ガチャ296回目:スタンピードの終焉
煙になった『グランドクラーケン』は、すぐに霧散して消えていった。そしてドロップしたアイテムは……。
「あっ!」
無数のドロップアイテムが、水中にぼちゃぼちゃと落ちていく。慌ててエアウォークを海面に設置するが、そのほとんどが黒ずんだ海の底へと消えていってしまった。
『クラーケン』2体分に『グランドクラーケン』のスキルや宝箱にアイテムまで……。なんてこった、完全に油断していた……。
「くっ、申し訳ございません、ご主人様。激戦後の余韻に浸っていたため、準備が出来ておりませんでした……」
「いや、俺も完全に忘れてたからお互い様だ。お前を責めるつもりはないさ」
「でもでも、宝箱が落ちてったよ!? お馴染みの『エメラルドの宝箱』が2つに、見たことない輝きの宝箱が1つ! あれを見逃すなんて勿体ないよ!」
「そうだね姉さん、なんとか探して拾いたい所だけど……。ショウタさん、ここはかなり沖の方ですし水深もあります。更には先ほどまでの戦いでイカスミで海は真っ暗ですし何も見えません。これが完全に消えるまでは、探索は難しいかと……」
「あうぅ、海流に流されてしまわないよう、お祈りするしかありませんの……?」
「ひとまず、ご主人様が止めてくださったアイテムだけでも回収しておきますね」
俺達がアイテムの事で頭を抱えていると、後ろから声をかけられる。
「ちょっと弟君、それに皆もさ、せっかくスタンピードのボスを討伐できたんだよ? もっと喜ばない?」
「そうですよ。あのような怪物をこんな少人数で討伐できたのはとても喜ばしい事です。あれがもしも自由に動き回っていれば、海洋面は人の手を離れ、魔の領域へと落ちていた事でしょう」
「そうそう、タカ姉の言う通りだよ! だから皆、元気出してー!」
そうは言ってもな……。
今回の『グランドクラーケン』、レベルやステータスは確かに高かったし、持っていたスキルも豊富だったが、やってみれば決して勝てない相手では無かった。なぜなら、『グランドクラーケン』は30本の足に能力の大部分が持ってかれていて、向かい合うその足の本数次第で奴の強さや厄介度が大幅に変わって来る感じなんだよな。
だから正直言うと、個人的には『カムイ』の方が強さ的には上に感じたんだよな。
「あー……。とりあえず、このイカスミをなるはやで除去する方法を考えなきゃな」
義姉さん達を早めに帰して、『聖魔法』の浄化を試してみるか……?
『バシャンッ!』
そう考えていると、海からセレンが顔を出した。
「お、セレン。お疲れ。初陣なのによく頑張ってくれたな」
『~~♪』
「……え?」
『~~♪』
「落ちたアイテム、全部拾ってきた!?」
「「「「!!」」」」
セレンが何かを持ち上げると、そこには戦闘中どこかに流れていったと思っていたアイラの回収ネットがあり、中にはドロップしたスキルや宝箱の山が入っていた。
『~~♪』
「セレン……でかした!!」
「すごいですわー!」
『ポポー!』
『プルル』
「セレンには頭が上がりませんね」
「すごいじゃない!」
「セレンは何か、食べたいものとかありますか?」
『~~?』
皆でセレンの活躍を湛えつつ、俺達は砂浜へと戻って行った。
◇◇◇◇◇◇◇◇
砂浜では、エンキが待っていてくれていた。
バカでかい岩の壁と一緒に。
『ゴゴー!』
「ただいまエンキ。……これは?」
砂遊びにしては、規模がデカすぎる。
壁の高さは5メートルほどあるし、長さは砂浜の端から端まである。分厚さはわからないが、この形状が維持できている以上、薄っぺらくは無いだろう。
『ゴゴ、ゴゴ!』
「ショウタさん、何て言ってるんです?」
「……なるほど。もしも不測の事態に陥って津波攻撃をしてきた時の為に、防波堤を作ってくれていたそうだ」
『ゴゴー』
「あの短時間でこの規模の石壁を……!? 弟君のゴーレム、すごいわね」
「まあエンキですから」
「エンキすごいですわ!」
『ゴゴ!』
皆に褒められてドヤってるところ申し訳ないが、スタンピードが終結した以上この壁はもう何の意味もない。景観ぶち壊しだし片付けて貰おう。
「エンキ、悪いけど必要なくなっちゃったからさ」
『ゴゴ……』
ちょっとしょんぼりしながらも、エンキは壁に手を当てて魔力を抜く。そうすることで、岩の壁はするすると砂へと分解されて行き、砂の小山が姿を現した。あとはエンリルと協力することで、砂は元の場所へと返されて行った。
……そうして全てが元通りという訳にはいかないが、それなりにまともな砂浜に戻った気がする。海の方はグチャグチャだったが。
「しっかし、せっかくのリゾート地がイカスミやら戦闘痕やらで、景色が台無しになっちゃったな……」
「まあそこは仕方がないわ。スタンピードが広がりを見せていたら、この程度の被害じゃ済まなかったでしょうし」
「海の方に関しては、修復できる技能を持つ伝手に当たってみます。ですから、ショウタさんもあまり気になさらず」
「そう? ありがと義姉さん。ああそうだ、義姉さん達は、サクヤお義母さんが俺に何を期待してるのかはもう知ってるんだよね?」
義姉達は互いに視線を交わして頷き合う。
「ええ、存じてますよ」
「あたし達も元々は、『コアホルダー』を目指していたからね。あたしはもう抜けちゃったけど」
「そっか。……義姉さん達は今回の『スタンピード』、元凶となったダンジョンがどの辺に出現したのか想像はつく?」
「お母様に連絡すれば大体の場所は判明すると思うけど……」
「なら連絡してほしい。二度と溢れてこないように先手を打っておきたいんだ」
「二度とって……。止め方を知ってるみたいに言うのね」
「ちょっと待ってください。だとするとショウタさん、貴方はまさか……」
婚約者達に視線を向けると皆が頷いてくれる。
「今回の『スタンピード』でダンジョンナンバー1086の『コアホルダー』になった。『スタンピード』でモンスターも減ってるはずだから、今の内に乗り込んで制圧しておきたい」
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