ガチャ226回目:第四層のトロフィー
「『充電』……ですか?」
「そう。聞いたことある?」
俺は彼女達に、新たに得られたスキルを伝えつつ、用途不明のスキルについて聞くことにした。
しかし、全員が首を横に振る。
「誰も知らないスキルか。何に対して『充電』するかによるよな……。電化製品とかはそもそも俺自身が電気エネルギーを持ってる訳でもないし」
「あ、旦那様。共に取得した『外典魔法』というのは、何が使えますの?」
「ああ、それ? ちょっと待ってねー」
頭の中で『外典魔法』をイメージする。すると、魔法名などは一切浮かばないが、特殊な2種類の力が操れることが分かった。
「……よっと」
左手からは静電気が。右手からは氷の塊が現れる。
「旦那様、それはまさか雷と、氷の魔法ですの!?」
「らしい。だけど固有の魔法名はないみたいだ。自分の認識一つで、威力やら大きさやら指向性が調節できるみたい」
「かなり自由度の高い魔法スキルのようですね」
「じゃあ、それを使ってバリバリ『充電』しちゃうってこと?」
「うーん……。想像してみても、なんだかしっくりこないんだよなぁ」
「それは『直感』ですか?」
「そう、『直感』」
「なら違うかもしれませんね。ですが、『充電』は戦闘に使えそうなスキルとも思えませんし、考えるのはあとにしても良さそうですね」
「……そうだな。よし、それじゃこのままここで強化体を出す。最後のひと踏ん張り、よろしく!」
「「「「はいっ!」」」」
『ゴ!!』
そうして再びゴブリンを呼び寄せ、100体追加で殲滅する事十数分。煙が出現し、中から5体のモンスターが現れた。
*****
名前:コマンダーゴブリン
レベル:72
腕力:600(-150)
器用:540(-135)
頑丈:360(-90)
俊敏:180(-45)
魔力:120(-30)
知力:480(-120)
運:なし
【
【
【
【
装備:魔鉄の長剣Ⅱ、魔鉄の鎧Ⅱ
ドロップ:ランダムボックス、ランダムな装備、コマンダーゴブリンのトロフィー
魔石:大
*****
これが1体。
*****
名前:プリーストゴブリン
レベル:60
腕力:160(-40)
器用:280(-70)
頑丈:400(-100)
俊敏:200(-50)
魔力:800(-200)
知力:640(-160)
運:なし
【
装備:ゴブリンの大錫杖、ゴブリンの法衣
ドロップ:ランダムボックス、ランダムな装備
魔石:大
*****
これが2体。
*****
名前:ブラックナイトゴブリン
レベル:65
腕力:400(-100)
器用:600(-150)
頑丈:640(-160)
俊敏:240(-60)
魔力:400(-100)
知力:160(-40)
運:なし
【
【
【
【
装備:魔鉄の大鋼剣、魔鉄の全身鎧
ドロップ:ランダムボックス、ランダムな装備
魔石:大
*****
これも2体。
「おおっ!?」
『ヒーラーゴブリン』が2体出てくるはずの所を、完全に別種のモンスターが出て来た。しかも2種類かつ2体ずつ。『プリーストゴブリン』は『ヒーラーゴブリン』の。そして『ブラックナイトゴブリン』は『ナイトゴブリン』の上位互換か?
これは、スキル構成から見てもかなり美味しい。しかも2割減少が効いてるから本当に悲惨なステータスになってるな。
奴らの背後にはまたどこからやってきたのか、100体近い数のゴブリンが集結しつつあるが……。こっちは、全員がもれなく1割減少しているし、今更雑魚が増えたところで苦戦なんてありえない。
「エンキ、行くぞ!」
『ゴ!!』
雑魚ゴブリンの雪崩がこちらに向かってくるが、この集団にもなれたもの。まずはエンキが一発ぶちかます。
『ズズズン……!』
『ゲギャ!?』
『ギャギャ!』
地面が揺れ、倒れていく雑兵の後ろで、慌てふためくレアモンスターの姿が見える。『極光魔法』も『宵闇魔法』も、レベルは1とはいえ厄介な魔法だ。レーザー光線を撃たれる前に、まずはこちらから潰す。
「『紫電の矢』『重ね撃ち』」
『重ね撃ち』は複数の矢を束ねて撃つ技術を、スキルに落とし込んだもの。
『器用』が4桁に突入した辺りからは、2本同時に番える事も可能となり、『統率』込みで7000を超えた今では、やろうと思えば3本同時も可能だったが、どうにもそれが限界だった。しかし、スキルとして明確な技術の後押しを得た今なら、4本同時かつ、全ての矢に『紫電の矢』を行使させることも可能となった。
「飛べ」
『パァン!』
音が破裂するのと同時に、4体のお供の身体が弾け飛んだ。
【レベルアップ】
【レベルが14から81に上昇しました】
あっと、しまったな。レア級に昇格したんだから、経験値も上がってるし、同時討伐したらその分一気に上乗せされるよなぁ。
「強化体も射線上に入れて、一緒にやっとけばよかったかな」
『ゴゴ?』
「いや、エンキはそのまま雑魚を殲滅してくれ」
『ゴ!』
地震から立ち直り、再び突進してきたゴブリンの群れに対し、エンキは両手の盾を縦横無尽に振り回して叩き潰し始めた。俺はその様子を尻目に『エアウォーク』を駆使し、ゴブリン達を乗り越えて本丸へと乗り込んだ。
『ゲギャギャ!』
「でもま、せっかくの強化体だ。直接やらなきゃ、勿体ないよなっ!」
振るってきた剣を、力任せに弾き飛ばす。
『剣術Lv5』を持っているとはいえ、相手は『身体強化』もなく『腕力』も弱体化して心許ない。そんな技術だけの剣じゃ、相手にもならないな。ここは新技のお披露目と行こう。
俺は片方の剣を宙に放り投げ、奴の意識が逸れている内にブーストスキルを一気に開放する。
「『剛力Ⅳ』『怪力Ⅳ』『阿修羅Ⅱ』『金剛力Ⅱ』『俊足Ⅳ』『迅速Ⅳ』『瞬迅Ⅲ』『思考加速』」
『ギギッ!?』
世界が、止まって見えた。
「……『無刃剣』」
『キンッ!』
一瞬の空白の後、俺は『コマンダーゴブリン』の背後で、放り投げた剣をキャッチしていた。
「ふぅー……」
『ギッ……?』
奴からすれば、俺が目の前から消えたように見えただろう。
俺の吐息を聞いて慌てて振り返ろうとするも、それが奴の最後の行動となった。辛うじて接着していた身体は、急激な動きについていけずバラバラの肉塊へと変わって行く。
奴の身体は胴体から連鎖的に分断されていき、血も叫びも、煙となって消えてしまった。
【コマンダーゴブリンのトロフィーを獲得しました】
【レベルアップ】
【レベルが81から83に上昇しました】
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