ガチャ281回目:第三層のカギ

 俺は『転移の宝玉』の効果と説明を皆に伝えると、全員が絶句していた。そして最初に口を開いたのはアイラだった。


「ご主人様」

「うん」

「秘宝の1つ、と説明がある以上他にもあると思われますが、私はこのような逸品を存じ上げません」

「うん」

「ですが、ご主人様が相対したあのモンスターは、『神』の名を持っていました。そして私は、それと同格の存在を見たことがあります。あまりの強さに、サクヤ様の部隊ですら討伐が出来ずに撤退を余儀なくされたほどの相手が」

「へぇ……。楽しみだな」

「……ふふ。ご主人様ならそう仰ってくださると信じておりました。しかし『転移の宝玉』ですか……。説明を聞く限り使用者に左右されそうですね」

「深層のダンジョンに潜る際や、帰還する際に重宝しそうだよね」

「それどころか、リキャスト効果が記載されている事の方が重要です。こういった高性能なアイテムは使い切りな事が多いのですが、これを見る限り無制限に思えます。これの存在が知れ渡れば、トップチームや各国が押し寄せてくる事でしょう」


 うーん……。アイラはそういうけど、俺としてはぱっとは思い浮かばない。

 効果は凄いけど、結局これってダンジョン限定なんだよな。外でも無尽蔵に使えるアイラのバッグや巾着袋に比べたら、どうにも見劣りしてしまうというか。


「まあとにかく、お一人様専用じゃなくてよかった。皆一緒に移動できるなら遠慮なく活用していこう」

「では旦那様、鍵を手に入れたらさっそくですの?」

「ああ、そのつもり」

「楽しみですわ!」

『ゴゴ!』

『ポポポ』

『プルル』


 無邪気に喜ぶアヤネ達を見守っていると、今まで何かを考えていたマキが声を上げる。


「ショウタさん、そのアイテムですけど……」

「ん? ああ、義母さんにはちゃんと報告するよ」

「えっ?」

「あれ?」


 なんか思ってたのと違う反応が返ってきたな。

 思い悩んでいたから、報告するべきって話かと思ったんだけど。


「あの、あまりに衝撃的な内容ですし、他の人に効果を伝えるのは慎重にするべきと考えてたんですけど……」

「まあ、物が物だしね。でも、そういうのは信頼できる人に伝えておくべきだとは俺も思うから。責任の分担っていう奴。それに、前の『ユニークボス』で巾着袋が出た事は義母さんに報告してるし、今回それよりも上位の相手から何も出ませんでしたっていうのは、ちょっと俺の『運』からしてありえないというか……。アキはどう思う?」

「マキが心配してることも、ショウタ君が考えてる事も、あたしは支持するよ。でもそうね……。マキ、以前サクヤさんから教えて貰った話、覚えてる?」

「……うん」


 ん? 何の話だ?


「あの時と比べて、あたし達の地力は大幅に上昇したわ。ブランクがあるとはいえ、中級冒険者と対等に渡り合えるくらいの実力にはなったと思う」

「うん、そうだね」

「これからもショウタ君についていくなら、実力を高める機会はもっと訪れるはず。もしもの時が来ても、足手まといにならないよう頑張って行けば良いのよ」

「そう、だよね……。姉さん、私もっと頑張る!」

「うん、その調子!」

「えーっと……何の話?」


 話についていけないんだが……。


「んー。まあ、簡単に言うと、あたし達が冒険について行くことになったきっかけの話よ。サクヤさんに背中を押してもらったの」

「なるほど?」


 よくわからんが、彼女達がレベルを上げる事に対して前向きになった時の話ってことなら、良い事だよな? 2人が詳細を語らない以上、あまり根掘り葉掘り聞くのは憚られるし……。でも、彼女達が思っている以上にサクヤさんの世話になってるのなら、やっぱりお土産は何か渡したいところだよな。

