ガチャ236回目:オークのトロフィー

 長距離スナイプに味を占めた俺は、そこからもレアモンスターを出オチさせていくことにした。

 2カ所目でガチャを回した後は、3カ所目に直進し、出現した『ハイ・オーク』をスナイプ。


 【レベルアップ】

 【レベルが16から49に上昇しました】


 そのまま湧いて出た『オークキング』をスナイプ。


 【レベルアップ】

 【レベルが49から89に上昇しました】


 ガチャを回して4カ所目。『ハイ・オーク』をスナイプするも、『オークキング』は出ず。


 【レベルアップ】

 【レベルが15から48に上昇しました】


 条件は整ったため、あとは強化体を湧かせる為にこの場でもう一度100体討伐するための準備を始めた。


「そういえば、今日はキャンプ地の外で他の冒険者を見てないな」

「それでしたら、今日はショウタさんがオークを中心に戦うと事前に伝えましたので、皆さん譲ってくださったそうなんです」

「そうなの? なんだか悪いな」

「気にする必要ないわ。だって今、ゴブリンのドロップが熱いんだもの。弱くなってる上にドロップ率も増えてるんだから、スキルの得られないオークにかまけてる場合じゃないわ」

「確かにそうか」


 そう考えるとオークを狩る意味って、肉以外ないもんな。

 でも昨日の冒険者達の動線を見るに、オークも普段ならそれなりに狩られてそうだった。

 となると……。


「もしかしてオーク肉って、結構割高?」

「100グラム1000円くらいはするわね」

「高っ!」


 スーパーで見るような豚肉の10倍くらいするじゃないか。

 ん? 一応オーク肉って、豚肉の扱いで良いんだよな……?


「ちなみに1回のドロップで何グラムぐらい出るのさ」

「そこがねー。個人差があるのよ。当然出ないことの方が多いんだけど、多くても50グラムとか100グラムで、肉片で落とすこともザラな訳。この辺は討伐者の『運』次第と言われてるわね」

「俺の場合は?」

「今の所確定ドロップで、最低200グラムから始まって、最大は……。アイラさん、どんなのが出てたっけ?」

「レアモンスターを含めれば5キロほどのブロック肉が出ましたね。通常個体ですと、最大1キロくらいでしょうか」

「えぇ……。どんだけ出てるの……」


 今日だけで通常オークは、俺とエンキの2人で500以上倒してるんだぞ。それが毎回最低200グラム、最大1キロの肉を落としてると考えると……。


「昨日ご主人様が巾着袋を出してくださったおかげで、無駄に腐らせずに済みそうです。これらの鞄の内部は、外界とは異なる時間が流れていますが、こちらは今までのものよりさらに高性能ですからね。今まででも、数日程度であれば新鮮なまま維持が可能でしたし、それ以上の日数を要する場合は、小型のクーラーボックスごと入れるという手段も取れました。ですが腰巾着の場合ですと、大きめのクーラーボックスも飲み込めますし、更なる長期的な探索も可能となりました」

「そうなのか……」


 俺、下手すると今日の狩りだけで、数ヶ月から1年分くらいのオーク肉を量産しちまってたんだな。


「……と、ご主人様。あのオーク共でちょうど100匹です」

「おっけ。で、どうしよっか」

「ステータスは私が覚えますので、合図したら始末してください」

「りょーかい」


 強化体は基本的に『レア』の純粋な強化バージョンだが、たまに『レアⅡ』の性能を踏襲している場合がある。最悪こっちも『悪臭』を持っている可能性がある以上、さっさと倒すべきと言うのが皆の総意だ。

 どんな能力を持っているのか、直接戦ってみたい気もするが、『悪臭』だけは二度とごめんだからな。アイラ曰く、マスクやハンカチ程度ではアイツの臭いは防げそうにないらしい。

 防護マスクレベルの装備が必要なのだとか。


 常に準備万端のアイラでさえ、流石に防護マスクまでは持参していないらしく、対処方法は即殺戦法で可決したのだった。


「もう少し鞄の空きに余裕があれば、持ってきていたのですが……」


 流石である。

 どんな場面を想定してたんだ。……毒ガスエリアとか?

