ガチャ212回目:成長した結果

『ゲギャ!』

『ゲギャギャ!』


 ゴブリン達は、全員が前衛職だ。その為か、連中は統制の取れない動きで吶喊してきた。肝心の『ジェネラルゴブリン』が『統率』を覚えていないからか……? 連携もなにもない無鉄砲なまでの突撃戦法。数で劣る冒険者側は、初心者ならまず自分より多い相手には挑まないだろうが、この階層ではそうはいかない。

 だけど俺は、一度に多数を相手取るのはこれが初めてではない。こいつらのもっと強い奴らと、散々戦ってきたんだ。それに比べれば、ステータスを貧弱にした上で脳死で突っ込んでくるような奴ら相手に、後れを取るはずがなかった。


 剣を抜き放ち、前方を切り払う。それだけで前に詰めていた2体の『ファイターゴブリン』は両断され煙に変わる。続いて一歩踏み出し、3体目を袈裟斬りにし、そのすぐ後ろにいた4体目に突きを打ち込み5体目諸共貫く。


「『紅蓮剣』」


 腹を貫かれ、火炙りにされたゴブリン達が大きく喚きながら煙へと変わった。


『グゲ!』

『ゲギャ!!』


 煙の中から残ったゴブリンが剣を構えながら現れ、こちらへと向かってくる。だが、それも身体を捻る事で簡単に回避し、そのままの勢いで回転しながら剣を振るう。今度は三体纏めて炎に斬られたゴブリン達は、なすすべもなく燃え尽き煙となった。


「うーん……」

「あれ、ショウタ君不満気?」

「動きもスムーズでしたし、型もハマってましたよ」

「いや、『予知』もブースト系スキルも、何一つ使ってなかったんだけど……。こんなに弱いものなのかなって」


 『上級ダンジョン』のあのゴブリン達は、もう少し歯応えがあったはずなんだけど。


「ご主人様はあの時と比べ、飛躍的に成長していますから。更に相手は想定の敵よりも弱者です。比べるまでもないかと」

「格好良かったですわ」

「そうか。ありがと」


 俺もステータスだけじゃなくて、ちゃんと成長してるのかな。

 で、ドロップだけど……。うん、全部出たな。『剣の心得Lv1』は……と。


 名前:剣の心得

 品格:≪通常≫ノーマル

 種別:パッシブスキル

 説明:剣を扱うための基礎知識を得る。


 まんまだな。

 んで『追跡者』はと。


 名前:追跡者

 品格:≪通常≫ノーマル

 種別:アーツスキル

 説明:ターゲットした相手の足取りを追う。


 ……うーん、何に使うんだ? 例の4バカのイメージが強すぎて、よくないことにしか使えなさそうだぞ。


「なあ、こいつらって何の役に立つんだ?」

「まず『剣の心得』ですね。こちらは『剣術』の下位スキルだと言われています。その為、共存できないらしく『剣の心得』を取得した状態で『剣術』を取得すると、上書きされるそうです」

「ちなみに逆は?」

「リスクが大きすぎるので誰も試してません」

「だよねー」


 俺も今は『剣術』のスキルレベルが6もあるし、試すのは怖すぎるな。


「『剣の心得』は、最終的に『圧縮』することで『剣術』に進化する可能性があるし、とりあえず保留で。次にこの『追跡者』は?」

「これはショウタさんにはあまり使い道がないスキルですね」

「そだね、マップがあるからねー」

「というと?」

「人間に使った場合は足取りを追うことのできるスキルなのですが、モンスターを対象とした場合、少し効果が異なります。スキルを行使した付近で、モンスターが過去に近くを通っていた場合、その対象がどこに向かったのか探知するスキルになります。ご主人様のようにマップ情報さえあれば敵の位置全てが手に取るように分かるのであれば、不要かと」

「なるほどね」


 逆を言えば、マップ情報がない場所であれば有効活用できそうではあるけど、でも初見の時ってモンスターよりもマップ埋めを優先したいからなぁ。それに『鷹の目』で見える視界では、障害物の向こう側にいるモンスターの姿を映し出す機能も備わってる。

 うん、やっぱ要らないや。


「じゃあそれは破棄……は勿体無いとして、売るにしても数が出るからなぁ」

「そうですね」

「貯めると荷物になりますし、捨てたら捨てたで他の誰かが大量に拾ってしまう可能性もありますわ。ですので、旦那様が覚えるのが一番丸いと思いますの」

「……だよね」


 結局そうなるか。


「じゃあ、休憩の時にその他雑多なスキルはまとめて済ませてしまおうか」

「畏まりました」

「んー、ふふ。それにしても、こうやってスキルが大量生産されていく様を見るのは、中々感慨深いわね」

「そうね、姉さん」

「まあ今まで二人を連れ歩いてた時は、スキルを落とさない奴らが相手だったもんな。でも、本格的な狩りは四隅を埋めてからになるかな」

「うんうん、わかってる」

「頑張ってください!」

「ああ。……じゃ、ちょっと足を速めるか。エンキ、無理のない範囲で思いっきり走ってみてくれ。俺達はそのスピードに合わせて動こう」

『ゴ!』


 エンキは重いゴーレムだけど、『ゴーレムコアⅣ』によって馬力がある。その上3メートルと小柄にしたからか、多少動きが軽やかになったようで、『ジャイアントロックゴーレム』よりも機敏に動けるみたいだ。重装備形態になったことでスピードは落ちてるはずなんだけど、それでも自転車くらいの速度を出して走れるのは普通に凄いよな。


「皆で、ジョギングしてるみたいですわね」

「はは、そうかもな」

『ゴ! ゴ!』

「ご主人様、遠方にゴブリンです」

「よし、ゴブリンは俺とエンキでやる。もしオークが出たら皆に任せたい」

「「「「はい!」」」」


 オークのドロップも気にはなるけど、まずはレアモンスターを優先するべきだしな。

 そうして俺達は順調に一隅目、二隅目と歩を進めたところで、レアモンスターの前兆である煙が出現した。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

https://twitter.com/hiyuu_niyna/status/1670693623627907072

上記にて、ショウタ君の溢れるスキルの表示方法について、アンケート開いてます。(3日間)

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