ガチャ249回目:始まりの虹色

 さっくりと水色スライムを撃破し、その死体から煙が吹き上がるのを見守っていると、クールタイムもそこそこに中から新たなスライムが発生した。


*****

名前:緑色スライム

レベル:3

腕力:4

器用:3

頑丈:4

俊敏:4

魔力:0

知力:0

運:なし


装備:なし

スキル:なし

ドロップ:なし

魔石:極小

*****


「ずんだ餅みたいですわ」

「さっきからステータスが、1ずつ増えてるわね」

「この成長速度はまるで俺みたいだな」


 2つのカメラで30秒ほど映して、切り捨てる。すると再び煙が巻き起こり、今度は血のように赤いスライムが誕生した。


*****

名前:赤色スライム

レベル:4

腕力:5

器用:4

頑丈:5

俊敏:5

魔力:0

知力:0

運:なし


装備:なし

スキル:なし

ドロップ:なし

魔石:極小

*****


「ここまで真っ赤ですと、綺麗ですね」

「りんご飴みたいですわ~」

「危険な色ですがほぼ無害なモンスターというのも、珍しいものです」


 またも切り捨て、煙から紫のスライムが発生。


*****

名前:紫色スライム

レベル:5

腕力:6

器用:5

頑丈:6

俊敏:6

魔力:0

知力:0

運:なし


装備:なし

スキル:なし

ドロップ:なし

魔石:極小

*****


「紫芋クッキー……?」

「昔はこれを拝むのでさえ、月に1、2回あれば良い方だったんだが……」

「そんなに……。しかも得られる物が『極小魔石』だけだったなんて、改めてほんと凄いわ」

「不屈の精神ですね」

「どっちかというと、意地になってただけかも」

「意地と執念で数年こもれるだけで十分よ」


 またも切り捨て、煙から純白のスライムが発生。


*****

名前:白色スライム

レベル:10

腕力:12

器用:10

頑丈:12

俊敏:12

魔力:0

知力:0

運:なし


装備:なし

スキル:なし

ドロップ:なし

魔石:極小

*****


「あ、ここでステータスちょっと伸びるのね。ほんのちょっとだけど」

「こいつが初めて出たときは、俺のLvは20くらいだったかな。全ステータスオール20だったから、苦戦はしなかったけど……。あまりに真っ白で初めて見たときは感動したな」

「20か。それって確か、1年とちょっとが過ぎた頃よね」

「そうだねー」

「ううっ。だ、だんなざま~」

「うおっ」


 アヤネが涙声で、マキが無言で飛びついて来た。


「どうしたのさ。……もしかして、代わりに泣いてくれてるのか?」

「うぅー……!」

「ぐすっ」

「ありがとうな。……アキ、アイラ。悪いけどカメラ役、変わってくれる?」

「おっけ。ほらマキ、顔を上げなさい」

「お嬢様、失礼します」


 彼女達を宥めつつ、エンキに掴まれてプルプルしているだけの白色スライムを切り捨てた。そしてまた煙が上がる。


*****

名前:黒色スライム

レベル:15

腕力:18

器用:15

頑丈:18

俊敏:18

魔力:0

知力:0

運:なし


装備:なし

スキル:なし

ドロップ:なし

魔石:極小

*****


「うわぁ、今度は墨汁みたいに真っ黒ね」

「結局こいつも、数回しか見てないんだよなぁ。そう思うと、ここから虹にすぐ変化してくれたのはラッキーだった」

「ぐすっ。なんだか、黒胡麻団子みたいですわ」

「ふふ……。アヤネちゃん食べ物ばっかりだね」

「はうぅ」


 こうしてまた、この黒スライムを倒すことになるとはな。そして煙となり、中からは虹色の……始まりとなったスライムが現れた。

 

*****

名前:虹色スライム

レベル:20

腕力:25

器用:25

頑丈:25

俊敏:25

魔力:500

知力:1000

運:なし


装備:なし

スキル:なし

ドロップ:なし

魔石:極小

*****


 『虹色スライム』。俺が3年の歳月をかけまみえた、記念すべき相手であり、始まりのレアモンスター。レア順で言えば『レアⅦ』。思い出深い敵との再会に言葉も出ない。


「綺麗……」

「神秘的ですわ」

「こんなモンスターがいたのね」

「『幻想ファンタズマ』級のスキルを落とす風格、確かにございますね」


 確かに綺麗だ。あの時はじっくり見れなかったが、改めて見ると……こいつ大人しいな?

 そういえば、『水色スライム』からずっと、こいつら湧いた場所からその場から動いていない気がする。エンキに掴まれていた時もプルプルしてるだけで、暴れてすらいなかったし……。

 今までは逃げ出さないようすぐに倒そうとしてきたが、冷静に考えれば、敵対すらしていないのかもしれないのか。


 スキルも持ってないようだし、襲ってくる気配もない。これ以上倒す意味が無いのなら、無理に戦う必要もないのか? そんな事を考えていると、『虹色スライム』はプルプル震えた。


『プルルルッ』

「……なんだか可愛く見えてきたな」


 ツンツンつついてみるが、柔らかい弾力が指を弾く。

 別に触れても痛くはないし、ここのボスの子分のように酸で溶けるわけでも無い。まったくの無害な奴だった。


「ちょ、ちょっとショウタ君? 流石に素手で触るのは危ないわよ」

「そうです、無茶しないでくださいっ」

「いやー、なんかイケる気がして。それに……」


 直接触れたからか、とある可能性が頭をよぎった。

 試してみる価値は……あるか?


 そーっと手を伸ばして、今度は両手で持ち上げる。


『プルルッ』

「やっぱり無害……。攻撃の意思が感じられないな」

「ええ? モンスターなんでしょ?」

「それはもしかして、ショウタさんがここの鍵を持っているからとか、『レベルガチャ』を所持しているからではないですか?」

「いやー……。それにしては、皆の事も襲わないじゃん?」

「わたくし達は、旦那様の婚約者ですからっ」

「そこは、モンスター側からすれば知ったこっちゃないと思うんだけど」

「むぅ、しょんぼりですわ」

「しかしどうするのです。無害とはいえモンスター。スタンピードでも無い限り、外へと連れ帰る事は出来ませんよ」

「うん。そうなんだけどさ……」


 出来るのか?

 いやでも、思い立ったが吉日というし、試して損する事はない。まあ、失敗してもこんなことを試す時点で、愛着が湧いてしまって倒せないかもしれないんだが……。


「『魔石操作』」

「えっ?」

「ショウタ君、もしかして……!」


 俺は『虹色スライム』の、目に見えないはずの魔石に向かって、魔力を送ってみる事にした。

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