ガチャ194回目:第二の試練

「「ビッグファイアーボール、ビッグウィンドボール」」


 俺とアヤネで同時に魔法を行使すると、刻印の有無による違いは明白だった。俺が出現させた魔法は、アヤネの物よりも二回りほど巨大だったのだ。


「旦那様。単純に大きさだけとは思えないですわ。きっと、威力もそれ相応に強化されているかと思いますの」

「ふーむ。ありがたいけど、魔法はあんまり使わないからなぁ。出来るならアヤネに覚えさせたいくらいだ」

「旦那様、落ち込む必要はないですわ。ガチャから順番に出ているということは、きっと何かしら意味がある物だと思いますの。ほら、先ほどの進化した武技スキルもそうですし、『知覚強化』だって、修行では役に立ったと仰っていたではありませんか」

「……まあ、それもそうか。ありがとなアヤネ」

「えへへ」


 アヤネを撫で、気を落ち着かせる。これから何が待ち構えているのかは知らないが、いつものように冷静に対処しよう。


「ご主人様、あまり気負いすぎないよう」

「大丈夫だって。何が出てこようと、結局は第二層のボスでしかないんだ。前回のスライムのような、ダンジョンの全てを集約したボス程ではないさ」

「それに今日は、とっても心強い仲間がいるんですもの。負ける心配はありませんわ」

『ゴ!』


 マッスルポーズを決めるエンキ。……いやお前、どこでそれ覚えたんだよ。


「……まあいいか。さっくり倒してさっさと帰ろう」


 俺達は歪みのない目の前の草原を、ただただ歩き続けた。

 時間にして、3分ほどだろうか。歩き続ける俺達の前方に、道を遮るように煙が地面から吹き上がっていた。俺だけでなく、アヤネもアイラも身構える。

 どうやらこの煙は、彼女たちにも知覚出来る様だった。


「来ます!」


 煙は膨張し分裂。4つに分かたれ、俺たちを前後左右から囲むように散らばった。中から現れたのは、今まで倒してきた4種の強化体だった。


『グオオオオオ!』

『ギギィ!』

『ワオーン!』

『……』


 なるほど、これらを倒してきたのなら、同時に相手取ってみろと。

 そう言うわけだな?


「ゴブリンはアヤネ、ウサギは俺、ウルフはアイラ、ゴーレムはエンキが当たれ! ドロップは気にするな!」

「「はい!」」

『ゴ!』


 それぞれが相手しやすい構成で向かい合う。俺の相手は何かと因縁のあるこいつだ。


*****

名前:マーダーラビット

レベル:――

腕力:240

器用:300

頑丈:120

俊敏:420

魔力:450

知力:30

運:なし


装備:なし

スキル:俊足Ⅱ、迅速Ⅲ、暗殺術Lv1、限界突破

ドロップ:マーダーラビットの逆刺の鋭角、マーダーラビットの強化革

魔石:大

*****


 ……ん? レベル表示が無い。

 これは、いつぞやのスライムの子分と同じか。なら、経験値はないんだろうな。


『ギゥ!』


 先に動いたのは『マーダーラビット』だ。いつも通り姿を消すが、もう散々見て来た相手だ。敵が動くと同時に俺も地面を蹴り追いかける。

 俺は『マーダーラビット』に詰め寄り、奴が方向転換の為に立ち止まった隙をつく形で攻撃する。かつての宿敵は、『迅速』による死角攻撃に入る間もなく、一撃で煙となって消えた。

 敵の動きを徹底的に学び、『知覚強化』により筋肉の動きを読み、動き出しから相手の位置を『予測』し、先を読んで剣を置く。技の練習相手には丁度良いかもしれないが、もうこいつから学べるものは無い。全力で倒すことに集中すれば、こんなにあっさりと勝ててしまうんだな……。


