ガチャ280回目:神の秘宝

「んじゃ、宝箱の確認をしちゃうか。アイラ、『カムイ』の分も出してくれ」

「はい。こちらに」


 アイラが俺の目の前に2つの宝箱を置いてくれた。

 1つは強化体がドロップした『金の宝箱』。

 そしてもう1つが、『カムイ』が落とした 『エメラルドの宝箱』だ。


 『ユニークボス』は告知付きということもあって、特別なモンスターだからかな。宝箱のグレードも『ガダガ』同様、他とは違うらしい。

 皆も、何が出てくるか楽しみにしているみたいだし、まずは強化体の方から開けてしまおう。


「……お、さっそく暗闇」


 中に手を伸ばしてみれば、手に当たるのはツルツルした感触。毛皮っぽい柔らかさもあるし、ボア系と似たようなものだろうか?

 思いっきり掴んで引っ張り上げてみる。


「ほぉ」


 名前:山熊の籠手

 品格:≪固有≫ユニーク

 種別:防具

 防具レベル:33

 説明:ベルクベアの力が込められた籠手。装備者の『腕力』『器用』『頑丈』に大幅ボーナス。


「シリーズものかな?」


 外装もなんとなく『牙王の脚絆』と似たような蛮族チックだしな。探せば胴や頭の装備も出て来るんだろうか。でもヘビは盃だったしなぁ……。他のダンジョンとか? うーん謎だ。


「ご主人様、こちらに」 


 アイラがこれ見よがしにアーマースタンドを取り出した。

 はいはい、着けさせればいいのね。


 俺は身に着けている装備を全て脱いで、アーマースタンドに装着させた。まあ籠手装備が入れ替わっただけなので、フェイクファーなどを新しく用意する必要はない。バランスを整えるだけなので、彼女達の手に掛れば、ほんの2、3分程度で調整は終わってしまった。


「じゃ、次は本命を……いや待て。その前に、『カムイ』って装備品は落とさなかったのか?」

「落としましたよ」


 アイラは巾着袋から、何事も無かったかのようにソレを取り出した。


 名称:神威の爪

 品格:≪固有≫ユニーク

 種別:格闘武器

 武器レベル:41

 説明:山の神・カムイが身に着けていた武器。装備者に『神通力』の力を与える。自動補正機能付き。


「いや、これアイラのサブウェポンに次ぐレベルの武器じゃん!」

「そうなのですか?」


 40代レベルの武器なんて、アイラの装備でしか見た事がない。俺は性能面を皆に伝え、譲渡先を考える。格闘武器は、今までなら問答無用でアキに手渡ししていたが……。


「これは自動補正もついてるし、エンキが装備してみようか」

『ゴ? ゴゴ!』

「……ほっ」


 エンキが喜ぶ傍らで、アキが胸を撫で下ろしていた。


「あれ、アキが欲しかった?」

「え? ち、違うわよ。あたしが貰っても使える場面が無いから、貰えなくてほっとしてるの! あたしには『エンペラーペイン』があるんだし、こっちを大事に使うわ」

「そっか。……そうだな」


 エンキやエンリル、それからイリスが仲間になった事で、戦闘に彼女達が出てくることはほとんどなくなった。デカスライムみたいな予期せぬ戦いや、レアモンスターのキープなんかが必要な時は手伝いを必要とするかもしれないが、それ以外では彼女達は後ろで見てるだけだもんな。

 彼女達にもスキルは与えているとはいえ、活用できる場が無ければ経験は積めないし、視てるだけで『愛のネックレス』効果でレベルは上がって行く。その辺も何とかしてやりたいところだけど……。ううん、どうしたものか。


 とりあえず、その辺は今後も考えるとしよう。


「それじゃ、次こそこっちを開けるね」


 俺は手元に『エメラルドの宝箱』を引き寄せた。


「はい!」

「楽しみですわ!」

「今度は何が出るかなぁ。『エメラルドの宝箱』だもんね」

「前回はこの巾着袋でしたね。そして今回は、神の名を冠したモンスターの討伐報酬。期待に胸が躍ります」


 宝箱を開けると、再びエメラルドグリーンの輝きが視界を覆う。

 そしてその輝きは、アイテムを取得するまで永遠に続く。前回学んだことだ。

 俺はアイテムがあるであろう場所に手を伸ばすが、虚空を掴む。


「ん?」


 何もない? いや、輝きは確かに……。


「ご主人様、輝きの奥に暗闇が広がっています」

「なんで見え……あ、ずるい!」


 俺以外の全員がサングラスをかけていた。すぐに取れば輝きなんて一瞬だと思った俺と違って、彼女達は最初からガードすることを選択していたのか。


「ご主人様、学びが足りませんね」

「ぐぬ」


 ぐうの音も出ない。

 とりあえず、今更サングラスをかけるわけにはいかないので、俺は目を瞑って顔を背けながら暗闇の奥へと手を突っ込んだ。


「……お、これか?」


 暗闇を闇雲にまさぐっていると、なにやらガラスの玉っぽい何かを掴んでいた。感触としてはスキルオーブに近い物なのだが、オーブに比べてその玉は、一回り程大きかった。これなら確かに、宝箱には収まりきらないかもしれないな。

 俺はゆっくり慎重に、その玉を掴んで引き上げた。


 目を瞬かせて焼き付いた光を払いのけ、改めてその玉を見てみる。

 水晶玉のようなそれには、宇宙に広がる星々のような輝きが宿っていた。


「『真鑑定』」


 名称:転移の宝玉

 品格:≪伝説≫レジェンダリー

 種別:アーティファクト

 説明:神が護りし秘宝の1つ。ダンジョン内であれば、一度訪れた事のある場所に瞬時に移動出来る。有効対象5メートル。再使用時間72時間。


「は?」


 なんか、とんでもないアイテムが出て来たぞ。

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