 けど、それはそれとして『転移の宝玉』をサクヤさんに伝えるのは、謎の悪寒が走るから止めておこうと思うんだが。


「とりあえず、義母さんには伝えても良いんだよね?」

「はい」

「OKよ」

「んじゃ、ちゃっちゃと鍵の回収を済ませようか」


 そうして俺達は真っ直ぐに、例の洞窟へと向かった。

 道中、フォレストベアを数体討伐した時にふと思った事があった。


「なあ、フォレストベアのスキルって……」

「はい。『剛力』『俊足』『鉄壁』それぞれ206個ございます」

「うげ……」

「帰還後、整頓をお願いしますね」

「……ハイ」


 この後の作業を思って少しばかり気に病みはしたものの、俺達は歩みを止める事無く斜面を下り続けた。洞窟は以前と変わることなく同じ場所に存在し、接近した途端森と思っていた場所が森ではなくなった。不思議な現象は相変わらずだが、ここで考えていても分からないものは分からないし、そういうものだと判断して俺達は奥の祭壇へと向かう。

 そして歩く事10分ほど。前回と違って警戒の必要はない為、真っ直ぐに突き進むと例の場所に到着した。


「アイラ、頼む」

「畏まりました」


 アイラはヘビのレリーフ前に盃を捧げ、俺は籠手と脚絆を脱いで祭壇に捧げた。前回同様ヘビのレリーフから光の線が伸び、少し遅れてイノシシとクマのレリーフからも光が伸びる。

 光は、中央の台座へと注がれていた。


「さて、宝箱は出て来るかな」

「これで出なかったら大変よ」


 アキがそう言ったタイミングで、台座に注がれていた光が消え失せ、音もなく宝箱が出現した。


「うわ、いきなり出た」

「噂をすればってやつね」

「捧げたアイテムも無事みたいですね」

「……鍵回収した瞬間消えたりしないよね?」

「不安なら試してみましょ。それっ」


 アキが盃を持ち上げたが、何も変化は起きなかった。


「ほらね、大丈夫だったでしょ」

「ほっ……。ここで防具二カ所が消えるのは面倒だからな、よかった」

「では旦那様、この宝箱調べてみてくださいまし」

「ああ。『真鑑定』」


 名前:525-3

 説明:525ダンジョン第三層配置の??? 対応する虚像を捧げよ


「うん、いつも通りだ。箱本体にもしっかり3種のレリーフが刻印されてるし」


 宝箱に触れると、錠前は輝きながら消え去り、中に封じられていた光が俺の中に飛び込んできた。


*****


名前:天地 翔太

年齢:21

レベル:248

腕力:17656(+8577)(+8828)

器用:17224(+8361)(+8612)

頑丈:17592(+8545)(+8796)

俊敏:18562(+9030)(+9281)

魔力:18240(+8871)(+9120)

知力:17832(+8667)(+8916)

運:10332


ユニークスキル】レベルガチャⅡ、真鑑定Lv4、鑑定偽装Lv5、自動マッピングⅣ(1/3)、鷹の目Ⅱ、魔石操作(2/3)、弱体化(1/3)、スキル圧縮Ⅱ、充電

ブーストスキル】金剛外装Ⅲ、剛力Ⅴ、怪力Ⅳ、阿修羅Ⅲ、怪力乱神、金剛力Ⅱ、俊足Ⅳ、迅速Ⅳ、瞬迅Ⅲ、鉄壁Ⅴ、城壁Ⅳ、金剛体Ⅲ、金剛壁Ⅱ、力溜めⅡ

パッシブスキル】身体超強化Lv5、風耐性Lv1、物理耐性Ⅴ、魔法耐性、知覚強化Ⅱ、思考加速、並列処理(2/3)、二刀流Ⅲ、体術Lv6、格闘術Lv6、剣聖Lv3、盾術Lv2、槍術Lv8、弓術Lv5、狩人の極意Lv4、暗殺の極意Lv3、姿勢制御Lv2、空間把握Lv2、精力増強LvMAX、恐怖耐性Lv1