 さて、他のメンバーは……。


「てい!」

『グオオッ!?』


 アヤネは自らの足で『ホブゴブリン』の剣を避け、物理攻撃だけで圧倒している。このまま任せてしまっても問題は無さそうだ。


「お嬢様、ファイトです」


 次にアイラは、一撃必殺だったのか既に終わっていて、同じくアヤネを見守っている様子だ。


『ゴゴゴ!』

『……!』


 最後にエンキは先刻の再戦ではあるが、トドメを気にする必要がない為か、遠慮なくタコ殴りにしている。ちょっと敵が可哀想になるレベルだ。

 そう思っていると『ストーンゴーレム』『ホブゴブリン』の順で連中の身体は煙となり、再び一カ所に集まった。


「エンキを中心に陣形を組む。アヤネはエンキの後ろに」

「はいですわ!」

『ゴゴ!』


 俺達は更なる敵の出現を予想し緊張する中、煙は凝縮を繰り返し徐々に小さくなっていく。


「……ん?」


 俺はこの現象を、どこかで見た覚えがある。

 それが何だったかと思い出そうとしている内に、答えの方が先に出現した。


『ゴトッ』


 宝箱だった。

 そしていくつかの素材が、音を立ててその周囲に散らばった。


「……あれ? もしかして、終わり?」

「拍子抜けですわね?」

「まさかこんな特殊な場所に強制移動させられて、強化体のおさらいをされるだけなんてな……」

「ですが、我々が強くなっただけで、一般的な冒険者であればあの4体に囲まれればただではすまないでしょう。お嬢様も、見事な戦いぶりでした」

「そうでしょうか? だったら嬉しいですわ」


 よし、アヤネの頭を撫で回してあげよう。

 うりうり。


「えへへ……。とにかく、勝てて良かったですわ。旦那様、念のためコレにも『真鑑定』を使われては?」

「ああ、そうだな」


 名前:525-2

 説明:525ダンジョン第二層配置の??? 対応する虚像を全て捧げよ


「間違いないらしい。しかも何気に、錠前っぽいのが4つ付いてる」


 触れれば、錠前は光と共に消えていき、自然と宝箱がぱかりと開く。そしていつもの様に、中に封じられていた光が俺の中へと吸い込まれて行った。


*****


名前:天地 翔太

年齢:21

レベル:8

腕力:6295(+3486)(+2798)

器用:5953(+3296)(+2646)

頑丈:6164(+3413)(+2740)

俊敏:6473(+3585)(+2877)

魔力:6543(+3626)(+2908)

知力:6689(+3707)(+2973)

運:3816


スキル:レベルガチャ、真鑑定Lv3、鑑定偽装Lv2、自動マッピングⅢ、鷹の目Ⅱ、知覚強化、金剛外装Ⅲ、身体超強化Lv2、物理耐性Ⅴ、剛力Ⅲ(2/3)、怪力Ⅳ、阿修羅、金剛力Ⅱ、俊足Ⅳ、迅速Ⅳ、鉄壁Ⅲ(2/3)、城壁Ⅲ(2/3)、金剛体、金剛壁Ⅱ、統率Ⅲ、予知Ⅱ、看破、二刀流Ⅱ、体術LvMAX、格闘術Lv6、剣術Lv5、槍術Lv8、弓術Lv3、暗殺術LvMAX、狩人の極意Lv2、跳躍Lv2、暗視、衝撃、鎧通し、縮地、忍び足、騎乗(1/3)、反響定位、魔力定位、念動力Lv1、元素魔法Lv3、空間魔法Lv1、泡魔法Lv1、水流操作Lv2、砂塵操作Lv4、回復魔法Lv1、極光魔法Lv4、宵闇魔法Lv2、混沌魔法Lv2、魔力超回復Lv1、魔力譲渡Ⅱ、力溜めⅡ、破壊の叡智(1/3)、魔導の叡智、炎の刻印、風の刻印、土の刻印、王の威圧Ⅲ、魔石操作(1/3)、弱体化、スキル圧縮(1/3)


武技スキル:紅蓮剣、紫電の矢


管理者の鍵:525(1)、525(2)、810(1)、810(2(1/2))、777


*****


 いつもあったトロフィーがついに無くなったか。

 ちょっと寂しいような気もするが、明日からはまた別の連中の名で埋めてやろう。

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