ガチャ227回目:ポテンシャル

 武技スキル『無刃剣』。

 ブーストスキルを全開放し、その上で『思考加速』を使用しないと発動すら出来ない大技中の大技。

 効果としては単純明快で、一瞬で対象を細切れにする。


 スキル使用中は自分の意識で動いておらず、ほとんどがスキルの力で無理やり身体を動かされているような状態だった。それにこのスキルは、困ったことに平時では起動すらしない。恐らく、あの状態になって初めて、スキルの動きに身体がついていける最低ラインとなるのだろう。

 逆を言えば、『無刃剣』の動きを完全にマスターすることで、ブーストされた状態のあの動きが意識して再現可能ということでもある。


「ショウタさん!」

「旦那様ー!」

「……痛っ」


 実に浪漫のある話なのだが、どうやらブーストを全開にしても、ステータスはちょっと足りていないのかもしれない。なぜなら、俺の全身は現在、動けないほどの筋肉痛に襲われているからだ。

 彼女達が駆けつけて来るが、反応してあげられるほど俺に余裕はなかった。


「あれ、顔色悪いわよ。大丈夫!?」

「す、凄い汗です」

「身体が痛むのですか? 『ヒールⅢ』ですわっ!」


 アヤネは、『回復魔法Lv6』で使えるようになった治療魔法を使ってくれた。普通の怪我じゃないから普通の『ヒール』じゃ回復しないと判断しての事だろう。

 大げさのように思えたけど、おかげで全身の痛みが消えた。


「……ふぅー。ありがと、助かったよ」

「すっごい動きだったもんね。肉離れを起こしてたのかも」

「かもね……」

「あの動き、私でも再現するのは難しいでしょう。流石はご主人様です。ですが少々、無茶をしたようですね」

「うん……」

「とにかく、今日の狩りはこれでおしまいよね? なら、こんなとこからはさっさとおさらばして、あたし達のテントに帰りましょ!」

「そうしようか」

『ゴ!』



◇◇◇◇◇◇◇◇



 キャンプ地に戻ってくると、来た時には余っていた余白スペースにもキャンプが建てられていて、満杯状態になっていた。どうやら例の告知を受けて、第四層の常連が事実確認のために押し寄せて来たらしい。


「凄い騒ぎだな。これ、どうみても溢れてるけど、その場合はどうするの?」

「他人事ねー。ショウタ君が引き起こした事なのに」

「ふふ。その時は第三層の出口付近にキャンプしてもらう事になっています。あそこも一応、境界線ですので、モンスターは来れません」

「そっか。なら安心かな」

『ゴ!』


 エンキの特徴的な声と見た目に反応し、キャンプ地に集まっていた冒険者の視線が俺へと集まった。


「おお、レアモンハンターさん!」

「あの噂は本当ですか、ボスモンスターを倒したって話は!」

「外では大騒ぎですよ!」

「話を聞かせてください!」

「あ~……」


 どうしたもんかと困っていると、アキとマキが前に出てくれる。


「はいはーい! ショウタ君は疲れてるから道を開けてー」

「レアモンスターの動画や情報はまた後日公開しますので、お待ちください!」

『は、はい!』


 随分とあっさり道が開けられたことに感動しつつも、俺達は自分達のテントへと帰還した。


「……特に荒らされてはないかな?」

「Aランクのテントに手を出すようなバカはいないって事でしょ。まぁ、管理をしてる職員も、特にここのテントに関しては目を光らせてるだろうしね」

「あー、それは支部長のお墨付きだから?」

「いいえ、それもありますが……。実はショウタさんって、うちの協会内では、結構職員からの評価が高いんですよ」

「そうなの?」

「元々は姉さんと一緒に第777支部を支えてた伝説の人として評価をされてましたし、先日のレアモンスターの動画の件で事故率が大幅に減少。逆に動きや湧かせ方が明確になって、討伐することが出来たという報告も幾つか入っているようで、その関係で評価が鰻登りのようです」

「最初の件は初耳なんだけど……。てか、討伐出来たことで評価が増えるの?」

「レアモンスターを討伐したって事は、魔石とかスキルオーブとか、素材とか。得られるものがあるじゃない。その売り上げの一部が担当者に入るでしょ」

「ああ、そっか。専属じゃなくてもその一部は入るんだっけ」

「一部からは拝まれてるらしいわよ」

「えぇ……?」


 拝まれてんの?


「流石旦那様ですわ!」

『ゴ!』


 エンキも、同意するかのように両手を上げた。彼は今、テントの中に入るために50センチほどのサイズに縮んでもらっている。アイテムの分配が終わったら、彼の『魔力』をチャージしてあげなくちゃだからな。


「エンキ、もうちょっと待ってくれな」

『ゴゴ!』


 彼はそう返事をすると、テント前で分離した岩を使って、積み木をするかのように遊び始めた。ゴーレム達は暇な時、知育玩具的な物でいくつか遊ばせてみたんだが、その中でもエンキは積み木が好みらしい。

 だけどまさか、自分の身体で積み木を始めるとは。高度な遊びと見るべきか悩ましいな。


「それではご主人様。これが本日の午後の成果です。まずは大量にあるこちらから『圧縮』をお願いします」

「おっけー」


 雑魚からドロップしたスキルは『剛力』239個、『鉄壁』243個、『剣の心得Lv1』252個、『追跡者』247個。前回の余ったスキルと混ぜ合わせて順次『圧縮』していく。

 『剣の心得Lv1』だけはちょっと実験したいことがあるので、そのままだ。


 『剛力Ⅱ』3個。

 『剛力Ⅲ』11個。

 『剛力Ⅳ』1個。

 『怪力』1個。

 『怪力Ⅱ』2個。

 『怪力Ⅲ』2個

 『俊足』2個

 『俊足Ⅲ』1個。

 『迅速』2個。

 『迅速Ⅲ』1個。

 『鉄壁Ⅲ』5個

 『鉄壁Ⅳ』3個。

 『城壁Ⅱ』2個。

 『城壁Ⅲ』1個。

 『統率』5個。

 『統率Ⅲ』4個。

 『剣の心得Lv1』262個。

 『剣の心得Lv5』3個。

 『剣術Lv1』1個。

 『剣術Lv3』3個。

 『剣術Lv5』1個。

 『追跡者Ⅱ』1個。

 『追跡者Ⅲ』3個。

 『追跡者Ⅳ』4個。

 『回復魔法Lv1』6個。

 『回復魔法Lv2』2個。

 『魔力回復Lv1』2個。

 『極光魔法Lv1』2個。

 『宵闇魔法Lv1』2個。

 『破壊の叡智』5個。

 『破壊の叡智Ⅱ』1個。

 『王の威圧Ⅲ』1個。


 『銀の宝箱』3個。

 『金の宝箱』2個。

 強化体が落とした『金の宝箱』1個。


 スキルが沢山出るのは良い事なんだが……。初日だけどもう『圧縮』で疲れたな。

 明日のオークはもっと楽な事を願うよ。

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