ガチャ228回目:下位スキルと上位スキル

「じゃあスキルの振り分けをする前に『剣の心得』の検証から済ませようか。アキー」

「はいはい、わかってるわよ。『剣の心得Lv1』を、順番に1個ずつ使えば良いのよね?」

「うん。とりあえず17個ね」


 前回アキには『剣の心得Lv1』⇒『剣術Lv1』⇒『剣の心得Lv1』⇒『剣の心得Lv2』と取得してもらったが、今彼女のスキル一覧には『剣術Lv1』しかなく『剣の心得』は存在しない。ここに、スキルレベルの無いスキルのように、高レベルの『真鑑定』がないと見れない情報があるのかもしれないし、ないのかもしれない。

 限界までスキルを注ぎ込んだらどうなるかの検証だが、果たしてどうなる事か。


「……ふぅ。すっごく精神的に来るわね。金銭感覚がおかしくなりそう」


 すごく憂鬱そうにアキがぼやく。そんな彼女の手からは、もうすでに10個の『剣の心得』が消えていた。


「そういえば『剣の心得』って、いくらくらいするの?」

「10万くらいでしょうか」

「高くもなく、安くもない感じだね」

「この階層に来られるくらいの冒険者に、今更剣の初歩的な知識が得られたとしても、大した影響はありませんが、初心者であればお手頃です。それに、積み重ねれば『剣術』には及ばなくともそれなりに価値のあるスキルへと成長するのです」

「そんなスキルが、あたしの手の中で、無意味に消えてくのよ……。病んじゃいそうよ」


 アキの目が、スキルを消費するたびに死んで行ってる気がする。


「ごめんアキ。あともうちょっとだけ頑張って」

「ぶー……。あとで抱き締めて」

「わかったよ」

「むふん。じゃあ頑張る」


 そうして不貞腐れたり、モチベを上げたりしつつ、彼女は17個すべて取得したものの、変化はなかった。

 しかし、更にダメ押しでもう1個取得したところで変化が起きた。


「……あっ、うそ。『剣術Lv2』になったわ!」

「え、本当!?」

「ほんとだ、変化してる……!」

「流石旦那様、見事な慧眼ですわ」

「これはこれは……。市場が騒ぎますね」


 『剣の心得』はLv20でMAXだ。そしてアキの場合は、『剣術』スキルの取得前に『剣の心得』を1レベル分、取得後に『剣の心得』20レベル分取得しても変化せず、21レベル分取得で変化した。

 つまりは、上位スキルを取得する前に取得していた下位スキルは上書きされ、その後に限界値+1個取得する事で上位の進化分が溜まった。……そういうことだろう。


 となると、次に実験すべきは……。


「ちゃんと意味があると分かった以上、アキ。また21個よろしく」

「え、もう良いんじゃないの?」


 アキが心底驚いたような顔をしてる。

 ははは、まだ実験は始まったばかりじゃないか。


「Lv1上昇が毎回1周分なのかの検証は必須でしょ」

「た、確かにそうだけど……」

「じゃ、よろしく」


 そう言ってアキに21個の『剣の心得』を転がすが、彼女はそれを手で防いだ。


「そ、それならショウタ君が実験すればいいでしょ。何もあたしがやらなくても……」

「俺の場合、『剣術』を11レベル分取得すれば、『剣聖Lv2』になるかもしれない。そういうことだよね? でも、それをすると確実に『剣術Lv1』個分、余分に使う事になるから勿体ないよ。これはあくまで、『圧縮』無しでスキルの圧縮が出来るかの実験だからね。1個確実に無駄になるなら、安価な『剣の心得』と高価な『剣術』。どちらを選ぶかは明白だよね」

