ガチャ259回目:修行の成果

 ――視える。

 『気配感知』『生体感知』『魔力感知』『危険感知』を展開し『知覚強化』をフルに使う事で、『ラミア』の一挙手一投足が手に取るようにわかる。

 まずは左手前方からは良くしなる……腕!


『ガキィン!』


 剣で迎え撃てば鋭利な物が激突した衝撃がやって来る。恐らく爪とぶつかったのだろうが、迎え撃つ程度の威力では破壊は出来ないか。

 そしてすかさず、右側面から尻尾!


「よっと」

『キシャァ!』


 軽く跳ねて避ければ、今度は上空に現れる3つの魔力の痕跡。

 『魔力感知』を使い続け、磨いてきたことで練度が上がったのか、今の俺は魔法が発動する兆候だけで、それが何の属性に分類される魔法なのか色がついて視えるようになっていた。


 まず左から順番に水属性、風属性、土属性だろう。

 大きさからして全てがビッグシリーズ。レベル3の魔法だ。危険度としては第一に土、第二に風、第三に水ではあるが、だからといって水はなるべく当たりたくはない。水の塊をぶつけられたところでそこまで痛くはないのは修練で実証済みだが、当たれば服や鎧が水を吸う為、身体は重くなり以降の攻撃に対して回避が困難になる。

 そして風は小さな竜巻が内包された乱気流の塊だ。ぶつかればそれだけで吹き飛ばされ、体勢を崩される。

 土はもう岩の塊だ。いくら『頑丈』が高かろうと痛いものは痛いし、最悪骨が砕ける。


 つまり、全部当たりたくはなかった。

 ならばどうするか。答えは簡単だ。……全部避けるだけだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「ふぅ、ふぅ……」

『シュルルル……』


 もう何分が経過しただろうか。

 俺はひたすらに至近距離で『ラミア』の攻撃を遠近関係なく受け流し、時には回避し、更には決定的な攻撃チャンスには薄皮一枚斬る程度の軽い攻撃を繰り返し、戦いの練度を高めていく。

 そしてついには、目を閉じた状態でも『予知』が完全に発動するようになり、もうこいつから学べることは無くなっていた。


「いい勉強になった。ありがとな」


『斬ッ!』


【レベルアップ】

【レベルが83から105に上昇しました】


 目を開けば、『ラミア』は煙となって即座に霧散していた。

 結局また、『ラミア』の姿は裸眼で拝めなかったな。


「ふぅー……。皆、終わったよー」


 俺がそう声を掛けると、散らばっていた仲間達が一斉に駆けだしてきた。


「お疲れ様!」

「リベンジ達成ですね!」

「この20分間、直接見れなくてとってもやきもきしましたわ~!」

「ご主人様、至近距離での見事な見切り。とても素晴らしいもので御座いました」

「皆ありがと。……アイラは目を開けてたの?」

「気配を消せば視線は合わせられたりはしませんから」

「ああ、なるほど……」


 そういえば、前回のとどめも気配を消して『ラミア』の死角からトドメを刺してたんだっけ。


「アイラだけズルイですわ~!」

「あたし達も生で見たかったわ」

「皆さまも隠れるスキルを取れば良いかと」

「アイラさんのスキルは本当に珍しい部類の物ですから、一般のオークションでは出回りませんよ……」

「ご主人様がついていますから。その内ドロップや宝箱からでるやもしれません」

「確かに……」

「えっと確か、『隠形』と『気配遮断』だっけ? なんだかんだで、この2つは俺も持ってないな」

「ショウタさんの戦いのスタンスには必要ないからかもしれないですね」

「かもねー」


 まあそれはともかく、ドロップアイテムの確認だ。


「アイラ、全部出たかな?」

「はい。スキルは『震天動地』『水流操作Lv1』『風魔法Lv3』『水魔法Lv4』『土魔法Lv4』『魔道の叡智』『魔力回復Lv2』。アイテムはオロチの皮、オロチの霊丹、ラミアの髪、ラミアの抜け殻、金の宝箱。最後に『大魔石』『特大魔石』です」

「うん、ちゃんと全部出てくれたようで何よりだ」

「それで、どうするー?」

「あいつの動きは覚えたし、これからは出オチさせていくつもりだ。けど、ちょっと疲れたからお昼休憩にしようと思う。このまま第三層入口まで戻ろう」

「「「「はい!」」」」


 そうしてエンキで道中の雑魚を踏みつぶしつつ、40体ほど撃破したところで入口へと戻って来た。


「ご主人様、第二層には行かれますか?」

「いや、強化体の事があるから……。層移動でリセットされたら面倒だし、この場で休もう。多少狭くても、テントを置くスペースくらいはあるよね」

「はい。道のど真ん中に置けば問題ございません」


 そう言ってアイラが即時建ててくれたテントに皆で入り、テーブルを囲む。


「ではこのスキルの振り分けは如何しましょうか」

「まず『震天動地』はキープで、あと2つ集まったら『圧縮』しよう」

『ゴ』

「んで『水流操作』は……うーん、俺が覚えても使い道がないから、こっちもキープするとして。『魔力回復Lv2』だけど……アキ」

「え、あたしぃ!?」

「『スパルタモード』の修行中、一人『魔力回復』が無かったから暇そうにしてたでしょ」

「そうだけど、あたし魔法はメインでは使わないわよ。アヤネとかの方が良いんじゃ」

「確かにわたくしは魔法職ですけれど、そもそも戦う機会がありませんわ」

「そゆこと。『魔力超回復』を検証するにもLv10分必要になる訳だけど、『ラミア』をあと4匹も狩る予定は今のところないし。それに武器に付属してる武技スキルでも『魔力』は使うでしょ」

「あたしも参加したかったのは嘘じゃないけど……うー、わかったわよ。ありがたく受け取るわ」


 よし、受け取ってくれたな。

 この階層のヘビ地帯は3カ所しかないし、『ラミア』の為に居座り続けるのも……。まあ、ありっちゃありなんだが、それは強化体の後でもいいしな。


「で、魔法だけど。『風魔法Lv3』はエンリル。『水魔法Lv4』『土魔法Lv4』はアヤネが覚えてくれ」

『ポポ』

「はいですわ!」

「最後に『魔道の叡智』はマキが覚えて。そんで『圧縮』する」

「はい、お願いします」


 そうしてマキのスキルも無事に『破壊の叡智』と混ざりあい、『破魔の叡智』へと進化したのだった。

 さて、残るは『金の宝箱』だな。

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