ガチャ285回目:前兆
朝は地獄のシャトルランを敢行し『走破力・瞬発力・持久力・判断力』を鍛える修業。
昼は気の抜けない空中戦からの、一瞬の隙をついて『カムイ』もどきに『無刃剣』を当て破壊するという『機動力・突破力・攻撃力・対応力』を鍛える修業。
夜は彼女達に甘やかされたりする休息の時間。……たまに搾られるけど。救いがあるとすれば、日替わりで皆の水着が変わっていくところかな。
一応義姉達も水着は持って来てるらしいが、彼女達から誘惑禁止令が出されてるとかでずっとスポーツウェアなのがちょっと惜しい。なんて言ったら怒られるかな……?
そんな中身は地獄、景色は絶景の毎日を乗り越え、現在、旅行5日目。
修行を開始して4日目の昼の事。
「そこだ!」
ユキ義姉の猛攻を凌ぎ、タカ義姉の追撃を振り切り、『カムイ』頭部を『無刃剣』で完全破壊する事に成功した。今までも何度か突破する事は出来たんだが、突入角度が悪かったり勢いが無かったりで、『無刃剣』がしっかり入らなかったんだよな。
それが本日2度目の挑戦にして、ようやく成功するに至った。
「よっしゃー!」
俺は高々と勝利の拳を突き上げ、喜びを全身で表現していると、義姉達が駆け寄って来る。
「あーん、悔しいー! 弟君強くなりすぎだよー!」
「そうかな? 4日目でようやくって感じだし、なんならまだユキ義姉と正面からやり合うのは慣れないよ」
「ですが、空中でユキネの攻撃を避け、逆にバランスを崩させる事が出来るのは驚異的ですよ。さすが私の義弟です」
「なんて言うのかなー。モンスターを倒してないのに、修練だけでレベルアップしたというか、ここ数日手合わせしている内に、総合的なステータスが増した感じがするのよね。もしかしてそれが弟君の秘密!?」
「あはは、そこは内緒で」
まだ義姉達には俺のスキルについては教えてない。だから笑ってごまかすしかなかった。
「まあいいけどねー。それはともかく、よく出来たと褒めてあげようー! うりうり!」
「ええ、よく出来ました」
タカ義姉が正面から俺の頭を撫でてくると、ユキ義姉が背後からハグしてくる。この2人のスキンシップは過剰だが、旅行初日からこんな感じなのでもう慣れてきていた。ひとしきり修行をして動き回った直後ということもあって、2人から発せられるフェロモンが鼻孔をくすぐるが、初対面の時のような嫌な香りは全くしない。
あの時は嫌悪感に近い何かを感じていたが、今はまるでそんな気配がしないのは不思議だな。へんな香水でも着けてたんだろうか? 今はそんな気配を微塵も感じないから、義姉達の可愛がりも正面から受け止められる。正直、悪い気はしなかった。
「ショウタさん!」
「旦那様ー!」
マキとアヤネが遅れてやって来て、義姉2人を押しのけて飛びついてくる。
「格好良かったです!」
「流石旦那様ですわ!」
義姉達に可愛がられてると、大抵いつも誰かがやって来て割って入って来るんだよな。
「もう、お姉様。何度もお伝えしたように旦那様と距離が近すぎますわ!」
「えー。いいじゃん少しくらい」
「そうですよアヤネ。それにショウタさんは嫌がってないじゃないですか」
「それでもダメですわー! 旦那様はどう思いますの?」
「まあ……別に減るもんじゃないし。特別な関係にならないにしても、仲が良いに越したことは無いかなーと」
「ほらー、弟君はわかってるじゃない。それに、近々国外から異名付き冒険者が弟君を狙って来日予定なのよ。こんなことで怒ってたらキリがないわよー」
この修行の最中、タカ義姉とユキ義姉から教えて貰ったのだが、どうやら『初心者ダンジョン』で2回も別々の告知を流したことが原因で、国外から注目が集まってるらしい。
国外のダンジョンでも、こういった告知はあるのかもしれないが、日本はその辺りオープンだからな。情報規制なんてしてないから、噂はすぐに広がるみたいだ。
ただ、国外の冒険者がダンジョンに入るには長ったらしい手続きが必要になるし、例の動画も管理が厳重だからか、戦いの内容は1ヵ月近く経った今でも外部には流れていないらしい。
「ところで、その異名持ち……皆聞いた瞬間にピンと来てたようだけど、そんなに凄いの?」
「凄いも何も……全員が冒険者になって1年ほどでSランクに上り詰めて、最前線を突っ走ってる人達なのよ」
アキとアイラがやってきて、ペットボトルを渡してくれた。そういえば喉が乾いてたなと思い出し、中身を一気に飲み干す。
「ふぅー……。ありがと」
「どういたしまして。でも問題はその人達の経歴だけじゃないわ。お母さんやサクヤさんが警戒していたのはもっと別の所」
「というと?」
「ご主人様、来日してくる冒険者達の異名、覚えてますか?」
異名? えーっと確か……。
「『雷鳴の魔女』、『撃滅聖女』。あとは……『聖印騎士』だったっけ?」
「そうです。そしてその者らは全員が、推定16~20歳前後の女性なのです!」
「……つまり?」
「もー、弟君ったら。お母さまはハニトラを警戒してるのよ」
ハニトラ?
「……??」
「ええ……? 弟君、ピンと来てないの?」
「ショウタ君の場合、ワンチャンハニトラの意味を知らない可能性が……?」
「いやいや、意味は分かるよ。ただ心配される謂れが無いというか。……あれ、もしかして義母さん達に伝えてないとか? 皆が毎日のようンムグッ!」
アキとマキによって口を封じられた。
「ちゃ、ちゃんと報告は行ってるわよ。それでも心配なのは心配なの!」
「そうです。それにハニトラを回避できたとしても、ショウタさんは魅力的ですから、色々理由をつけて居座られる可能性だって……」
「旦那様は渡しませんわ!」
「マキ様の不安は分からないでもないですが、問題は相手がSランクであるため多少の無茶振りが通せてしまう可能性と、ご主人様もA+ですから娶れる上限も増えている事にあります。増やすつもりが無くても空きがある以上、狙ってくる者はいるでしょう」
「そういうもんか」
「そういうものです。ちなみにご主人様が忘れていた『スピードスター』ですが、彼だけは例外で男性の様です」
「ほーん」
俺としては今の4人で十分満足してるし、戦闘面でもエンキ達がいるから不足してる部分は無い気がするんだよなぁ。ていうか、どんなに強くて魅力的な女性だろうと、レアモンスターの仕様上、結局俺が倒す必要があるからなぁ……。
異名持ちって事は大体我が強い訳だし、俺のダンジョン攻略の邪魔になるなら要らないんだが……。
『ゾワッ!』
「……ん?」
急に寒気のようなものを感じた俺は、海の方へと視線を向けた。
何かが……来る?
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