ガチャ238回目:充電と圧縮
「……あれ?」
光を放っていた筐体は、みるみるうちにその輝きを失っていく。鮮やかな緑色だった筐体は、脱色するかのように薄れていき、最初の白色へと戻って行った。
そして表面の紙には、以下の内容が記載されていた。
『長らくのご愛顧、大変ありがとうございました』
『当レベルガチャは、内包していたレベルエネルギーを全て消費しました』
『再度ご利用される場合は、エネルギーの充電にご協力下さい』
『エネルギーチャージには、正面のボタンをご利用下さい』
『100レベルを1エネルギーとし、15エネルギーのチャージをお待ちしております』
『エネルギー残高 0/15』
「エネルギー切れ!?」
てかなんだよ『レベルエネルギー』って。毎回消費していたレベルとは別に、未表示のエネルギーを消耗していたって言うのか。
その張り紙の内容に、皆も驚きを隠せないでいた。
「つまり、いつぞや手にした『充電』は、この時のための布石だったと言うわけですか」
「スキルって何かしらの対価……。普通は『魔力』だけど、それらを消費することで一時的な力を得るわ。けれど『レベルガチャ』は、『レベルエネルギー』とやらを消費してスキルや成長アイテムを提供してくれていたのね」
「そして今回、今まで見えないところで内包・消費されていた『レベルエネルギー』が枯渇。チャージを求めてきた……そういう訳ですか」
皆がそれぞれの感想を漏らす中、アヤネは一人、何かを考え続けていた。
「アヤネはどう見る?」
「……あ、はい。旦那様、これって素直にエネルギーを貯める必要があるのでしょうか」
「というと?」
「今までは優先順位の兼ね合いで、旦那様は後回しにしてましたが、『レベルガチャ』を他のスキルみたいに『Ⅱ』へとグレードアップしてしまえば、『レベルエネルギー』問題も解決するのではないかと思ったのですわ」
「あー……」
その手があったか。
確かに、今の俺の『運』をもってすれば虹色スライムも簡単に呼び出せるだろう。なんせ、『運』に関してはあの時の90倍はあるんだから。
「……よし。じゃあアヤネの案を採用しようか。このまま3層のクリアを目指すのも若干不安はあったし、休暇を過ごした後に一度寄ってみようか」
「いいんですの? わたくしの思いつきですのに……」
「ああ。いつかは調べておきたいと思ってたところだし、ちょうど良い機会だ。それに、もし解決しなかったとしても、可能性を潰せればそれだけ『充電』に集中できるからな」
不安がるアヤネを抱き寄せ、頭を撫でる。
「だからそんな顔するな。もし何も変化が起きなかったとしても、俺はアヤネを責めたりしないよ」
「はいですわ、旦那様っ!」
それに、あそこのデカスライム達は経験値が美味しかったからな。
アヤネの案が駄目だったとしても、ある程度のレベルエネルギーは回収できるはずだ。
「さて、それじゃあ最後に『圧縮』するか。『圧縮』も『Ⅱ』になったことで何か変わったかもしれないし、しばらくはスキルを得るのはレアモンスターを倒すしかなさそうだしな」
【スキル圧縮を使用しますか?】
「使用する」
【該当のスキルを確認中……】
【該当のスキルを確認】
【該当のスキルを圧縮中……】
【該当のスキルを圧縮成功】
【SRスキル『体術LvMAX』『暗殺術LvMAX』を圧縮。URスキル『暗殺の極意Lv1』に圧縮成功しました】
【該当のスキルを圧縮成功】
【SURスキル『炎の刻印』『風の刻印』『土の刻印』『水の刻印』『雷の刻印』『氷の刻印』『光の刻印』『闇の刻印』『空の刻印』『天の刻印』『地の刻印』『人の刻印』『神の刻印』を圧縮。EXRスキル『万象の刻印』に圧縮成功しました。以後、該当スキルは元のランクからは出現しません】
「『暗殺の極意』に『万象の刻印』か。……前者はだいぶ前から『LvMAX』だったし、『圧縮』出来たのも『Ⅱ』になったおかげかな」
そして、いつもなら表示される【該当スキルは元のランクからは出現しません】のメッセージが、このスキルに限って無かった。ということは……。
ああ、どっちのスキルも今は余ってなかったな。どうなるか確認したい……!
「ということは、旦那様は全ての魔法の威力が強化された可能性がありますのね!」
「『万象の刻印』……。これはまた、随分と仰々しい名前が出たわね」
「8つの属性に加え、天地人。更には神まで対象としたのですから、ご主人様はあまねく全てを制覇したのでしょう。納得のスキルですね」
それにしても『EXR』か。エクストラレア、かな?
順番からして『SUR』の次なのだろうか?
「ショウタさん、どこか身体におかしな所はないですか? 不調とか、気分がすぐれないとか……」
「いや、大丈夫だよ。どうして?」
「いえ、今までは一度に沢山のスキルを取得することはありましたけど、『圧縮』で失ったのは初めてですから」
「ああ、確かに。……うん、改めて確認したけど問題ない。マキ、心配してくれてありがとう」
「いえ。私に出来ることはこのくらいですから」
また謙遜しちゃって。
アヤネの次はマキの頭を撫でつつ、俺達は出発の準備を整えるのだった。
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