ガチャ245回目:お許しを得た
協会入口でランクアップのバッジを受け取った俺は、その場で表彰のようなものまでしてもらい、その後はいつもの会議室へと通してもらった。
そして俺が席に着くと、彼女達はいつものポジションに陣取る。アキとマキは両隣で、アヤネは膝の上。アイラは背後で肩揉みだ。ちなみにエンキとエンリルは机の上でお座りしている。
「あぁ……。なんか気が抜けて、このまま寝そう……」
「旦那様、お疲れですの?」
「ご主人様、肩が凝っていますね」
「ショウタさんは初めての遠征だったんです。今日は帰ったらゆっくり休みましょう」
「何言ってるのさ、俺がダンジョンでそこまで疲弊するわけないでしょ。こうなったのは主に、昨晩のアレが原因だと思う……」
「「!」」
俺の両隣がビクッとした。
「あれは確かに私どもにも落ち度はありましたが、MAXまで取得したのはご主人様の意志ではありませんか」
「いや、逆にMAXのおかげでこの程度で済んでる気さえするんだけど。それに俺、実は取得する際の前後の記憶が曖昧なんだよね……」
俺の記憶では『精力増強Lv1』を順々に5個取得したところまでは覚えてる。でも、翌朝気付いたらMAXになっていたし、スキルは本人の同意なしに勝手に取得はできないからな。
ううん、我を失った俺が勝手に取得した以外考えられないか……。
「そうです。私たちのことが信用できませんか」
「アイラは発言が信用ならないけど」
「まあ。なんということでしょう」
なんて事を言いつつ、背後から聞こえてくるアイラの声は笑っているように感じた。きっと今もニヤニヤしてることだろう。振り返るまでもないな。
「ですがお疲れでも問題ないではありませんか。今日からはしばらく休みなのです」
「そうそう。また旅行に行くって約束もしてくれたしね。明日からまた、しばらく何泊かしましょ!」
「またあの道場にお世話になるのでしたら、以前の旅館が良さそうですね」
「賛成ですわ! あそこの部屋に備え付けの露天風呂は、格別でしたの。とっても気持ち良かったのですわ~」
アヤネがうっとりとしている。
「確かに、あれはいいものだった」
「あたし的には、あそこだけじゃなく色んなところに足を伸ばしたいところなんだけどね。協会としても専属としても、お勧めできるところはたくさんあるし」
「そうだね姉さん。でも、今回はショウタさんの修行も兼ねてだもの。となればあの旅館が最適。それに、私としては多少の融通は利かせてくれるあの旅館は、ありがたいというか……」
「んふふ、マキったら。気が早いわよ」
そうして皆で明日以降の予定に思いを馳せていると、支部長が部屋に入って来た。
「あら、また旅行? そんなに頻繁に行けるんて、羨ましい限りね。私なんて、ここしばらく忙し過ぎて大きな休みが取れてないわよ」
「あ、お母さん。お疲れ様」
「えっと……。それって俺のせいですよね?」
「そうね。でも、気にしなくて良いわ。アマチ君のおかげで、このダンジョンはいつになく大盛況だし、あの動画公開から間もないにもかかわらずスキルオーブの持ち帰り件数も増えて来てる。これは間違いなく良い事なのよ。それに、この調子なら1年もしない内に孫の顔が拝めそうだものね? ふふっ」
「お、お母さん!?」
「な、な、なにを言って……」
「あら、そのくらいお見通しよ? でも、ダンジョン内ではほどほどにしなさいね。いくら防音の結界装置を作動させていたとしても、うちの子達から、お盛んだったと報告が来るくらいだし」
「「えっ!?」」
そんな報告が行ってたのか。
「ではやはり、テントではなく持ち運び可能な『家』を購入する必要がありますね」
「あれ、今のってそういう問題だったか?」
「はい、そういう問題でした」
アイラが自信満々な様子で言ってのける。まあいいか。
俺の狩りに影響がなくて、快適なダンジョンライフが送れるのなら、生活水準の向上関連は彼女達に一任しようって決めてるし。
「んじゃ、任せる」
「はい、任されました」
「任されましたわ!」
さてと、そうこうしている間も支部長は姉妹を揶揄い続けていた。二人とも顔を真っ赤にさせてプルプルしてるし、そろそろ助け舟を出すか。
「支部長、もうその辺にしてやってください。報告に入りましょう」
「あら、確かにそうね。じゃあまずはレアモンスターのデータから見せて貰える?」
すぐに切り替えた支部長に、マキとアヤネの2視点で撮影し、編集した動画を見せる。そして各レアモンスターのステータスも一緒にだ。
『コマンダーゴブリン』、『カイザーゴブリン』、『ゴブリンヒーロー・ガダガ』、『ハイ・オーク』、『オークキング』。そして2種族の強化体に『プリーストゴブリン』、『ダークナイトゴブリン』のおまけつきだ。
「……この二泊三日で、第四層の完全制覇達成。並びに『レアⅢ』の発見と討伐。もう本当に、成長も討伐も、規格外なスピードだわ」
「まあ、レアモンスターの出現ポイントが少なくて、階層内の移動も容易く、かつ厄介な行動をしてこないことが前提ですけどね。未だに『ラミア』と、正面切って戦える自信はないですし」
「状態異常を絡めてくる相手はそれだけ厄介という事よ。でも、安心したわ。これだけの強敵を倒しても、増長せずにしっかり自分の出来る範囲を把握してるのね。面倒な相手と戦うときは慎重に、自分の腕を磨いてから挑むのよ」
「はい。また彼女達に心配させたくないですし、失望もされたくありませんから」
「ふふっ。良い子ね」
支部長はご機嫌な様子だ。
……あ、そうだ。
「あの、支部長」
「あら、何かしら。改まって」
「えと……。義母さんって呼んだ方が良いですか?」
「……え!?」
そう呼ばれるのは想定していなかったのか、支部長が固まった。
まあ今まで、呼ぶ機会もあったのに俺が頑なに支部長呼びして来たからな。予想外なのも仕方がないかもしれない。
「いやー。サクヤさんをサクヤお義母さんとお呼びしてる以上、ミキ支部長もそう呼ぶべきかと思ったんですけど……。駄目でしたか?」
「だ、駄目じゃないけど……」
しどろもどろになる支部長を見て、姉妹は反撃の時が来たと言わんばかりに顔を見合わせた。
「お母さん、ショウタさんとは今後籍を入れる予定なんですし、問題ありませんよね?」
「も、問題はないけど……」
「あはは、お母さん照れてるー」
「て、照れてません!」
「あぁ、この反応はアキそっくりだな」
「え、あたし!?」
「ふふっ、確かにそうですわね」
「そっくりでございます」
そうして支部長……もとい、義母さんからは、こういった人前でない場面であれば呼ぶことを許可してもらったのだった。しっかし、いつぞやにミキ支部長はアキ成分が強い気がすると評したことがあったが、この反応の仕方。……あながち間違いでは無かったな。
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