜ばしい事ですが、まるで減ったように思えないくらいまだまだありますよね」

「スキルの見本市は健在かー」

「まあでも、体感使いやすくはなったかな。今までは各種感知スキルを個々に起動させてたけど、今は1つのスイッチで起動できる感じがする」


 毎回モンスターとかを探知をする際は、必要そうなスキルをポチポチと手動でオンオフしていたのが、ワンプッシュで起動するようになったのは大きい。手間もそうだけど、何よりこういったスキルの起動に意識を割く時間は、少なければ少ないほど良いからな。それに今の俺なら、一度に全ての感知スキルが起動しても問題なく処理出来るくらいには能力が上がってるし。

 例えばこんなに人が多い協会でも、『全感知』スキルを使う事で詳細なマップ情報と共に、誰がどこにいるかなどの詳細が手に取るようにわかる。頭の中に立体の地図が出来るイメージかな。

 えーっとミキ義母さんは……。うん、どうやらこっちに向かってきているみたいだ。隣にいる人は、知らない人かな? ハナさんは、正面のカウンターにいるな。あの位置はたぶんいつもの専属窓口だろう。シュウさんはまだ協会のエントランスにいるみたいだ。その周囲には彼の仲間の反応も伺える。これから第四層に向かう感じだろうか。


「……ふぅ。やっぱり、単一スキルに統合された事で利便性が向上してるな」

「おめでとうございますわ!」

「ああ、ありがとう。それじゃ、余ってた各種探知スキルだけど、改めて振り分けようか。『気配感知Ⅱ』をアイラ。『気配感知』をアヤネとマキ。それから『危険感知Ⅱ』をアヤネ。『危険感知』をアキとマキで」

「「「「はい」」」」

「ああでも、感知系統ではあるけど『反響定位』はそのままキープで。これは『聴覚強化』も併せて持ってないとちょっと面倒なスキルだからな」


 超音波まではいかなくても、振動とか微細な音を聞き分けて周囲の物体を感知するスキルだから、『聴覚強化』がないと何の役にも立たないんだよな。そうしてスキルの整頓をしていると、部屋にノックの音が木霊した。感知で既に分かっていた事だが、ミキ義母さんがやってきたようだ。


「どうぞー」

「お邪魔するわね。アマチ君、ダンジョンに入る前に話したいことがあったんだけど……その前に、あなたにお客さんよ」

「俺に?」


 ミキ義母さんの影から、巫女服に近い和装に身を包み、覚えのある髪飾りを着けた長髪の女性が現れた。凛としたその姿に、どこか懐かしい感覚を覚えていると、彼女は俺を真っ直ぐに見据えて懐かしい呼び名を叫んだ。


「やっと見つけた、お兄ちゃん!」

「うぇ!? カ、カスミ!?」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る