ガチャ290回目:海の怪物
「『飛剣・鳳凰Ⅲ』!」
この『武技スキル』を扱えるようになった頃は、各種ブーストスキルを併用しないと放つことが出来なかったが、扱えるステータス量が増えたことで自然と、通常状態で扱えるようになった。
剣に炎を宿し、一気に振り下ろすと炎の鳥が『クラーケン』に向かって飛んで行く。だが、その攻撃は本体には届かず触手によって阻まれてしまった。ブースト有りなら貫けただろうか? だが早めにブーストしてしまうと、効果時間中に倒さなければならないという焦りが生まれてしまう。ここはまだ慎重にいかなければ。
『ブスブスブスッ』
3本の触手が焼け焦げ、イカ焼きのようなちょっと良い匂いが周囲に広がった。ちょっと美味しそうに見えるから困る。こいつらの足、食えるのかな?
『プルル!』
『ポポ!』
エンリルがカマイタチを放ち、ぶら下がった状態のイリスが光線を放つ。狙いは焼けた足のようで、分断する事に成功した。しかし、分断された足は煙となってすぐに消え去ってしまう。
その瞬間、感じていた良い匂いの元が途絶えてしまった。
『プルル……』
『ポポ……』
2人が残念そうな声を上げている様子に笑みが溢れる。そうしていると、千切れた部分からは新しい足が生えて来た。
「何っ!?」
あれは『自動回復』と『再生』スキルの効果だろうか?
その後も何度か切断を試みるも、30秒ほどで再生されてしまい、無傷の足が攻撃を仕掛けてくる。何度削ろうとも相手のパフォーマンスには影響がないことから、おそらく触手へのダメージでは本体の体力を削れないのだろう。けれど、本体を狙おうにも『危険感知』のスキルも持っている為、高威力の攻撃は防がれる。中々厄介な相手だな。
こうなるともっと近づく必要があるが、イカスミの弾幕が鬱陶しいな……。
『プルプル』
『ポポ? ポポ!』
『プルルル』
『ポポポ~』
イリスはせっかく千切ったのに、その都度美味しそうな足が煙になって消えて残念だと嘆いているらしい。イリスって、別に食事をしなくても死にはしないんだが、食べる事そのものが好きみたいなんだよな。
モンスターは死んだらすぐ煙になるから、食べた気になっても腹は膨れないはずなのに、さっきの踊り食い直後は満足そうにしてたし……。ううん、やっぱりイリスは謎が多いな。
それに触発されてか、最近はエンリルも色々と食べるようになってきた。ただエンキはそういうのには興味が無いのか、趣味はアニメ鑑賞と砂浴びだけど。性格の違いが出てるなぁ。
「元気出せイリス。倒したら消えない足がドロップするはずだから」
『プルル??』
『ポポ?』
「ああ、ちゃんとアイラ達が調理してくれるはずだ。俺も興味あるしな」
『プルル!!』
『ポポポ!』
イリスは嬉しそうにエンリルに掴まれながらビヨンビヨン伸び縮みする。例のボアを丸呑みしてからと言うもの、イリスはずっとこんな感じだな。まあ可愛いから良いが。
「さーて、こいつをどうするか」
こうやってエンリルやイリスとじゃれ合ってる間も、触手は上下左右から遠慮なく飛んで来てるし、その攻撃は休みなく続いている。それに何か妙に静かだなと思ったら、このモンスターまるで喋らないんし鳴き声すら上げやしないんだよな。ひたすら無言で攻撃し続けている。
こっちも時折『紅蓮剣』や『飛剣・鳳凰』で反撃するけど、本体には届かないし失った腕はすぐに再生してくる。ちょっと無限ループに陥ってる気がして嫌になるな。『並列処理』と『思考加速』を用いて『クラーケン』を討伐しきるビジョンを模索するが、現状得られた情報ではどう頑張ろうとも火力・手数が不足していた。
こいつの身体は各種耐性のせいで物理魔法共に通りが悪いが、その一因となっているのは『粘液生成』のスキルだろう。あれのせいで全身がネバネバでコーティングされていて、普通の剣だと滑って芯がずらされる。
となれば物理よりも属性攻撃かつ、耐性を無視するくらいの瞬間火力で貫くしかないが、俺の瞬間火力最強は間違いなく『雷鳴の矢』になる。けど、溜めの時間を見逃してもらえるほど優しい相手じゃないし、離れて使えば例の津波とやらが押し寄せる可能性がある。逆に沖の方に回り込んでから技を放って、危なければ水中に逃げるという手も考えられるが、こいつは『濁流操作』や『海魔法』のスキルを持っている。だから水中に逃げたが最後、詰む可能性があるんだよな……。
他の解決策として『3倍マジックミサイル』。いや、『元素魔法Lv4』で使えるようになった『4倍マジックミサイル』などもあるが……うーん。『3倍マジックミサイル』を2、3発放ってみたけど、触手を束ねられて本体まで届かなかった。レベルやステータスで見れば勝てない相手ではないけれど、環境とスキル構成のせいで勝てるビジョンが限られている。
こいつは紛れもなく強敵だった。
『プルル!』
『ポポ!』
2人も頑張ってるが、こっちも決定打に欠けていた。
エンリルも『武技スキル』は覚えた物の、イリスを掴んだままでは撃てないようだし、かといってイリスを手放したら、こいつを撃破するまで回収は不可能になる。そうなると手数は間違いなく減る。イリスを俺が受け取ったとしても、頭や肩に乗られると邪魔になるしな……。
と、そこまで考えたところで、最近覚えて使っていないスキルがある事を思い出した。
「あ、そうだ。『弱点看破』!」
相手の弱点や攻撃の隙を突くのは、今まで自分で探しながら戦ってきたからか、ついスキルとしての存在を忘れていた。
スキルを発動すると、『クラーケン』に関する先ほどまでの戦闘データが可視化され、情報が次々と数値化されていく。そして各部位の防御力と防御率、効果的な攻撃方法、そして本体を狙った際のガード優先順位などが判明し、奴が一番攻撃を受けたくない場所が視えてきた。
今までの攻撃で、『クラーケン』が被弾を嫌がり、防御を優先させてきた場所。
奴の弱点は……目玉だ!!
「エンリル、イリスをこっちに。全力で目玉を狙え!!」
『ポ!!』
『プルル~ン』
エンリルは勢いよくイリスをこちらに投げ渡すと、片翼に風の力を結集させた。
『……!?』
『ポポッ!!』
風の力を解放し、翼を払った。
『クラーケン』も慌てて全ての触手を結集させ、顔を覆い隠すように展開するが……。
『斬ッ!』
エンリルの『武技スキル』『真空斬り』が発動。
全ての触手が斬り捨てられ、奴の本体が無防備になる。あの斬られた触手は、すぐにでも再生するだろう。だが、今この時だけは攻撃を防ぐ手段はない。
俺は事前に狙い澄ましていた、紫電に光る矢を引き絞る。
「貫け、『雷鳴の矢』!」
『ズパァン!』
2本の紫電の光が、『クラーケン』の両目を貫く。
エンリルに注意が向いた隙に構えておいたのだが、目論見は成功したようだな……。
『……!』
さすがイカと言った所か。両目を貫かれても『クラーケン』は即座に煙に変わることなく、ジタバタと藻掻いていた。だが、その間も両目から煙がどんどん溢れ出て行き、その内限界を超えたのか全身が煙へと変じた。
【レベルアップ】
【レベルが90から274に上昇しました】
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