 聞けば上級ダンジョンや一部の厄介なステージにはあるらしい。けど、『初心者ダンジョン』には流石に無いと判断して断念したそうだ。


 と、ここで煙が移動を開始。即座に弓を構え、矢を番える。


「『雷鳴の矢』……!」

『プギィィィ!!』


*****

名前:ハイ・オーク

レベル:84

腕力:900

器用:825

頑丈:900

俊敏:180

魔力:450

知力:75

運:なし


ブーストスキル】鉄壁Ⅲ、城壁Ⅲ、金剛体

パッシブスキル】精力増強Lv5

アーツスキル】ウォークライⅡ

マジックスキル】風塵操作Lv4

スペシャルスキル】悪臭、限界突破


装備:オークソードⅢ、オークの板金鎧Ⅱ

ドロップ:オークの特上霜降り肉、黄金の丸薬、ハイ・オークのトロフィー

魔石:特大

*****


 やはり持っていたか、『悪臭』。しかも『風塵操作』のレベルは『レアⅡ』よりも高い。

 これは発動されたら厄介――。


「……!」


 アイラが片手を上げた。合図だ。


『ズパァン!!』


 超高速の矢は、知覚出来たとしても避けることは難しい。ただでさえ、奴の『俊敏』は180しかないのだ。紫の軌跡は『ハイ・オーク』を易々と貫いた。

 貫く直前、奴から放たれる気配が増した気がした。恐らく避けられない代わりに『頑丈』系のスキルを発動させたのかもしれない。だが、結果は変わらなかった。

 『雷鳴の矢』の貫通力の方が、上だったということだろう。


 『ハイ・オーク』の強化体は、産声を上げた次の瞬間には貫かれ、煙に還り霧散した。


【ハイ・オークのトロフィーを獲得しました】


【レベルアップ】

【レベルが48から95に上昇しました】


「ふぅー……」


 残心をし、ゆっくりと弓を降ろす。

 するとメモを取り終え、アイテム回収を済ませたアイラがまたもや肉を抱えてやって来た。


「ご主人様、流石でございました」

「肉は……無事そうだな」

「はい。幸いにも『悪臭』は使用前だったようで、見てください、このルビーのような輝きを……!」


 よほど感動したのか、アイラのテンションが高い。確かに彼女が持つ肉は、紅く輝いて見えるし、皆も集まって目を輝かせている。今夜の食材は決まったようだ。

 『カイザーヴェイン』をしまい、手首を揉む。


『ゴゴ?』

「ん? ああ、大丈夫だ。どうしても『雷鳴の矢』直後は、疲労があるんだよな」


 そうやって彼女達が喜ぶ様子を眺めていると、目の前に見た事のあるウィンドウが出現する。


【管理者の鍵 525-4の取得条件が揃いました】

【対象者を専用エリアに移動させます】


「!? 全員、俺の傍に寄れ! はやく!」


 俺の反応に覚えがあるのか、アヤネとアイラが真っ先に動く。


「承知しました」

「はいですわ!」


【3】


 ワンテンポ遅れてエンキ、アキ、マキと続く。


『ゴ!』

「ま、待ってよ!」

「今行きます!」


【2】


 全員で押し競饅頭をするかのようにぎゅうぎゅうに詰め寄り、そこをエンキが長い腕で囲み込む。1度あった事だしまた起きた際にはと、こうするように決めていたんだが……。まさかもう起きるとはな。

 強制移動にどの程度の距離まで許されるのか分からない以上、こうするのが一番だ。


【1】


 前回とは違って万全な状態で、俺達の視界はブラックアウトした。

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