ガチャ269回目:空の視界

 エンリルを連れてテントの外に出た俺は、早速『視界共有』を発動。俺の視界が2つに分裂した。


「エンリルはエンリルで、自分の視点を動かせるんだな?」

『ポポッ』


 エンリルが小さく羽ばたく。


「『視界共有』で視界は借りてるけど、機能を間借りしてるだけで、当人には影響はないのか。なんとも不思議だが、エンキもエンリルも実体としての目が無いからかな? 魔法的な概念で目に近い何かが割り振られているにすぎないから、そんな事になるんだろうか?」

『ポポ~?』

「ま、そんなことは良いか。『マップ』!」


 俺とエンリル、両方の視点でマップが視える。これで実験の第一段階は成功。続いて第二段階に移行する前に、1つ懸念を解消しておこう。


「エンリル、このマップ、お前にも視えているか?」

『ポポー!』

「お、そうか! 視えるか!」


 今までこのマップは、俺の視点だけでしか視えていない情報だったから、情報の共有は困難を極めたんだよな……。これで彼らとは意思の疎通が取りやすくなったな。


「それじゃ、ここら一帯のイノシシゾーンで、マップに反映されてないポイントをぐるりと回って来てくれ」

『ポポポ!』


 エンリルは風の力を借りて大きく羽ばたくと、一気に上昇していく。すぐに彼の高度は樹の全長を超え、視界の先には中央にそびえ立つ山地帯が見えた。山の頂上付近は雲に覆われていて、エンリルの視界からでもその雲の向こう側は見渡せなかった。

 マップに目を向ければ、彼の視界に映った世界の中で、近い所からマップの空白が埋められていく。


「よしっ!」


 上手くいったのは喜ばしい事ではあるが、不思議な事にマップが反映されているのはエンリルの直下のみ。第三層中央にそびえる山も視界には映っているのだが、マップは無反応だった。どうにもこっちの視点だと、マップへの書き込みは制限がかかるのかもしれないな。

 その後もエンリルは、飛び方を変えたり高度を上げ下げしたりと工夫してくれていたが、反映されるのはやはり彼の真下とその周辺のみだった。まあ、それでも十分すぎる効果なんだが。

 これで、無駄にあちこち動き回る必要が無くなったな。まあその分レアモンスターと連戦する理由が消えちゃうんだけど。でも疲労は溜まるからな。


『ポポ~』

「エンリル、お疲れ様」


 戻ってきたエンリルを労いつつ、集まっていた皆に成果を報告する。


「つまり、マップ埋めの効率が格段に上がった訳ね」

「今ので、ここのイノシシ地帯は全てマッピングが完了したんですか?」

「ああ。全部埋め終わったよ」

『ポポ!』

「すごいですね! 『鷹の目』のように気持ち悪くなったり、疲れたりはしませんでしたか?」

「うん、大丈夫」


 『鷹の目』の気持ち悪さも、恐らくだが『並列処理』があれば上手いこと処理してくれそうな気がする。まあ、あっちは消費『魔力』の問題も残ってるから、今はまだ使う気になれないが。


「『視界共有』で繋がっても、視界は個別に確保されている、ですか。なんとも不思議ですが、同時に面白い現象ですね」

「ではエンリルが前を見て飛んでいても、旦那様は下の光景が見れているんですの?」

「そだねー」

「不思議ですわ~」

『ゴゴ』

『プルプル』


 エンキとイリスが、エンリルを挟んでワチャワチャしている。

 イリスの声は聞こえないが、エンキの反応を見るに称賛と祝福を贈っているんだろうな。


「真下しか見れないのはちょっと残念だけど、それでも効率は段違いだ。このままここで昼食休憩をしたら、残り二カ所のマップを埋めつつ、強化体を狙っていこう」

「ご主人様、先ほど得たスキルの精算は如何されますか?」

「んー……それも強化体が終わった後に纏めてやろうかな。『レアⅡ』はイリスが封殺してくれるし」

『プルル』

「承知しました」


 そうして俺達は無駄な戦いは避け、2カ所目にて『ドレッドボア』を撃破し、レベル32⇒73に。

 3カ所目にて『ドレッドボア』を撃破し、レベル73⇒74に。そのまま『グランドボア』を撃破しレベル74⇒144に。

 そのままガチャを回して100匹のボアを撃破。強化体を出現させた。


*****

名前:ドレッドボア

レベル:110

腕力:975

器用:180

頑丈:1050

俊敏:600

魔力:75

知力:30

運:なし


ブーストスキル】怪力Ⅲ、迅速Ⅲ

パッシブスキル】怒髪天Ⅲ

PBパッシブブーストスキル】破壊の叡智Ⅱ

アーツスキル】チャージアタックⅢ

スペシャルスキル】限界突破


装備:なし

ドロップ:ボアの上肉、ボアの鋭牙、ランダムボックス、ドレッドボアのトロフィー

魔石:特大

*****


 体格としては『グランドボア』に迫るものがあるし、スキル構成も近付いてはいるが……。

 うん、どうあがいてもレアを強くしただけで、ブレイク系スキルがないんじゃあ危険度合いもかなり下がる。『レアⅡ』に迫るほどじゃないな。肝心の『限界突破』が、大して脅威に感じていないというのも大きい。

 一体全体、どの辺がしているんだ??


『ブギギイイ!!』


 突撃してくる『ドレッドボア』に対し、俺は剣を抜き放ち、力を開放する。


「『無刃剣』」


『……キンッ』


 剣を仕舞うと同時に、『ドレッドボア』の全身が微塵斬りになり、煙となって消滅した。


【ドレッドボアのトロフィーを獲得しました】


【レベルアップ】

【レベルが26から145に上昇しました】


「……ふぅ。これで残すトロフィーはあと1つだな」


 遠くに見える山へと視線を向ける。

 ここに来て未だに一度も対面していないクマのモンスターが潜む山と聞くが、どんな風になっているのか今から楽しみだ。けど、それは明日の楽しみに取っておこう。

 今は第二層に戻って、英気を養うとしよう。

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