「うぅー……!」

「ほら姉さん、諦めて。ちゃんと変化があった以上、無駄にはならないと分かったんだし」

「先輩、ふぁいとですわっ!」


 そうしてアキは『剣の心得』を大量に取得する流れとなり、結局『剣術』のスキルレベルはLv6にまで至るのだった。

 彼女が消費した『剣の心得』は102個。確かに、これだけ消費したら気が滅入るよな。それでもまだ、『剣の心得』は160個残ってるんだけど。


「……一生分のスキルを取得した気分よ」


 精神的に消耗しきったアキは、簡易布団に頭からダイブし倒れていた。彼女は後で労うとして、実験は成功。結果として先ほど建てた仮説が正しかったことが判明した。


 【上位スキル取得後に、下位スキルMAX分+1取得する事】


 こうして上位のスキルが1上がった以上、もう1つ確認したいことがある。

 それは、上位スキルを未取得のまま、下位スキルをMAX以上に取得したら、スキルの進化は起きるのかというものだ。


「次はマキ。頼めるか」

「ショウタさんの頼みならなんだって。と、言いたいところなのですが、次は『剣術』無しでのスキルアップが可能かの実験ですよね? 残念ながら、これに関しては既に検証がされているんです」

「あ、そうなの?」

「はい。『剣の心得』とはまた別のスキルなのですが、実験では、下位スキルをLvMAXの2倍注ぎ込んでも、上位スキルには変化しなかったそうなのです」


 ああ、やっぱり実験は行われてたか。となれば俺がさっきやった実験は、下位から上位が変化しないという前提があるから、執り行われなかったのかもしれないな。


「スキルを成長させるためには、上位のスキルを身に着けなければ始まらないという事か」

「そういう意味でも、ショウタさんの『圧縮』は破格のスキルですね。スキルの成長をショートカットできるんですから」

「……だね」


 逆に言うと、『剣聖』のスキルオーブを使うとき、もし『剣の心得』や『剣術』のレベルがいくつか育っていたとしても、『剣聖』によって上書きされ、無かったことになってしまうのだ。

 これは悲しい。


「んじゃ、残りを一纏めにするね」


 そうして『剣の心得』は残った分を全て『圧縮』したところ、『剣術Lv1』は8個となり、それを踏まえ、俺達は改めてスキルの分配を始めた。

 俺は『剛力Ⅳ』1個で『剛力Ⅴ』に。『鉄壁Ⅳ』3個で『鉄壁Ⅴ』。『剣術Lv3』3個と『剣術Lv1』1個。それから『剣術Lv5』1個と『剣術Lv1』5個を合わせて『剣聖Lv3』に。『追跡者Ⅳ』3個で『追跡者Ⅴ』に。『王の威圧Ⅲ』1個で『王の威圧Ⅳ』に。


 アヤネは『剛力Ⅲ』3個で『剛力Ⅳ』に。『回復魔法Lv1』2個で『回復魔法Lv8』に。『破壊の叡智Ⅱ』1個。『極光魔法Lv1』2個で『極光魔法Lv6』に。『宵闇魔法Lv1』2個で『宵闇魔法Lv4』に。


 アイラは『剛力Ⅲ』3個で『剛力Ⅳ』に。『魔力回復Lv1』1個。『破壊の叡智』3個で『破壊の叡智Ⅱ』に。


 アキは『剛力Ⅲ』3個で『剛力Ⅳ』に。『怪力Ⅲ』1個。『鉄壁Ⅲ』3個で『鉄壁Ⅳ』に。『城壁Ⅱ』2個で『城壁Ⅱ(2/3)』に。『迅速Ⅲ』1個。『破壊の叡智』1個。


 マキは『剛力Ⅲ』1個。『怪力Ⅲ』1個。『城壁Ⅲ』1個。『回復魔法Lv1』4個と『回復魔法Lv2』2個で『回復魔法Lv8』に。『魔力回復Lv1』1個。『破壊の叡智』1個。


 残りは……。

 『剛力Ⅱ』3個。

 『剛力Ⅲ』1個。

 『怪力』1個。

 『怪力Ⅱ』2個。

 『俊足』2個

 『俊足Ⅲ』1個。

 『迅速』2個。

 『鉄壁Ⅲ』2個

 『鉄壁Ⅳ』3個。

 『統率』5個。

 『統率Ⅲ』4個。

 『剣の心得Lv5』3個。

 『剣術Lv1』3個。

 『追跡者Ⅱ』1個。

 『追跡者Ⅲ』3個。

 『追跡者Ⅳ』1個。

 それと宝箱。


 うん、だいぶすっきりした。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


この作品が面白いと感じたら、ブックマークと★★★評価していただけると励みになります!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る