ガチャ200回目:山林地帯
砂場でエンキ専用の武器2本分の砂を岩へと固め、アイラのバッグに詰め込んでもらってから、俺達は3層への階段を降りた。
そこはまるで富士の樹海のような様相で、地面には苔が生え、樹にはツタが巻き付いていた。木々の間隔は広く、エンキで通る分には問題なさそうだが1つ1つの背が高く10メートル近くはある。マッピングをするにはエンキに乗りながら『鷹の目』を使う必要がありそうだ。
そしてこのマップ中央には、山らしきものが形成されているらしく、第三層入口からでもその異様さはハッキリと目に映った。ダンジョン壁でも山そのもののフィールドでもなく、ちゃんとした登れる山がダンジョン内にあるというのは、不思議な光景だな。
しっかし、マップなしでは迷いそうな場所だな。
「『初心者ダンジョン』なのに、いきなり難易度が上がってない?」
エンキから飛び降りると、皆も一緒に降りて来る。
「大丈夫よ、この階層はそれほど危険視されてないの」
「なんで?」
「アイラさん、お願いします」
「はい」
アイラが地図を広げてくれたので皆で覗き込む。
そこには、第三層全域の大まかな内容と、第四層へと続く道が記されていた。随分と曲がりくねっているが、山を避けるような形で左回りと右回りの小道が存在していた。
「この道は第二層で言うところの、モンスターの縄張りの境界線になるんです。ですので、このルートを通っている限りモンスターに襲われる心配はありません、また、道中いくつかの広場がありますよね。そこは視界が開けているので、集中的に狩りをするのに向いているんです」
「なるほど、おあつらえ向きに戦える場所が用意されていると。それ以外の森林地帯での狩りは?」
「あんまり奥に行き過ぎると、方向感覚が狂うって言われてるわ。調子に乗った冒険者が迷子になりやすいの。幸い、ヤバイモンスターの生息域には誰も近付かないから、それ以外の場所ならそうそう死なないけど」
「ふむ……。ヤバイモンスターってのは、通常モンスターだよな。ここに生息してるモンスターって何種類いるんだ?」
「3種類よ。あ、ほら。ちょうどあそこに1匹」
アキが指し示す先。そこには斑模様の蛇が居た。地面の色と相まって保護色が強いがよく見つけたな。そういえばアキは、『気配感知』のスキルを持ってるんだっけ。あの蛇も明らかにこっちを見ているが……襲いかかってくる様子はない。これも縄張りの為か?
体長は約2メートルほど……といったところか。
*****
名前:グリーンスネーク
レベル:11
腕力:80
器用:100
頑丈:40
俊敏:60
魔力:80
知力:80
運:なし
装備:なし
スキル:なし
ドロップ:グリーンスネークの皮、グリーンスネークの斑皮
魔石:小
*****
「ダンジョンで蛇か。初めて見たな」
「この階層ではモンスターの生息域が縄張りで完全に区切られていますので、森の中であれば複数のモンスターとバッティングするという心配はほぼありません」
「反面、さっき伝えた狩りに向いた広場は、どこも2種類のモンスターが隣接する境界線でもあるの。ショウタ君的にはこっちはあんまりかもね」
「なるほどなー」
流石、『初心者ダンジョン』の受付嬢とお隣の支部長。このダンジョンに対する造詣が深い。こいういう話をダンジョンに潜りながらいつでも聞けるっていうのは利点だよな。
「もう2種類は?」
「残るはまず猪ね」
「猪か……。『マーダーラビット』みたいなもんだよな」
「まあ、ショウタ君はそれで慣れてるから問題ないわね。レアモンスターで慣らすってのもおかしな話だけど」
「ふふ、そうですね。そして最後の1種は、クマです」
「く、クマ!? 急に難易度上がって……ああ。それで厄介なのか」
モンスターとして出て来るクマ。
ウサギやオオカミなんていう野生動物っぽい連中で慣らしたと思ったら、いきなり凶悪なものにグレードアップしてきたな。想像するだけでもかなり強そうな気がする。
「とても厄介ですがクマである以上誰もが警戒をしてくれます。なので、クマによる被害は、実はそんなにないんです」
「そうなの?」
「はい。なぜならクマはあそこに見える山周辺にのみ生息しています。近づかなければ問題ありません。道も山を避けるように伸びていますから」
あらためてマップを見る。広さとしては第二層と同じくらいとされているが、中央を突っ切れない関係で迂回を余儀なくされ、『初心者ダンジョン』メインの狩場となる第四層にたどり着くにはそれなりの時間を要するようだ。だから第四層の入り口ではキャンプ地が作られているんだな……。
んで、第三層は使えそうな狩場はあるけど、スキルとかの旨みは特に無いらしい。モンスターの生息域がほとんど森の中だし、狩場となる広場もそこまで広くはなく、1チームでほぼ満員になるそうだ。
逆に第四層は第二層と同じような様相で広く戦いやすく、『ジェネラルゴブリン』を始めとしたスキル持ちがいるとかで、稼ぎに向いているのだとか。その為、奥に踏み入れれば迷う可能性がある上に、特に旨味もない階層として、冒険者からは通り道のような扱いをされてるらしい。
「不憫な。……あれ、でも確か、この階層から宝箱が出るって話じゃなかったっけ」
「そうよー。でも、当然森の中なの。たまーに広場の隅っことかにも現れるそうなんだけど、それは本当に稀みたいね。だから、この階層の宝箱の発見頻度としては、1日に1~2個ってところかな。第四層からの帰りに、方向感覚と実力に自信のあるチームが、ちょろっと脇道に逸れて探しに行くと、たまに発見するって感じね」
「『一等星』の皆さんは、それでよく見つけられてるそうですよ」
「へ~」
なら、ここで狩りしてたら帰り際の『一等星』や他の冒険者チームとも、ばったり出会ったりするかもな。
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第三層手書きMAPはこちら
https://41968.mitemin.net/i748461/
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