ガチャ304回目:1086ダンジョンコア

「ではご主人様、さっそく鍵を使われますか?」

「いや、まずは最初の階層の様子から見よう。さすがにスタンピード直後にダンジョンに降りて行った時の様子なんて情報は、なかったでしょ?」

「はい、ございませんでしたね」

「じゃ、安全確認だな」


 そうして階段を抜けた先は、地下水道のような場所だった。


「下水道? ……いや、清涼な感じからして古代遺跡感があるな」

『ゴゴー?』


 目の前には直線通路が伸びており、その通路の真ん中を底の見えない水が水路となって流れていた。壁には等間隔にランタンが備え付けられ、青白い光が通路を明るく照らしている。そして通路の先は丁字路になっているのか、左右に分岐している様子が見てとれた。その先がどうなっているかは分からないが、聞こえてくる水音からして、同じ光景が続いているんだろう。

 そして左を向けば、何の変哲もない小部屋があった。そこには水は流れていないし、危険な気配もない。『罠感知』も引っかからないし、入ってみてもやっぱり何もない。セーフルームのような境界線も引かれていないし、よくわからない場所だった。

 改めて通路に戻ってみるが、恐らくここの第一層は、今の場所みたく、時折行き止まりがありつつの、迷路になっているのかもしれないな。


「初っ端から迷路型ですか。何の情報もなしにここを攻略するとなれば、骨が折れるでしょうね」

「まあそれは気が向いたらね。とにかく、入り口は安全そうで良かった」

「そうですね、水路の底からはモンスターの気配がしますが、近付かなければ襲われないと思います」

「てかさ、左右の道もそこまで広くはないし、モンスターの感知範囲次第では、このダンジョン安全に奥に進む方法無さそうじゃない?」

「いつ襲われるか分からないまま奥に進むのは、気が滅入りますわ……」


 なるほど。皆の意見は参考になるな。


「となると、ここは来るのでさえ厄介なのに、入ってからも難易度が高いという事か。面倒なダンジョンだけど、それを思うと余計に鍵が手に入ってラッキーだったな。こんな場所、正規の方法で攻略してたらどれだけ日数が掛かってたやら」

「そうですね。初手からこのように面倒な仕組みですと、この先も面倒な造りをしている可能性が高いです。そもそもここが何層構成かもわかりませんから」


 確かに、こんな迷路が10や20続いてるとなったらそれだけで嫌になりそうではあるな。


「んじゃ、行く前に1個だけ確認しておくか。セレン、水中のモンスター1匹釣り出せるか?」

『~~♪』


 セレンが触手を1本前に突き出すと、目の前の水路に突如として水柱が発生。それに押し出されるように複数のモンスターが通路に打ち上げられた。『濁流操作』は、水生モンスターに対して絶大なアドバンテージが得られるな。


『ビチッ、ビチッ』


*****

名前:キラーフィッシュ

レベル:24

腕力:180

器用:180

頑丈:50

俊敏:150

魔力:100

知力:30

運:なし


装備:なし

スキル:なし

ドロップ:キラーフィッシュの切り身

魔石:小

*****


「キラーフィッシュ……。今回のスタンピードにいた奴か?」

「恐らくはそうかと」

『プルル! プル!』

「イリスが見たそうだ。あと、切り身が美味しかったって」

「では、ご主人様が移動している間に何匹か狩っておきましょう。セレン、協力してくれますか?」

『~~』

「問題なさそうだな。それじゃ、行ってくるよ。エンキもエンリルも、お留守番頼むな」

『ゴー』

『ポポ!』

「「いってらっしゃい」」

「ファイトですわ!」

「ご武運を」


 皆と順番にハグをし、一歩前に出た。


「管理者の鍵を使用する」


【所持者の意思を確認】


【管理者キー 起動】


【管理No.1028】

【ダンジョンコアへ移動します】


 しかし、魚の切り身か。

 俺が離れてる間にレアモンスターも狩られたりして……。まさかな。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 意識が強制的にシャットアウトさせられた感覚を越え、目を開けるとそこは3度目ともなる真っ白な空間。目の前にはいつもの操作パネルがあり、触れればダンジョンコアが……。


『ようこそ、管理者様』

「え?」


 現れたのはいつもの数学の教科書みたいなヘンテコな図形では無かった。相変わらず実体はないし、ホログラムっぽいのはいつも通りだが……。その姿形はまるで人魚の様だった。

 『マーマン』の女性版がいればこんな見た目なんだろうか? 胸の部分は貝殻のようなもので隠されているのが惜しいと思うべきか……。あぁ、アイラのせいでこういう考えが自然と浮かぶようになってしまった。


『私は当ダンジョンを管理する端末AI、ダンジョンコアです。……2つの管理者キーをお持ちなのですね。おめでとうございます』

「あー……。ダンジョンコアって、ダンジョンによって姿が変わるのか?」

『肯定。現在のダンジョンコアの造形は、1100通り存在します』

「うひー」


 となると、『初心者ダンジョン』はまた違う見た目なのか。楽しみではあるが……何が出るかな。


「質問する。管理者キーが2つになったことで、俺の管理者レベルは上昇したか?」

『肯定。管理者様の管理者レベルは2に該当します』

「質問する。管理者レベル1で実行可能な権限を全て教えてくれ」


 この質問、2回目にダンジョンコアに質問しに行った時聞いてみたら、不可って言われたんだよな。でも、レベルが上がった今なら……。


『不可。情報量が多い為1度に回答できません』

「む」


 不可は不可だが、これは前回とは違うな。聞き方によっては答えてくれそうだ。

 なら……。


「質問する。管理者レベル1で実行可能なダンジョン設定の権限を教えてくれ」

『許可。管理者レベル1では、管理者となったダンジョンのスタンピード設定、モンスターの出現率設定、モンスターの分布設定が可能です』

「ほぉ……」


 1回目の時はスタンピードの設定しか教えてくれなかったのに、他にもあるじゃないか! ということは、俺があの時その設定を探し当てることが出来ていれば、『アンラッキーホール』のスライムも、やりようによっては自然湧きでいっぱいになるのを待つ必要はなかったかもしれない。

 こっちの匙加減でどこまで自由に湧かせられるのかは、向こうに帰ってから改めて試すとしよう。ここだと、そもそもの分布状況を知らないから、変化が起きても判別できないしな。


「とりあえず、ここのダンジョンのスタンピード設定をOFFに。通知は無しで良い」

『許可。……実行しました。現在1086ダンジョンのスタンピード設定はオフです』


 よし。とりあえずこれで、当座の目的は完了した。

 あとは……他に何が出来るようになったかだ。

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