ガチャ215回目:新たな皇帝
『コマンダーゴブリン』2体が煙になるのを見届け、俺はエンキを連れてシュウさんのところへと戻った。
「シュウさんとダンジョンで会えるなんて思いませんでしたよ。1週間ぶりくらいですかね」
「はは、もうそんなに経つのか。色々と言いたいことはあるけど、まずはそうだな……。第四層へようこそ、ショウタ君。俺達は君を歓迎するよ!」
「ありがとうございます」
俺達は固い握手を交わした。
「それにしても、君が戦う姿を見るのはこれが初めてだけど……。本当にすごい『運』だね」
シュウさんはちらりと、雑魚ゴブリンの群れがいたところに視線を投げる。もうそこには、アイラが回収済みの為何も残っていなかったが、恐らく大量のアイテムがあったのだろう。
倒したモンスターの全てから装備に魔石、スキルオーブがドロップする光景はさぞかし異様だったことだろう。
「あーアイラ。防具類は嵩張るから適当に破棄していいからね」
「畏まりました。では後ほど、キャンプ地の方に駐在している職員に、格安で投げ売りしておきます」
「ほどほどにね」
俺がこのまま連続で狩りまくれば、小山が出来るくらいの量になりそうだし。いくら格安だろうと協会で処理できるキャパを超えたら大変だ。
『ゴ、ゴ』
「おや、エンキも装備に興味がありますか?」
『ゴゴ』
エンキとアイラが何やら話しているが、『一等星』の皆はエンキの存在が気になるようだ。
「あれが噂のゴーレム君か。話には聞いていたけど、本当に強く、そして理知的だね。掲示板で情報は拾っていたけど、ヒーローショーをしてたんだって?」
「ええ、まあ」
「一つ相談なんだけど、アヤカを彼に乗せてあげることは出来ないかな? 君の婚約者達が搭乗してるって話を聞いてアヤカも興味津々でね」
「ちょっとリーダー、あれは冗談で……」
シュウさんの言葉に、『一等星』の紅一点。アヤカさんが慌てたように遮る。エンキは子供だけじゃなく女性受けもいいのか。
「あ、良いですよ。エンキはお触り自由なんで」
『ゴ? ゴゴ!』
「ほんと? あっ……その」
「はは、アヤカ。隠さなくても良いじゃないか」
二人がイチャつくのは良いとして、ちょっと待ったをかける。
「あ、でもちょっと後にしてください。今から
「現時点で5分ほど経過しました」
「ありがとうマキ」
タイマー役は、マキに任せる事になった。細かい仕事だけど、負担が減るのは本当に助かっている。もう少しで霧散か、膨張のどちらかが起きるはずだ。
「おお、例の『レアⅡ』だね。ここには昔、それらしいモンスターの目撃情報があったんだよね。ただ、確証はなかったし『レアⅡ』の存在も認知されていなかった頃だったから、眉唾扱いだったんだけど」
「そうなんですね。やっぱりそいつもゴブリンなんですか?」
「はは、それは今からのお楽しみさ」
それもそうか。
しかし、俺が来る以前に『レアⅡ』の目撃情報があったとするのであれば、ここの『レアⅡ』は条件が緩いのか?
そう考えていると、煙が膨張を開始した。
「また2体来るぞ。エンキ、左を頼むな」
『ゴゴ!!』
2つの煙の中から現れたのは、どちらも身長180cm程度の男達……いや、ゴブリンだった。このすらりとした体形、どこかで見た事があると思ったら、こいつら『エンペラーゴブリン』にそっくりなんだ。
*****
名前:カイザーゴブリン
レベル:75
腕力:880
器用:650
頑丈:600
俊敏:580
魔力:5000
知力:600
運:なし
装備:皇帝の魔剣Ⅱ、皇帝の魔鎧Ⅱ
スキル:剛力Ⅲ、怪力Ⅲ、鉄壁Ⅲ、城壁Ⅲ、剣術Lv3、王の威圧Ⅲ、統率Ⅲ
ドロップ:ランダムボックス、ランダムな装備
魔石:特大
*****
「エンペラーの上がカイザーって。同じ皇帝かと思いきや、こっちの方が強いじゃないか」
『ゲギャ?』
『ゲギャギャギャ!!』
2体の『カイザーゴブリン』が天高く剣を掲げる。すると、その周囲にとてつもない数のゴブリンが現れる。その数……100体以上。
その動き出しは向こうの『エンペラーゴブリン』にそっくりだ。あいつに煮え湯を飲まされたアイラが、警戒するように構える。
「ご主人様」
「いや、援護は不要だ。どうやら、あいつの力で出現した『ジェネラルゴブリン』はここ基準の奴らしいからな。ただひたすらに数が多いだけだ」
もしもあれが『上級ダンジョン』と同じ仕様の『統率』持ちだったとしたらとんでもない事になっていただろうけど……。やっぱりここは、どうあがいても『初心者ダンジョン』のようだ。
第三層は除く。
「エンキ、蹴散らすぞ」
『ゴ!!』
2対100強の、大戦争の始まりだ!
◇◇◇◇◇◇◇◇
数十分後。
溢れた雑魚が彼女達や『一等星』にいくらか流れてしまったものの、幾度となく召喚される雑魚を撃滅し続け、ついに俺達は『カイザーゴブリン』の喉元へと肉薄する。そして真正面から同時に撃破すると、残っていた雑魚諸共煙となって消えるのだった。
【レベルアップ】
【レベルが69から91に上昇しました】
「いえーい」
『ゴゴー!』
『おおおーー!!』
俺とエンキがハイタッチを決めると、いつの間にか増えていたギャラリーから歓声が贈られた。
「うおっ、いつの間にこんなに。……ん?」
安堵したのもつかの間、俺はとある事実に気付いてしまった。
先ほど倒した2体分の煙は、霧散せずにその場に残っていたからだ。
「まさか、『レアⅢ』が居るのか!?」
想定外の事態だが、これは早速ガチャを回しておかなくちゃな!
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