ガチャ240回目:スキルの振り返り
本命の指揮官と厄介な支援役が倒れたことで、残ったゴブリンは前衛の『ブラックナイトゴブリン』のみ。あとは気楽な物で、アキとマキがタイマンで倒す様を観戦した。
二人は武技スキルを使うことなく、持ち前の武器の技術と膂力だけで圧倒してみせた。その動きは、スキルやステータス的には俺よりも低いはずなのに、積み重ねてきた経験からか、俺では到底真似出来ない。そんな感想を抱かせるのだった。
そうして討伐された煙は一箇所へと集まり、ごとりと1つの宝箱へと姿を変えた。
名前:525-4
説明:525ダンジョン第四層配置の??? 対応する虚像を全て捧げよ
煙が集まったということは、エンキの方も終わっていたのか。
振り向くと、彼はちょっと離れたところで体育座りしていた。
「エンキ、どうしたー?」
『ゴゴ……』
「すんすん……。ああ、なるほど。どうやら『悪臭』効果をモロに受けてしまって近付けないようですね。ご主人様、水をかけてあげましょう」
「そうだな。ビッグウォーターボール……うおっ!?」
予想だにしないほど巨大な水の塊が発生した。『水の刻印』取得した直後でさえ、ちょっと大きくなったかなくらいだったのに。直径3メートル、下手するとそれ以上あるんじゃないか。
「おっきいですわー!」
「1つになった事で、刻印全部の効果が強化されたのかしら」
ひとまず、水だから問題ないと判断して、エンキの頭上で破壊する。水風船が破裂したかのように膨大な水がエンキを飲み込むが、当の本人は気持ち良さげだ。お手軽に滝行が行えそうな水量だな……。
ついでにあと2、3発入れとくか。
『ゴゴ~』
エンキに水浴びをさせつつ、俺は宝箱を開き、鍵を入手した。これで残るはあと2つ。
魔の第三層と、未だ踏み込んでいない第五層だ。
「それじゃ、帰るか」
「「「「はい!」」」」
「エンキもこっちに来い」
『ゴゴ!』
そうして謎のエリアは、前回同様直進しているうちに終わりを迎え、俺達は元の第四層へと戻っていたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
それは夕食前、テントの外からはマキとアイラの楽しそうな声が聞こえていた時の事。
俺は今夜訪れるであろう襲撃を想像し、戦々恐々としながら休んでいると、アヤネが飛び乗って甘えて来た。
「旦那様~。えへへ」
「ん、もうエネルギー切れか?」
「はい。ぎゅってしてくださいまし」
昼食の時は大人しいが、夕食時になるとアヤネはいつも甘えにやって来る。彼女に尻尾があれば、ちぎれるほどブンブン振ってることだろう。魔法やアイテムなんかでそういうの生やせないかな。絶対似合うと思うんだけど。
アヤネはごろごろと、器用に喉を鳴らしている。
仕方ない。こうなったアヤネは食事ができるまでこの調子だし、何かして時間をつぶそう。エンキは料理組と一緒に外にいるし、アキは隣でゴロゴロしてたらいつの間にか寝落ちしてる。俺もこの場からは動けない以上、端末を弄るかスキルを見直すかくらいだけど……。
「うーん」
アヤネを撫でながら思案する。
そういえばガチャが使えなくなったことに意識が向きすぎていたけど、エネルギー切れ直前という事もあってか、色々とスキルがパワーアップしたんだよな。改めてそのスキル達を見直してみるとするか。
『暗殺の極意』に関しては『狩人の極意』と似たようなものだろうから、深く考えるのは止めておこう。
『万象の刻印』は、先程の魔法を見る限り全てが圧縮されたことで威力が更に倍増していた。確認するまでもなく、『元素魔法』も『外典魔法』も『空間魔法』も。余すところなく全てパワーアップしているだろう。
『空間魔法』もレベルは上がったが、こちらは透明なパネルの同時設置数が2枚から4枚に増えただけで、新たに使える魔法は何もないようだった。『空間魔法』なんて大それたネーミングなのに、今のところは微妙な効果しかないよな。でも、刻印の効果で強度は増しているだろうし、使い勝手は上がったかもしれないな。
『騎乗Ⅱ』はエンキに跨ってみたところ、安定感が増した気がするのと、乗っている間エンキが若干パワーアップする効果があった。乗り物自体の強化が行えるのは良い事だが、エンキに乗ったまま戦う訳にもいかないし、何とも言えないな。でもエンキは楽しそうだったし、たまに使ってあげようと思う。
『重ね撃ち』は、4本同時に発射する時の安定感が増した気がする。威力ももしかしたら増えているかもしれないが、まだ試してない。
『知覚強化Ⅱ』はそれぞれの感覚が更に鋭敏になった気がする。
『二刀流Ⅲ』は純粋にキレが増した。
んで、肝心の『自動マッピングⅣ』と『スキル圧縮Ⅱ』だが……。
まずは『自動マッピング』だな。これはまず、大きな変化があった。マップに映るモンスターは、今まですべて赤点。レアモンスターは赤丸で大きめに表示されていた。だが今回の強化で、モンスターごとに個別の色で表示されるようになっていた。しかも色は自分で決められるし、好きなタイミングで変更もできる。今はわかりやすくゴブリンは赤。オークは橙で表示しているが……。第四層の状況が一目瞭然だった。
まあ、今は流石にオフにしているが。なぜなら、赤や橙の点に白点……つまり人間が囲まれてるような状況を見つけてしまったら、落ち着いていられないからな。こんな同階層の監視能力を手にしたとして、他人のピンチに毎回駆り出していたら心休まる日は訪れない。
だから冒険中以外は、このマップ機能は使わない事に決めたのだった。
そして最後に『スキル圧縮Ⅱ』。
このスキルが強化されたことにより、今まで出来なかった『圧縮』の対象が増え、幅が広がったのは大きい。だが、『Ⅱ』に強化したことで増えた能力は、
【スキル圧縮を使用しますか?】
『圧縮』をイメージしたからだろうか。いつものようにウィンドウが目の前に表示された。
「いやいや、『圧縮』はしな――」
……ん?
確かに、『圧縮』はイメージすると、ウィンドウが出てくる。それは今までもそうだった。
だが……。俺は今、
自分のスキルではない。今俺は、他の事を考えていたからだ。
スキルオーブでもない。俺の手の中にはスキルオーブではなく、アヤネしかいないのだ。
アヤネ、しか?
「……旦那様?」
不意に、アヤネと目が合った。
彼女の吸い込まれそうな瞳を見ていると、疑問は確信へと変わって行く。
「なあ、アヤネ」
「何でも言ってくださいまし」
「まだ何も言ってないんだが……」
「旦那様が何かなさろうとしていることはわかりますわ」
「でもそれは、危険かもしれないんだぞ?」
まあ俺は以前に、それを不用意に試したことはあったが。
「わたくしは、旦那様の『直感』を信じますわ」
アヤネはそう言ってのけた。もしかするとよくない方向に行くかもしれないし、失敗するかもしれない。だけど彼女は、自信満々に言ってのけた。
この子は本当に、初めて出会った時から変わらないな。
「わかった。……今からアヤネに、『圧縮』を使う」
【スキル圧縮を使用しますか?】
「使用する」
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