ガチャ239回目:お説教とボス戦
※『スキル圧縮』他人を圧縮の対象に出来ないという設定を書いたつもりになってたけど記載漏れしていたので、133話に追記しました
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そうして改めて、この先に待つボス戦についての作戦を固め直した後、俺達は奥へと進んだ。
以前通った時も感じたことだが、この空間は本当に何もない草原だな。第四層を象徴する集落のようなものは何一つとしてない。
しかし、鍵の入手方法はダンジョンや階層によって全然異なる様相をしているな。
この『初心者ダンジョン』だけで見ても2種類ある。まず第一層での鍵は宝箱。しかもレアモンスターの代わりとして出てきた。そして第二層と第四層ではこの異空間。第三層は中央の山が怪しいけど、場合によってはここと同じ可能性もあるし、第一層のように特殊な出現方法の可能性だってある。
気の早いことに第三層の展開へと思いを馳せていると、とあることを思い出した。
「そういえば、この『初心者ダンジョン』。今更な話なんだけど、何階層まであるの?」
「「は?」」
「「え?」」
その言葉に、全員が言葉を失った。
……あれ?
「……はぁーっ!? ショウタ君、あんたは! ほんっとに! もう!! 常識外れなことを言うたびに、私が責められるのよ。分かってる!?」
「あ、はい。ごめんなさい……」
めっちゃ怒られた。ここがダンジョンじゃなかったら、正座させられる勢いだ。
「せ、先輩。伝えていなかったんですの!?」
「いや、うん。……言ってなかったような気がするけど、伝える以前の問題でしょうが!」
「……確かにそうですわね」
アヤネも納得しちゃった。
あれ、もしかして本当にそのレベルの話をしてる?
「ご主人様は本当に、目先の事にしか興味がないのですね。恐れ入ります」
アイラの表情筋を見分けるのに、初見では苦労したけど、今ならハッキリとわかる。今お前は、笑うのを我慢してるだろ。
「あのですね、ショウタさん。ダンジョンは何階層まであるか、もしくは何階層まで確認・攻略出来ているかは、一応どの協会でも受付近くの掲示板に大きく書かれていますし、端末で閲覧できる協会のトップページにもあるんですよ」
「へ、へぇー……」
「まるで興味がなかった。初めて知った。そんな顔してるわ」
「あはは」
アキからジト目が飛んでくる。
「いやだって、せっかくの未知のダンジョンなんだから、ネタバレは喰らいたくないじゃん? そういう情報源を目に入れちゃうと、知りたくない余計な情報まで入って来るでしょ。それに、本当に危険で必要な情報は、アキとマキの方から事前に確認しに来てくれる。2人からの情報なら信頼できるし、ピンポイントに教えてくれるから……」
「つまり、新鮮な気持ちが薄れるから、そういうのはあたし達に丸投げして、今までなるべく意識して逸らしてきたって言いたいわけ?」
「……はい、そうです」
結局正座させられた俺は、頷くしか無かった。
「呆れた。ショウタ君、楽しむためにそこまで徹底してたなんて」
「それならショウタさん。お母さんと最初に出会った時、このダンジョンのドロップリストを端末にインストールされてましたよね。あれはどうしたんですか?」
「二階層より先は見たくなかったから消しちゃった」
「「……はぁ」」
盛大な溜息を頂戴した。
でもさ、せっかく自分の足で開拓していくんだから、そういう情報は自分で探っておきたいじゃん。掲示板やトップページはあること自体知らなかったのは注意力散漫だとしても、渡されたデータの削除は仕方ないというか。
「どうりで、既存の情報すら初めて知るようなリアクションすると思ったのよ」
「そうですね。私もそこで違和感に気付くべきでした」
「蛇のレアモンスターに対する危機感の無さも、そこにあったわけね」
「あ、蛇は危険だってわかったから、次からは警戒するよ」
「お黙りなさい」
「ハイ……」
「でもでも、旦那様が知らないことを教える瞬間というのは、とっても幸せな気持ちになれるのですわ」
「それはまあ……」
「そうですけど……」
おっと? アヤネが擁護に回ってくれた。
「そうですね。知識面でご主人様が頼りにして下さるのですから、必要となりそうなことは引き続き私たちが集め、ご主人様が望まれるか、もしくは危険が迫るときは引き留めてでもお伝えする。そのスタンスで良いのではありませんか?」
「「むむ……」」
風向きが変わってきたかな?
「まあ、ショウタ君ってこういう人だし……」
「そうだね、姉さん……」
「えーっと……。判決は?」
「「……はぁ」」
姉妹は顔を見合わせ、改めてこちらを見た。
「「ノット・ギルティー」」
「おお」
許された。
「んで、最初の話に戻るけど、何層あるの?」
「第五層よ。だから次で終わりなの」
「あらま」
そうだったのか。
最悪、第五層の様子を見てから第三層の攻略を考えるのも良いかもな。そうしてそのまま歩みを進めていると、正面に全員が知覚可能な煙が吹き上がっていた。
「ご主人様」
「ああ」
俺も念の為抜刀し、様子を見る。
すると一定の距離に達した瞬間、煙は6つに分かれた。そして前方に5つ、後方に1つへと分離し飛んで行く。中からは想定通り、昨日と今日とで戦った連中が顔を出した。
「エンキ!」
『ゴ!』
駆け出したエンキは後方に出現した『ハイ・オーク』にタックルをぶちかました。まずは俺たちとの距離を空けることを最優先に動いてもらう。
そしてアキとマキはそれぞれ『ブラックナイトゴブリン』を引き剥がし、アイラは『コマンダーゴブリン』に速攻を仕掛ける。アイラの目にも止まらぬ攻撃が敵を切り刻んだ。
相手も『剣術Lv5』持ちの強化体だけあって、ただやられる事無く剣を巧みに動かしているが、アイラの二刀流の速度にはまるで追いついていない。どんどんと生傷が増えているが、そこに治癒の光が降り注いだ。
『ギギ!』
『ギギャ!』
『コマンダーゴブリン』の背後に出現した『プリーストゴブリン』だ。奴らの『回復魔法』はLv2。大怪我の治療には時間を要するが、小さな傷であれば一瞬で治すことが可能だ。
連中をどうにかしなければ、長期戦は必至だ。そう思っていると、『コマンダーゴブリン』の正面にいたはずのアイラは、いつの間にか奴らの視界から消えていた。
『……ゲギャ?』
『ギャギャ?』
獲物を見失ったモンスター達は、アイラの姿を探してキョロキョロとしている。そんな中、俺の研ぎ澄まされた知覚が彼女の声を拾った。
「『
『グボッ!?』
『コマンダーゴブリン』の喉は、背後から現れたアイラの短剣によって貫かれていた。必殺の一撃により絶命し、崩れ落ち煙へと変わっていく指揮官。その姿を見て、援護すべき対象を失ったゴブリン達は怒り狂い、アイラに向けて『極光魔法』の光を放った。
『ゲゲッ!』
「ふっ」
しかしそれも彼女に難なく避けられてしまい、躍起になった彼らは続けて第二射を放とうとする。だが彼らの側面から突如として暴風が巻き起こり、彼らは訳もわからないまま煙と化すのだった。
「戦闘中によそ見は厳禁ですわっ」
アキとマキがそれぞれ『ブラックナイトゴブリン』を受け持つことで、アヤネは完全フリーとなるという作戦が、見事に刺さったらしい。事前に立てた作戦通りの結果に、思わず俺も頷いてしまうのだった。
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