ガチャ248回目:スライム調査

「ああ、そうだダンジョンコア。『ヒュージースライム』シリーズの湧かせ方を教えてくれるか?」

『不可。管理者様のレベルが足りません』

「む」


 ここに入場するには1度そいつを湧かせる必要があるから、聞けば教えてくれると思ったのに……。ケチ臭いな。


「あれは、ダンジョンにしばらく誰も入らなければ勝手に出現するのか?」

『否定。当ダンジョンで自動出現が設定されているのはスライムのみです』


 そこは答えてくれるのか。となると、他の質問も聞き方次第で答えてくれるかもしれないのか……?

 とにかく、今の答えで分かった事は、アレは自動では出現しないということ。出現させるには故意になにかを行う必要がある、と。そして前回行ったのは、アイラが禁制品を使い洞窟内のモンスターを一斉にこちらへと呼び寄せたくらいだ。

 となれば考えられるのは……。


「足の遅いあいつらが、通路に詰まって合体した……。ということか」


 よし、俺から聞きたいことは大体聞けた。あとはアイラにもらったメモにある事を聞いて、ここから退出するとしよう。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「ただいまー」

「「「「おかえりなさい!」」」」

『ゴ!』

『ポポ!』


 帰還した俺を皆が出迎えてくれる。


「えーっと、今回は何分くらい経過した?」

「また30分ほどですね」

「そっか。やっぱ時間の流れが違うのか、それとも移動で時間がかかるだけなのか……。まあ何でも良いか。とりあえず、聞いておきたいことは聞けたよ」

「それは重畳でございました。メモの方は……」

「全スカ。権限不足だって」

「あら、残念ね」


 渡されたメモには、彼女達が考えたダンジョンコアに聞いておきたい内容をまとめたものだった。そのほとんどが、ダンジョンのルーツや仕組みを解明するためのものだったが、やはりというか鍵1つでは権限が足りないらしい。

 まあそこは、今後も焦らず気軽にやって行こうと思う。別に今日明日で世界が滅ぶわけでも無いしな。


 ただまあ、あと追加で10年も経てば、ダンジョンの数も2倍になって、人類の手が回らなくなる可能性が高くなるわけだが。そうなる前には、なんとか解明したいところではあるよな。


「アイラ、前回のお香はまだあるよね」

「はい、ございます」

「ヒュージーシリーズの出現条件だが、多分だけど分かった」


 俺は予測した内容を皆に伝えた。


「つまり、狭い通路にスライムが押し合いになって、くっついたってこと?」

「あくまで予想だけどね。ただ、ダンジョンコアはスライムしか通常出現しないということだけは明確に教えてくれた。なら、誰も来ないダンジョンでアレが出現したのは、それしか考えられないだろ」

「そうですね。今までショウタさんが出会わなかったのも、湧きすぎる前に全て討伐して回っていたから。そう考えれば辻褄が合いますね」

「そんで、どうするのー?」

「まずは通常の虹スライムを拝もうと思う。それとアヤネ、残念だけど『レベルガチャ』は再出現はしないらしい。『幻想ファンタズマ』ランクは、世界に1つだけしか存在できないんだってさ」

「まあ、そうなんですのね……」

「残念でしたね」

「素直に100レベル捧げまくる必要がありそうね」


 皆が残念そうにする中、アイラだけは今の話を別の視点から考えていた。


「……ご主人様、今の話が確かだとするなら」

「ああ、わかってる。今後も『レベルガチャ』の話は誰にも言えそうにない」

「修行をしたばかりですが、必要とあらばいくらでもお付き合いいたします」

「うん、よろしく頼む」


 このスキルは、世界の在り方を変えるスキルだ。

 殺してでも奪い取る。なんて考えの輩が現れるかもしれないし

、お口にチャックは必須だ。それに加えてこの異常なステータスそのものがバレれば、情報通な奴らにはそこから勘付かれる可能性だってある。俺が直接狙われるだけならまだしも、彼女達に手を出されたらたまったもんじゃない。

 ……やっぱり、俺の成長も必須だけど、彼女達のレベルアップも最重要項目だな。


「それじゃ、始めようか」


 俺はマップを起動してスライムの状態を確認した。

 スキルが成長したおかげで、映ってる範囲のモンスターは全てただのスライムであることが確認できる。その上、ある程度のサーチ機能もある為、数も自動で数えてくれた。


「奥の広場までに続く道でさえ、スライムの数は300以上いるなぁ」

「うひゃー」


 けど、あいつらは自主的に動き回ることはほとんどしないから、自然にヒュージー化することはないんだろう。


「あまり奥に行き過ぎないようにしつつ、まずは100体狩ろう」

「「「「はいっ!」」」」


 そうしてゆっくりと進みながら、そこかしこに溢れていたスライムを切り捨てていった。


「よし、これで100」


 煙が集まり、中から水色のスライムが現れる。


「ああ、懐かしい。ある意味で、こいつが現れた事が最初だったんだよな……」


*****

名前:水色スライム

レベル:2

腕力:3

器用:2

頑丈:3

俊敏:3

魔力:0

知力:0

運:なし


装備:なし

スキル:なし

ドロップ:なし

魔石:極小

*****


 そんでもって、レアにも関わらずこの弱さ。やっぱスライムはこうでなくっちゃな。

 彼女達も最初こそレアモンスターということもあり警戒していたものの、あまりの貧弱なスライムのステータスを見て、安心したらしい。まるで無害な小動物を見守る様に、皆で囲み始めた。


「うわ、これが例の……」

「すっごく弱いですね」

「ドロップもなにもないレアモンスターなんて、始めて見ましたわ」

「記録によれば、宝条院家の調査隊も、このスライムまでは確認できていたそうです。ですが、何も得られる物が無かった為撤退したのだとか」

「そうなんだ?」

「初耳ですわ!」

「さすがサクヤさん、抜かりないですね」

「でも彼らは、諦めの悪い誰かさんと違って、その先には出会えずに引き上げていったんでしょうね」

「そうなるかと」


 こんなスライムの攻撃じゃ、今の俺達じゃ痛くもなんともないからな。皆至近距離で眺めてる。

 スライムはただその場でプルプルと震えていた。


「あー、もう倒しても良いかな」

「それよりショウタ君。ほんとにこのスライム達、カメラで記録しちゃって良いの? 映像で残すと色々と不味くない?」

「俺としては記念に残しておきたかったんだけど……ダメかな?」

「記念、ですか……」

「他所に流さないのであれば、問題ないのではありませんこと?」

「まあ、そうね。心配しすぎると何もできなくなるもんね」

「ご主人様が自ら望まれる事自体稀ですし、叶えて差し上げても良いかと」

「そうですね。では引き続きカメラを回しますね」

「皆、ありがと」


 『幻想ファンタズマ』の希少性と危険性は理解したけど、そればかり気にしていては息苦しいからな。ほどほどに気を付けていけばいいだろ。

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