ガチャ274回目:初めてのクマ退治。
洞窟を出た俺たちは、そのまま迂回して再び山頂を目指した。この山は天辺に近付くにつれて樹の密集率が下がっているらしく、視界はどんどん広くなっていった。これもまた、外から見る限りではわからなかった事だ。
何かしら、中に入った者にしかわからない様な仕掛けが施されているのかもしれないな。そうして、いつまでもクマに出会えないまま登り続けていると、ようやく最初のクマに出会うことができた。
四足歩行でのっしのっしと歩くその姿からは、ボアとは比較にならないほどの凶悪性が垣間見えた。あれは、直立すれば2メートルを超えるデカさだろう。昔テレビでみたヒグマみたいなサイズだな。
「『真鑑定』」
*****
名前:フォレストベア
レベル:28
腕力:350
器用:300
頑丈:330
俊敏:200
魔力:50
知力:150
運:なし
【
装備:なし
ドロップ:フォレストベアの肉
魔石:中
*****
何だこの強さは。
お前みたいな雑魚モンスターがいるか! と声を大にして言いたかった。
「いや、強すぎじゃない? こんなん第二層のレアモンスター並みじゃん」
「そうですね、私も聞いていた以上に強くて驚いてます。ですが、このモンスターは縄張りから自主的に出ようとしないそうです。ここに辿り着くまでが大変ですので、このダンジョンを攻略する冒険者のほとんどが、このモンスターと遭遇経験がありません」
「そんな辺鄙な場所にしかいないから、『鑑定』持ちの子がここまで訪れるのも大変でね。そのせいで、強いという情報だけは出回ってて、実際のステータスは誰も知らなかったりするのよ」
「初めて見た感想は?」
「いやー、化け物すぎるでしょ。『初心者ダンジョン』にいていい強さじゃないわ」
同感である。
「今までも薄っすらと感じていましたが、この階層だけ難易度がおかしいですわ」
「そうですね。攻略難易度の上がり方から見て、ここが第四層と言われても納得出来ます」
「あ、ショウタさん。相手がこちらに気付いた様です」
『ヴー……!』
フォレストベアがこちらを見て低く唸る。距離があるし、格下とはいえ……やっぱりクマは迫力があってちょっと怖いな。
「おー……。やっぱこれ、通常モンスターの迫力じゃないでしょ」
山の中を歩いてたら、『マーダーラビット』にエンカウントしたかのような錯覚を覚えるレベルだぞ。
それともクマというイメージが先行しすぎてて、勝手にビビってるだけか?
「……とりあえず、相手してみるよ。カメラ回しといて」
「はい」
「お任せくださいですわ!」
『ヴオオオ!!』
フォレストベアの前に躍り出ると、奴は四足歩行のまま駆け出し突撃してきた。相手は通常モンスターでも強さはレア級なら、記録に残しておくべきだと思ったのだ。
開幕突進からのぶちかましは、ファングボア以上の勢いと威力がありそうだが、その動きはもう見慣れている。こちらも突進して懐に潜り込み、一息に喉元を切り裂いた。
フォレストベアが煙になるのを確認すると、俺は大きく息を吸い込む。
「ウオオオオオ!!!」
アーツスキルの『ウォークライⅡ』を使用した。
本来の使い方は、自分と味方のステータスを上昇させるスキルではあるが、獣が相手の場合は別の効果を発揮するらしい。
『グルルル』
『ヴー……!』
『ヴオオ!!』
周囲にいたフォレストベアが次々と集まってきた。
縄張り意識の強いモンスターは、こうやって叫ぶことで凄い勢いで集まって来るらしい。専属の情報は本当にありがたいな。難点があるとすれば、少し恥ずかしいのと、初手から相手が激おこになる点だが……。縄張り型モンスターは沸点が低そうだし、大した問題じゃないな。
「エンキ、エンリル、やるぞ!」
『ゴゴ!!』
『ポポー!』
さあ、クマ狩りの時間だ!
◇◇◇◇◇◇◇◇
『ウォークライ』でモンスターを呼び寄せ、終わったらエンリルで索敵をして、いなければ次のポイントへと移動。再び『ウォークライ』で釣り出し、殲滅する。この繰り返しをする事約1時間。
初めて到達したマップ更新が必要な場所ということもあって、慎重に動いたつもりではあったが、100匹討伐にかなりの時間を要してしまった。だが一番の原因は、その個体数の少なさだろう。『ウォークライ』の声が届く範囲でやって来るのは多くて8匹、少ないと3、4匹しかいなかった。
その為100匹を倒す過程で、クマの出現地帯となっている山の中腹をぐるりと一周する羽目になってしまった。山の中心部にしかいないという話ではあったが、想定よりもずっと少ない。マップでリポップしていく様子を見ても、常時100体以下しか存在しないんじゃないだろうか。
けどそうなってくると、別の問題が浮上する。この狭い範囲でしか存在しないのであれば、レアモンスターの出現場所も自ずと限られてしまうのだ。
ちなみに途中、エンリルのバードアタックも試してみたが、特に問題は起きずに攻撃した1匹しかやってこなかった。とりあえずこの第三層なら問題なさそうだな。
「ショウタさん、煙が出現しました」
「準備は出来ていますわ!」
そんな事を考えていると、目的達成の報告が入ってきた。
出現した煙は周囲の煙を取り込みながら肥大化し、そのまま頂上を目指して飛んで行く。出現地点の懸念はあるが、まずはコイツを討伐しなければ話にならない。
俺達が煙を追いかけていると、煙は雲の向こうへと姿を消した。周囲の安全を考え『鷹の目』を使用する。このスキルは障害物を無視してモンスターの存在を感知するからな。
そうして慎重に進んだが、結局モンスターとぶつかることなく雲を抜ける事が出来た。
「……ここが山頂か」
その場所は、平らに整えられたフィールドだった。まるで戦いの為に切り開かれた場所のようで、緊張が走る。
フィールドの中央では、不思議な事に煙はまだその場に留まっていた。今までなら、煙は出現から1分ほどで中身が出てきたはずなのに、こいつは挙動からしておかしい。
「何が出るか分からない。全員警戒! それから、緩やかとはいえ、坂道から転げ落ちると大変だから、背後には注意して」
「「「「はい!」」」」
気持ちを整えていると、フィールド中央に漂っていた煙が一気に弾ける。
そして中から、最初から二足歩行形態で3メートル級のクマが誕生した。
『ゴアアアア!!』
「『真鑑定』」
*****
名前:ベルクベア
レベル:84
腕力:900
器用:900
頑丈:700
俊敏:400
魔力:100
知力:200
運:なし
【
【
【
【
【
装備:なし
ドロップ:ベルクベアの蜂蜜、ベルクベアの毛皮
魔石:特大
*****
レアでこの強さか。
となれば強化体は最低でもこの2倍のレベルになるし、『レアⅡ』もその前後が来るということ。これは楽しみで仕方がないな。
「エンキ、エンリル、イリス。やるぞ!」
『ゴゴ!』
『ポポ!』
『プルル!』
『ゴアアアアアッ!!』
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