PBパッシブブーストスキル】統率Ⅲ、破壊の叡智Ⅱ、魔導の叡智、万象の刻印

アーツスキル】予知Ⅱ(1/3)、克己、看破、気配感知、生体感知、魔力感知、危険感知、罠感知、跳躍Lv4、暗視Ⅱ、衝撃Ⅱ、鎧通しⅡ、急所突き、ウェポンブレイク、アーマーブレイク、重ね撃ちLv2、縮地、忍び足、チャージアタックⅢ、ウォークライⅡ、追跡者Ⅴ、騎乗Ⅱ、反響定位、魔力定位、神通力、弱点看破

マジックスキル】狭間の理、視界共有(2/3)、念動力Lv1、元素魔法Lv4、外典魔法Lv2、空間魔法Lv2、泡魔法Lv1、水流操作Lv3、砂塵操作Lv5、風塵操作Lv2、回復魔法Lv1、極光魔法Lv4、宵闇魔法Lv2、混沌魔法Lv2、魔力超回復Lv3、魔力譲渡Ⅱ

スペシャルスキル】王の威圧Ⅳ、決闘Ⅲ、ダブルLv1


武技スキル:無刃剣[双連・無刃剣]、紅蓮剣[飛剣・鳳凰]、紫電の矢[雷鳴の矢]


称号:ゴブリンキラー、神殺し

トロフィー:なし

管理者の鍵:525(1)、525(2)、★525(3)、525(4)、810(1)、810(2(1/2))、777


*****


 よし、ばっちりだ。


「しっかし、どこもトロフィーさえあればOKって訳じゃないんだな」

「今までと違って、今回はある意味二重認証でしたね。場所を押さえてしまえばおしまい、と言うわけにもいかないようです」

「でもショウタ君的には、やりがい感じちゃうんでしょ?」

「あ、分かる?」

「分かるわよ。どんなに一緒にいると思ってんの」

「あはは。それじゃ、早速だけど『転移の宝玉』試してみようか」

「ショウタさん、ガチャはまだ回してないようですけど……」

「ああ、五層の攻略に入る前に、またお休みを入れようと思ってね。なるべくステータスは抑え目にしておきたいんだ」


 SURでステータス増強が出るたび、3種が当たり前のように300ずつ増えるからな。安定して出せる力を増やす修行をするうえで、限界値が高いほど修行の難易度が爆上がりするからな。

 強敵と渡り合うためにも、身体がついていくよう修行し直さなくては。


「旅行ですの?」

「今回はどうしよっか?」

「そういうのは任せるよ」

「帰ったら相談しましょう!」

「その前に、報告が先ですよ」

『ゴゴー』

『ポポ~』

『プルプル』

「ほら、皆集まってー」


 エンキは体長50センチの小人状態になって俺の腕の中へと飛び込み、エンリルは肩に留まり、イリスは頭の上に乗っかる。そして彼女達が左右から俺に抱き着いたところで、『転移の宝玉』を起動させた。


【使用者のダンジョン攻略情報を検知します】

【『自動マッピング』のスキルを検知】

【スキルと連動させますか?】


 俺の前に『YES/NO』の選択肢が出現した。まさかマップスキルと親和性があるとは。


「YESだ」


【連動完了】

【移動したいポイントを選択してください】


 俺の目の前に第三層のマップと、その隣には第一層から第四層までのタッチパネルが表示された。第五層は一度も踏み込んでいない為、選択肢が出ないようだが……。各階層をタップしてみれば、その階層のリアルタイム情報が手に取るようにわかった。

 人の位置、モンスターの位置、宝箱の配置、レアモンスターの有無。今までは1つの階層だけだったのに、これはすごい!

 そしてどうやらこの画面、皆にも見えているようだった。


「これがショウタさんのマップ……!」

「すっご!!」

「すごいですわー!」

「ご主人様には、ここまで詳細な地図が見えていたのですか……!」


 なんだか、転移機能よりもこっちの方がすごくないか?

 まあともかく、もしこのまま眺めていて、時間切れになって72時間待ちになったら面倒だし、俺は急ぎ第一層で誰もいないポイントを探した。

 すると、入口付近にある『ホブゴブリン』出現の行き止まりが丁度良いと判断。

 マップをタッチすると、俺達は一瞬で別階層へと転移するのだった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る