ガチャ244回目:凱旋した

『ポポ!』

『ゴ!』


 彼らが声を上げるとともにハリケーンは霧散。吹き上げられた大量の砂や岩石は、エンキの操作により纏めて一カ所に集められ、ドドドと砂地に落ちていった。そしてその中から何か小さなものが、こちらに向かって飛んで来る。


『ボトボトボトッ』


 それはどうやら今回の戦い、もとい蹂躙で得られたアイテム達の様で、『ゴーレムコア』『小魔石』100個に、『ストーンゴーレム』のドロップ品。全てが揃っていた。


「あんな嵐の中、ドロップアイテムを傷つけずに別途確保してたのか。凄いな」

『ポポッ!』


 エンリルは誇らしげに鳴く。その後に『ジャイアントロックゴーレム』が出現するが、2人は遠距離からまたハリケーンを生み出しそれだけで倒してしまった。無慈悲。


 【レベルアップ】

 【レベルが52から94に上昇しました】


 うーん、あと7足りず。

 やっぱりレベル100がゴールともなると、低レベルボーナスを加味してもこいつらじゃ物足りないか。


 彼らの能力で出来る事、出来ない事。そして『レベルガチャ』のエネルギー問題についてあれこれと考えていると2人がドロップ品を持って戻ってきた。しかし、見るからに元気がない。


『ゴゴ~……』

『ポポ……』

「ん、どうした?」

「ショウタさん、もしかすると『魔力』切れかもしれません」

「きっとそうですわ。あんな大規模な力を行使したんですもの。空っぽになってもおかしくありませんわ」


 確かに。

 彼らの『魔力』は等しく1600しかない。一般的に考えれば十分多いと思うが、あんな魔法よりも魔法っぽい技を使って、疲労しないわけが無いよな。


「よし、2人ともおいで。補充してやる」

『ゴゴー』

『ポポ~』


 エンキは直接コアに触れて、エンリルはお腹の辺りに手を添えて『魔力』を送る。『充電』の効果だろうか? 2人同時であることにもかかわらず、いつもよりも少ない『魔力』で彼らに行き渡っている気がする。自分の『魔力』の残数は目に見える訳ではないので、実際どの程度軽減出来ているのかは分からないが、扱いが上手くなったんだろうか。

 まあ、今の俺は『魔力』が12000ほどあるので、3000前後の『魔力』を失っても大した痛手にはならないんだが。


「あんな大規模な攻撃だったし、燃費が良い訳ないわよね」

「そうですね。それに広い空間が無ければ十分な効果は見込めないと思いますし、砂地でかつ広かったからこそ行えた合作魔法なのでしょう。とても強いですが、第三層のような木が生い茂っているような場所では使えないかと」

「あそこの樹海は、風通しがよくありませんものね」

「でも広い空間さえあれば、『風魔法』がなくてもエンリルは活躍できそうですね」


 先ほどのハリケーンの使い道について、議論を交わす。俺はそれに耳を傾けながら、彼らのコアに『魔力』をフル充電した。


「よし、補充終わり。じゃあちょっと無駄になるが『砂塵操作Lv3』をエンキに渡すぞ」

『ゴゴ!』


 『砂塵操作』は無事にエンキのコアへと吸収され、確認してみたところしっかりと『砂塵操作LvMAX』になっていた。そして俺は、そのまま試してみたかった事をやってみることにした。


「エンキ、エンリル。そのまま動かないでくれな」

『ゴ?』

『ポポ』

「『圧縮Ⅱ』」


【該当のスキルを確認中……】


【該当のスキルを確認】

【該当のスキルを圧縮中……】


【該当のスキルを圧縮成功】

【URスキル『砂塵操作LvMAX』を圧縮。SURスキル『砂鉄操作Lv1』に圧縮成功しました】


【該当のスキルを圧縮成功】

【URスキル『風塵操作LvMAX』を圧縮。SURスキル『風雷操作Lv1』に圧縮成功しました】


「おお……!」


 何かしら変化があればと思っていたけど、まさか本当に進化してくれるとは。これはますます、彼らの活躍に目が離せないな。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 俺としてはそのまま進化したスキルの使い道に関して検証をしたいところだったのだが、彼女達からストップが掛かった。

 どうやら、ゴブリンの特殊ボスに関してミキ支部長にきちんと報告しないといけないのだとか。その為に、ある程度の推定帰還時刻は連絡済みであり、あまり足踏みしている時間はないそうだった。


「私からやり残しを確認したのに、ごめんなさい」

「いや、構わないよ。俺としてもエンリルはダンジョン内で生み出したかったし、エンキのスキルレベル8も中途半端で何とかしたかったんだ。思い出してくれて助かったよ」


 まあ、本来は砂の回収だけが目的だったし、そこに『レア』と『レアⅡ』を倒す時間を貰ったんだ。それだけでも十分時間を貰ったと考えるべきだろう。


 そうして小型になってもらったエンキを腕に、エンリルを肩に乗せて、俺達は小走りでダンジョンを脱出した。そして協会までの道すがら、妙に視線が集まる事を気にしつつも扉を開けた。するとそこには、何人もの協会員が待ち構えていて……。


「おかえりなさい、よく戻ってきてくれました」

「え、あ、支部長……。すみません。ちょっと遅れましたよね」


 そう言うと、支部長はふっと表情を緩める。

 他の冒険者達は俺達を遠巻きに眺めているし、一体何が始まるんだろうか。


「構わないわ。彼女達からも1時間前後ズレ込む可能性があると聞いていましたから」


 おっと、俺の思いつきによる寄り道は想定内だったらしい。

 けどなんだろう、この変な感じは。ムズムズする。


「今回アマチ君が成し遂げてくれた一件は、ダンジョン発生以降、スキルオーブの発見に次ぐ大発見と言っても過言ではないでしょう。現に、二日前から『初心者ダンジョン』を訪れる冒険者の数は急増し、ゴブリンの出現しない第三層、第五層を除く全ての層では例年以上の賑わいを見せています。事実、通達のあったメッセージの通り敵は弱くなり、ドロップ率も上昇しているわ。そして例の話を、日本第一エリア協会長、及び第一エリア所属の全支部長に通したところ、満場一致で可決となりました」

「……例の、話?」

「アマチさん。人跡未踏の荒野を恐れず突き進み、道を切り開く熱意に敬意を表し……貴方を本日付けで『A+』ランクの冒険者へと認定します!」

『おおおお!!!』


 支部長から、金色に輝く『A+』ランクのバッジを受け取る。

 どうやら、ランクアップしたらしい。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


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