ガチャ291回目:連続討伐

「ふぅー……」


 1匹目の『クラーケン』を無事、撃破する事に成功した。

 しかし『マーマン』は煙になった瞬間すぐに霧散していたのだが、この『クラーケン』は何故かダンジョンと同じように煙を出し続けていた。スタンピードで出現したモンスターは進化しないと考えていたのだが……どうやら違うらしい。経験値が入った以上、『クラーケン』が死んでいるのは間違いない。

 ならば、『マーマン』が実は『レアⅡ』相当で、次が存在しなかっただけか、『クラーケン』が特殊なモンスターで、なにか特別な仕掛けがあるのかといったところか。どう転ぶかは分からないが『ガダガ』や『ヒュージーレインボースライム』のように、同時撃破する事で次が出てくる可能性もあるんだよな。

 気になる所だし、煙が消える前にもう1匹も叩いておきたい気分だ。


 だがここで、問題があった。先ほどの戦闘で、レベルが一気に274まで上昇してしまったのだ。

 本来であればここで一度砂浜に戻って『レベルガチャ』を回したいところだが、こいつも他のモンスター同様に、感知できる範囲にガチャの筐体が出たら、ブチ切れるかもしれない。

 そうなったら、きっと津波で攻撃してくるだろうし、わざわざ遠距離を封じて接近戦を挑んだ意味がなくなってしまう。そして近接戦でもこいつはかなり凶悪な敵だから、この距離でガチャの筐体を呼び出すのも自殺行為だ。

 ガチャの在庫はあと20連分だし、更新間近だから引いておきたい所だったけど、煙の件もあるしここは我慢するとしよう。


 この間の思考、1秒ほど。


「よし、『高速思考』終わり! エンリル、イリス。アイラの援護にいくぞ!」

『ポポ!』

『プルル』


 エンリルは高速飛行し、今まさにアイラを掴もうとしていた触手へとカマイタチをぶち当てた。

 突然の横殴りに驚き、隙を見せた『クラーケン』にアイラが背面から攻撃を仕掛け、俺は正面から『飛剣・鳳凰』を飛ばし、イリスは俺の頭の上から光線を放つ。

 今の攻撃は、俺とエンリルのは触手に阻まれたが、イリスとアイラの攻撃はしっかり本体にダメージが通ったようだ。やっぱり、攻撃する人数が増えると楽だな。

 だがこれで倒すには時間がかかる。煙もいつまで残っているか分からない以上、さっさと片付けてしまおう。


「『雷鳴の矢』『重ね撃ち』!」

『ポポ!!』


 俺はエンリルにアイコンタクトを送り、同時に技の準備に入った。

 修行中も、エンキやエンリルに『武技スキル』を撃たせて練習をさせていたんだが、やっぱり戦闘中に使ってこそ扱いは上達するというものだ。エンリルは先ほどよりも少ない時間で翼に力を溜め、技を放つ。『クラーケン』も、攻撃よりも防御を優先させたようだ。


『ポポォ!!』

『……!?』


『斬ッ!!』


 翼の力を解き放つと、その一閃は触手を貫き本体にまで届いていた。先ほどよりも威力が上がっているな。これだけで倒せるほど甘くは無いが、後続に俺も控えているので問題はない。


『ズパァン!』


 危険を察知した『クラーケン』が必死に身体を捻って避けようとするが、音速で飛ぶ矢を避ける事など不可能。2本の矢は紫の尾を引きながら、『クラーケン』の両目を貫き、今度こそ絶命させた。


【レベルアップ】

【レベルが274から277に上昇しました】


 このレベルで3も上がるのか。凄いな『クラーケン』。

 ちょっと勿体無かったけど、仕方がないな。


「あれ? ってことは義姉さん達のチームは、大人数とはいえこんな怪物を倒せるくらいの実力はあるんだ?」

「いえ、実情は少し異なりますね」


 ピアフロートからエアウォークの足場に飛び乗ってきたアイラが、隣で一息つく。


「というと?」

「あの方たちが遭遇し討伐したのは『上級ダンジョン』に出現した『クラーケン』です。今回の『クラーケン』とは別物になります」

「ふむ?」

「ご主人様は他のダンジョンで同種のレアモンスターと遭遇したことがない為……あ、いえ、近い物でしたら経験がありましたね。『初心者ダンジョン』の『ジェネラルゴブリン』です。アレと同様、同名のモンスターでも出現する場所が異なれば強さもスキル構成も違ってきます。場合によっては天と地ほどの差があるくらい、強さに違いがあるのも珍しい事ではありません」

「つまり、義姉さん達が倒した『クラーケン』って、もっと弱かったって事?」

「なんなら、サイズも今回の3分の2ほどと聞いております」

「えぇ……」


 それでもまあ、デカいと言えばデカいが……。もう親子くらいの差があるのでは?


「しかし困ったな。アイラも視えてるだろ、この煙」

「はい。目視出来ております」

「次が出た場合に備えて俺としてはガチャを回しておきたいが、出なかった場合その辺にドロップアイテムが散乱するのはもっとヤバイ。元凶が消えたとはいえ、この辺はまだイカスミで真っ黒だし、海の底に沈んだら回収が出来ないだろ?」

「それでしたら、ご主人様は戻っていてください。アイテムに関しては私に解決策がありますので」

「そう? 疲れてるのに悪いね、いつもいつも」

「今晩、期待していますね?」

「……ガンバリマス」


 エンリルには、消費した魔力を注いであげたのち、アイラと行動するよう命じておく。

 俺はイリスと一緒に浜辺へと帰還した。


「「「おかえりなさい!」」」

「ただいまー」

『ゴゴ!』


 出迎えてくれた彼女達の歓迎をほどほどに、次の指示を出す。


「アヤネ、イリスに魔石をあげておいてくれ。次が出る可能性がある」

「わかりましたわ!」

「エンキ、悪いがドーム形態頼む!」

『ゴゴー!』

「アキ、マキ。ついてきて」

「はいっ!」

「おっけー!」


 俺はエンキの中でガチャを起動し、残りの20連分のガチャを回した。

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