ガチャ265回目:ボア狩り開始
第三層攻略、三日目。
昨日は例の下着が全員分揃った事もあってちょっと大変な目に遭ったが、ほどほどに抑えて貰った。なにせ、今から挑むのは初見の相手なのだ。戦いが始まる前から別の戦いで消耗するわけにはいかないからな。
さて、第三層第二の敵であるイノシシは、なんだかんだでまだ直接見てはいない。
いや、遠目にそれらしい影は何度か見たんだが、『真鑑定』にも距離限界があるらしく、直接その能力や体格を拝むことは叶わないでいた。
そして出現地点もヘビと同様3カ所あるのだが、南エリアが一番広大で、北西が次点で広く、北北東が一番狭いらしい。現状、出現地点の位置関係も分かっていない以上、闇雲に広いエリアは探索したくない。
というわけで、まずは一番狭いと噂の北北東を目指して進む。
北北東のイノシシエリアは第三層の出口付近ということもあり一番遠い場所にあるのだが……これも安全のためだ。これくらいの苦労には目を瞑るべきだろう。
「アキ、マキ」
「はい」
「なあに?」
「イノシシ系のレアモンスターは、厄介な能力とかあるかな」
「パワー系の能力があるらしいって聞くけど、ヘビ種みたいな搦め手タイプじゃないことは確かよ」
「ショウタさんの戦ったキラーラビットや『マーダーラビット』を、更に手強くした姿をイメージすればいいかと」
「なるほど。……まあ、安心できる相手と分かっても、皆を置いて突っ込まないよう気を付けるよ」
「にしし」
「はい、そうしてください」
心配させるのも、泣かれるのもごめんだからな。
『ゴゴ』
「旦那様、そろそろイノシシゾーンのはずですわ」
「お、そうか。とりあえず、最初の1匹目は降りて戦うか」
彼女達はエンキの手の中に待機させ、俺は地面へと飛び降りる。
『鷹の目』を使いながら慎重に進んでいると、マップにはイノシシと思われる赤点が表示された。ちょうど、正面の樹の裏手にいるようだな。
ハンドサインを送りつつ、そーっと様子を見る。
『フゴッ、フゴッ』
真っ先に視界へと飛び込んできたのは、ずんぐりむっくりした黒い塊だった。一般的に言うイノシシと比べ、体躯は同じくらいだが特徴的なのはあの口元から大きく飛び出した鋭い対の牙だろう。
あんな上向きの牙が生えてて、普通に生活出来んのかな? 歯並び最悪だぞ。まあでもモンスターだしな。
そんな事を考えながら見守っている間も、そのイノシシは鼻息荒く地面を嗅いでいた。
「『真鑑定』」
*****
名前:ファングボア
レベル:18
腕力:200
器用:80
頑丈:180
俊敏:100
魔力:50
知力:10
運:なし
装備:なし
スキル:なし
ドロップ:ボアの肉
魔石:小
*****
レベル18……。
雑魚モンスターにしてはやけに高いな。オークより上だぞ。
でもこいつらはオークと違って群れていない。ここから『鷹の目』で周囲を確認するだけでも、似たような気配は感知できるが、どいつもこいつもバラバラに点在しているようだ。相手が1匹ずつだと思えば、そこまで急激な難易度変化でもないわけか……?
でも、視界と足場の悪さは難易度を大きく引き上げる要因ではあるんだよな。
「まずはその突進力、受けてみるか」
『フゴッ? フゴゴッ!』
樹の影から飛び出すと、俺を見つけたファングボアがノータイムでこちらへと突進してきた。
「猪突猛進ってこういうのを言うんだろうな」
突進力は『腕力』と『俊敏』双方の力が反映されているのだろうか。ひとまず俺は剣を真っ直ぐ前に突き出し、ファングボアの進路上に
『ドッ!』
ファングボアは進路を変える事無く脳天から剣に激突し、煙となっていた。まさか本当に真っ直ぐ止まることなく突っ込んでくるとは。インパクトの瞬間、それなりの力が剣を持っていた腕に伝わってきたが、まるで脅威じゃなかった。
「こいつ、『知力』10だもんなぁ……」
まあファングボアの残念さはさておき、ステータスさえあれば、斬る動作すら要らないというのは楽な相手だ。けど、レアモンスターが相手でも同じようにいくとは思えない。もう少し動きを慣らしておくか。
「エンキ、俺と一緒に狩りをしようか」
『ゴ!』
そうして俺は進路上に剣を置くほかに、足払いや切り払い、魔法や弓を使った遠隔攻撃など、いろいろと試して有効打を探した。結論としては全て問題なく撃破出来てしまい、どれが弱点なのかわからなかったのだが。
「うーん……」
そんな事を考えていると、アイテム回収をしていたアイラがくすりと笑う。
「ご主人様の実力が高まり過ぎて、この程度の相手であれば全て有効打になるのでしょう」
「そうなの?」
「『腕力』が無ければボアの頭を剣で貫く事も出来ませんし、『頑丈』が無ければ突進を受け止める事も出来ません。『俊敏』と判断力が無ければ奴の突進からの足払いも成功はしませんし、『器用』さが無ければボアの眉間に毎回弓矢をヒットさせることも叶いません」
「まあ……そうかもな」
「はい、そうですとも」
ちなみにエンキは、突進してくる全てのボアをサッカーボールのように蹴飛ばして対処していた。
豪快過ぎる。
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