ガチャ266回目:ボア祭り
エンキはボアを蹴り殺しているが、あんな質量の塊をどうやって蹴ってるのか不思議に思い観察してみた。まず蹴られたボアだが、蹴られた瞬間に絶命し、煙へと変じていた。更に注意深く見ていると、接触の瞬間軸足をスパイクのように変化させて地面へと食い込ませ、動足は鋭利な形へと形状変化させていた。
つまりは、蹴り殺すというよりも、刺し殺すといった方が正しいのかもしれない。そしてボアが煙になり、足を地面に下ろす時には、元のどっしりとした形へと戻っているし、豪快に見えて実はめちゃくちゃ繊細で器用な事をしていた。エンキ、やるなぁ……。
『ゴゴ!』
そんなこんなでボアを狩りながら移動していると、数十分もしない内に100匹の目標に到達した。
出現した煙を皆で慎重に追うと、そこに20メートル四方の沼田場があり、中心には体高2メートル級の巨大猪が鎮座していた。
『ブルルルルッ』
*****
名前:ドレッドボア
レベル:55
腕力:650
器用:120
頑丈:700
俊敏:400
魔力:50
知力:20
運:なし
【
【
【
装備:なし
ドロップ:ボアの上肉、ボアの鋭牙
魔石:大
*****
あれがレアモンスターか。頭にはニワトリのトサカみたいな白い体毛があるし、あれがドレッドなのか? 威風堂々とした見た目からは、『レアⅡ』だと言われても信じてしまいそうな迫力がある。
「おおー、でけー……」
「どうされますか?」
「とりあえずかち合ってみるよ」
一人木陰から飛び出し、『ドレッドボア』の正面に躍り出ると、奴は通常のボア同様真っ直ぐに突っ込んできた。
『ブギイイイ!!』
「『知力』20だもんなぁ……っとぉ!」
『ドゴンッ!!』
行動内容はその辺のボアと同じだが、突進の威力は比較にならないものだった。
この勢いと重み……。旅行での修行中、アイラの思い付きで「2トンのトラックに撥ねられてみましょう」なんて言われたときの事を思い出すな。アイラが突拍子もない事を言う事は多々あれど、あの時ほどアイツの頭の中はどうなっているのかと疑問に思った事はない。それを聞いたマキは真っ先に止めようとしたし、俺も無茶を言うなと文句を言ったもんだが……。
だけど意外にも、俺の『頑丈』さ、そして『腕力』が4桁を大きく超えた事により、勢いの付いたトラックを真正面から受け止めても、問題なく踏ん張れるくらいには強くなっていたんだよな。まあ、受けてみた正直な感想としては、『ジャイアントロックゴーレム』のパンチより弱かったことが一番の驚きだったかもしれない。
『ブギギギ!』
「ご主人様、どうですか」
「トラックよりは、軽いかな」
「それはようございました」
『ブギィ!!』
「おっ」
俺とアイラの会話が気に障ったのか、『ドレッドボア』の頭部の毛が赤く染まる。まるで燃え盛る炎のように見えるそれは、スキルの『怒髪天』の副次効果だろうか。
押し込む強さが急激に増した気がするが、最初からそれをして来たのならともかく、押し合いになった今となってはさして脅威ではなかった。
俺は『ドレッドボア』の力を利用して、その突撃を弾き、ガラ空きとなった首元に剣を突き立てた。しかしその巨体のせいか、肉厚なその身体には剣1本では効果が薄く、即座に煙に変えるほどの致命傷は与えられなかった。
「『紅蓮剣』」
『ブギイイィィ!?』
ならばと、突き立てた剣を燃やし、内側から焼き尽くす事にした。効果は抜群で、丸焼きとなった『ドレッドボア』はすぐに煙へと変わってしまった。
【レベルアップ】
【レベルが46から67に上昇しました】
ふむ。経験値はぼちぼちだな。
「ご主人様、試していてよかったでしょう?」
「まあ……そうだな。あの勢いを知っていた分、踏ん張りも利かせられたし、無駄ではなかったな」
「そうでしょうとも」
アイラが得意気な顔で胸を張った。
ま、それはさておき……次は出てくれるかな。
皆に甲斐甲斐しく世話をされながら待つ事8分ほど。煙は膨張を開始し、再び沼田場の中央に移動した。俺はその正面、カメラ役のアヤネはアイラに抱えられて側面の樹の上に陣取り、マキはイリスと一緒にエンキの腕の中。最後にアキはエンキの足元でエンリルと共にスタンバっている。
もしもの時に備えて彼女達には待機してもらったがはたして、何が出るやら。
*****
名前:グランドボア
レベル:124
腕力:1300
器用:400
頑丈:1400
俊敏:550
魔力:400
知力:30
運:なし
【
【
【
【
【
装備:なし
ドロップ:ボアの特上肉、ボアの王牙、ランダムボックス
魔石:特大
*****
煙からズシンと現れたのは、3メートルを超える巨大なイノシシだった。
視た事もないスキルがいくつかあり、更には3桁のレベル持ち。こんなのが第三層に出て良いのかよ。
「『レアⅡ』で100越えか。これは中々手ごわそうだな」
『ブギィ! ブギイイ!!』
『グランドボア』は俺を目視した瞬間、沸騰したように顔を真っ赤にさせた。
はは、初手から『怒髪天』か。これは正面から受け止めるなら、全力で迎え撃ってやらないとな!
『ゾワッ!』
俺が全力で対峙することに意識を向けた瞬間、得体の知れない悪寒が全身を駆け抜けた。
「ご主人様!!」
アイラの叫びが聞こえる。
「全力で回避してください! それを受け止めては駄目です!」
アイラの言葉が届くのと、『グランドボア』の突進は同時だった。
だが、それを聞くよりも早く、俺の身体は無意識に動いていた。頭で理解するよりも先に、勝手に回避行動を取る。飛び上がる身体に、どこか他人事のような感覚を受けていた。そんな俺の真下を、『グランドボア』の巨体が通り過ぎていく。
『ドガガガガッ!!』
『グランドボア』は巨大な樹をものともせずに突き破り、4本目の樹に激突したところでようやく停止した。ここの樹の太さは第二層とは比べ物にならないほどにしっかりとしている。あちらは直径50センチほどだが、こっちは3メートル以上を超える巨木の海だ。
それをいともたやすく何本もへし折るなんて、どんなパワーしてやがるんだ……!
「ご主人様! 奴の持つスキル『ウェポンブレイク』は武器破壊。『アーマーブレイク』は防具破壊の代名詞です。それを剣や鎧で受けると高確率で破壊されますので受けようとはしないでください」
「……なるほど、了解。それじゃイリス、手伝ってくれ!」
『プルプル!』
『ゴゴ!』
イリスが飛び降り、エンキが代弁する。初めての本格的な出番ということもあって、イリスも張り切っているようだ。
丸まってゴロゴロと転がってきたイリスが、俺の目の前で止まる。
『プルル』
イリスとの初の共闘だ。無傷で倒してやる。
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